……ワンワン!!Oh……!! 2


「ここが、人間界」


 ボクらが二つの世界をまたいで、新たな大地に立った時。


「なんだか」


 まず最初に感じたのは。


「こちらが、大戦時に勇者最大の難所となった――――」

「へーいらっしゃいらっしゃい、焼き立てだよー」

「えー、お土産に城壁の破片はいかがですかー」

 

 串焼きのいい匂いと、観光客の喧騒だった。


「すっかり観光地化してるのである!!」


 さも、ありなん。

 なん、だろうか。


「…………」

「はー」


 ちょっとがっかり。

 雰囲気とか空気とか、ぶち壊しである。


「……なんか」

「思ってたのと違うような」


 けど兄者は一人、なんだか苦笑するような顔をしていた。


「ハッハ!!平和が続いた証拠であろう!!」 


 まあ、親父殿が門番で無くなって結構な年月が経ったと言っていた。

 この門はもうとっくに人間側のもので、そんな状態が何年も続けば。


「そんなもんなのかも知れないなぁ」


 見る分には、迫力満点な史跡なのだ。

 観光地になる要素は十分と言える。


(まあ、いいさ)


 ちょっと厳かな感じとは違っても、ここがボクたちの始まりなのだ。 


(そう、冒険だ)


 異世界転生したボクの、これからの……。


「ふむ、レフトよ。何故そんな気持ちの悪い表情を浮かべておるのだ?」


「え?いや、そんな。浮かべて無いですって」


 しまった。

 顔に出たか。

 けど、ほら、あるじゃん?

 犬とか、あまつさえ頭一つになっちゃったけど。

 お約束ってあるじゃん?

 女の子と出会ったり?

 現代知識で商売したり?

 奴隷とか助けちゃったり?

 まあね、異世界転生とかしたんだからね?

 それくらいはね?


「さて、我らがまず最初に目指すべき場所は」


「……王都」


「で、あったな。魔女殿のお弟子さんに会いに行くのである」


 王都、お姫様がいる場所。

 そして、あの綺麗な魔女さんの、弟子。


「でへへ」


「レフトよ、本当にどうしたのであるか」


「……兄者、心配いらない。あれは妄想が捗ってるときの顔だ。問題はない」


「ふむ、そういうものであるか!」


「……レフトのことは放っておこう」


「うむ!!」


「……それより、王都に向かうんならまず人間の街に行くのがセオリーだ」


「うむ!では馬車に乗るのであるな!!任せるのである!!」




 ガシャン!!


「……え?」


「よし、衛兵が来る前にズラかるぞ」


 気が付けば、目の前には鉄格子。

 周りに見えるは多数の檻に、そのなかに捕まった首輪付きの動物たち。

 それは、つまり。


「奴隷イベントこっち側ー!!」

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