第6話 加藤さんのレポート①
ひたすらDSS2の攻略を進めていた土曜日の夕方。
ゲームのやりすぎで指とこめかみが鈍く痛むため、ぼくは小休止を取っていた。
「ふぁー、ちかれたー。そろそろエンディング近いっぽいし、今日の攻略は終わりでいいかなぁ」
ベッドに転がり、なんとなしに学習机横の鞄に目を止めた。
金曜は加藤さんが先に帰ったから放課後の実験はなし。
土日もぼくはゲームしかしないから特に書くことは無い。
でも、加藤さんがなんて書いたのか、ちょっと気になった。
恋愛実験レポート
7月18日(木曜日)晴れ時々曇り 気温 あっちゅい
朝、何時に澤井が家から出るのかがわかんなかったから7時半から待ってたら、澤井に怒られちゃった♪
暑いから気をつけろって言われて、ちょっと嬉しかった。
怒られたのに嬉しくなっちゃうなんて、ウチMなんかな? なんてw
手を引かれてドキッとしたけど、力加減はゲンテン!!
もっとやさしくすること!
放課後、教室ザワついたのはめっちゃオモろかった!
あと、シェアするときキョドりすぎwww
もしかしてウチが美少女だからびっくりしちゃったのかにゃ~?
澤井はまだまだおこちゃまだなぁ。 ゲンテン!!
ということで、今日のデートの点数は~
デレレレレレレレレレレレ、デン!
65点!!
これからもお勉強は必要だね!
実験がんばろうね!
あきら♡
うん。
うん……。
やっぱ交換日記だこれ。
う~~~ん……どうしたもんか。
実験レポートというのであれば今週末何もイベントがないのであれば書く必要もないわけで。でももし加藤さんがレポートという名を借りた交換日記をやってみたい、というのであれば返さないと加藤さんが傷つくかもしれないし。
どっちが正解なんだ!?
わからん!!
という事で、スマホで「交換日記 ルール」で検索してみた。
え、なにこれ。
スゲー細かいルール書いてる人とかいる。
悪口は書かないとか、自分たちだけの秘密にする、とかは理解できるけど、おそろいのペンで書くとかそこまでするの?ってことまで書いてある。
あーでも女子っておそろいの文房具とか好きそう。
あ、やば。
ゲームの息抜きで読んだのに、変に頭使いすぎて余計に疲れてきた。
「せーいちー、ねーちゃんにもゲームやらせてくれー!」
姉の
「お、丁度休憩中?DSS2触ってもいい?」
「いいけど、新しいデータでやってよ?ぼくまだクリアしてないし。あ、あとオートセーブ以外でセーブしないで。間違ってデータ消されたくないし」
「さんきゅー!」
ウチにはPS5が2台ある。一台はリビング。ただしこれはほぼ父さん専用のハードで、ボクの部屋には姉弟用のハードがあるのだ。ちなみにswitchも2台あって、これはリビングと姉さんの部屋にある。Xboxはリビングにしかない。
互いのハードで遊びたいときは、相手の部屋で遊ぶルールだ。
正直姉さんに部屋に入られたく無いのだが、switchが人質になっているから仕方ないのだ。
「うお!これキャラクリから始めなきゃいけないやーつ!」
「え、知らんかったん?」
「キャラクリあるとプリセットまんま使うの嫌だから、つい頑張っちゃうのよね」
「わかる」
「ん~…誰かモデルにして作ろっかな」
「いいんじゃね?男?女?」
「今回は女かなぁ……あ!そだ。ちょっとモデル思いついたから雑誌とってくる」
「あいよ~」
パタパタと部屋を出る姉さんを見送り、ベッドの上で体を起こす。
あ!?実験ノート枕元に出しっぱだった!慌てて鞄の中に仕舞い込む。
「ただ~」
「お、おか~」
「どうしたの?なんか慌てて。……はは~ん?」
「え、なにが?」
「大人になったねぇ」
にちゃりとした粘っこい笑みを浮かべる姉さん。
……!!
「ち、ちがっ!エロ本とかじゃないから!」
「エロ本じゃないなら何?」
「なんだっていいだろ!早くキャラクリしろよ!」
「へーへー」
そう言って、手にしていた雑誌を広げてキャラクリを始めた。
「なにソレ?ファッション誌?」
「だよ~。見る?」
「え、興味ない」
「ほんとにぃ~?」
「疲れたからちょっと寝る。静かにやってね」
ベッドに戻って目を瞑ると、案外すんなり眠りに入ることができた。
「ん~、こんなもんかなぁ……せーいちどう思う?」
そう声をかけられ目を覚まして画面を見ると、どこかで見たことのあるようなインナー姿のキャラクターがこっちを見ていた。
「……加藤さん?ってかなんでインナー姿なんだよ!」
「は?インナー姿でキャラクリデフォでしょうが。それよりどうかな!藤沢あきら!似てる?」
「似てるんじゃない?」
やばい。加藤さんに似てるって意識するとちょっとまともに画面が見れない。
「ちゃんと見てよ!ほら、これ見ながら作ったんだけど」
「あ、あぁ、……これ、加藤さん?」
「どう?どう?」
「……」
どこか遠くを見つめる、教室では見たことのない綺麗で大人っぽい彼女の姿に、ぼくは見とれてしまっていた。
「い、いいんじゃないの?も少し寝る!」
「よっしゃ!そいじゃ名前はアキラにして、けってーい!」
姉さんと画面に背を向けて、頭からタオルケットをかぶって横になる。
ぼくは彼女の大人っぽい姿とゲーム画面のインナー姿が重なって見えるような気がして急に気恥ずかしくなってしまったのだ。
治まれ!治まれ!治まれええええぇぇぇぇ!!
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