第3話「下校実験(ほうかごデート)」
「そろそろガッコ近いから、ウチ先行ってるね」
そう言って学校へ続く曲がり角を先に走っていく加藤さん。
周りにはちらほらと同じ学校の生徒たちが増えてきていた。
生徒たちの視線はみんな、加藤さんの走る姿を追いかけていた。
みんなの目には多分、隣を歩いていたぼくの事なんて入っていないのだろう。
「加藤さんはぼくと噂になっても迷惑なだけだろうし……って、これじゃ加藤さんと噂になりたいみたいじゃないか!バカタレ!」
「おーい!せーちゃんよ~い!」
「お、たっちゃん!うぃーす!」
「うぃーす!」
一人になってぽてぽてと学校に向かっていると、後ろから
ぼくの中学校のサッカー部のエースで身長百六十五センチのガチイケメンで、ぼくの小学校からの親友だ。ちなみにガチの声豚属性オタでもある。お互いにたっちゃんせーちゃんと呼び合う仲だ。
達也って名前は、親が昔のアニメのタッチが好きで付けた名前らしい。野球漫画の主人公なのにサッカーで主人公やってて草しか生えない。ちなみにこのエピソード、親コミュの中では鉄板のネタらしい。愛されてんな、たっちゃん。一人っ子でよかったぜ。不幸になる双子なんていなかった。イイネ?
「たっちゃん、朝練は?」
「今日は休み~。俺のサッカー練習は放課後から始まりますが何か?~朝練サボったと思われてももう遅い~」
「ラノベ乙。サブタイつけんなし斬り!」
「天然芝生えるw」
「うちの学校人工芝な件」
「ラノベ乙返し!」
「ぐあーーーー!」
(朝から楠木×澤井見られるとか、今日はいいことありそう!)(え、リバありえないんだけど)(は?ならば
「聞いてくれよせーちゃん。今回のテスト全部平均よりちょっと低いくらいで赤点なしで超頑張ったのに『もっと頑張れ』って言われたんだぜー。そりゃないぜかーちゃん!」
いつも平均には及ばない点数しか取れない達也にしては、かなり頑張ったと思うんだけどなぁ。ぼくの学校は平均点の半分未満の点数で赤点。期末で赤点取ったら夏休みに補習入って部活時間が減る。サッカー好きな達也にとっては死活問題だ。
「ジャイアン乙!木村?」
「たてかべ」
「さよか」
なんて馬鹿話をしながら登校した。
周りの女子のギラギラとした視線がイタイでつ。
という事で放課後になった。
「澤井おつかれ~!今日の放課後どする?」
加藤さんの一言で、教室全体がザワついた。
「え!?あ!!べ、勉強ね!べ・ん・きょ・う!教える約束してたからね!」
「一緒に帰ろうよ」
「へぇっ!?↑な、なんで?」また声が上ずった。
「ウチ明日から仕事あって早く帰んなきゃなんないし、今日しか放課後ゆっくりできないし」
「あー……でもぼく、今日はゲーム買いに行かないと……」昨日のテスト結果のご褒美に親から一万円貰っているから。ちなみにお釣りは貰っていい。やったぜ。
「昨日言ってたヤツ?ウチも一緒に行っていい?」
「ん……いいよ」
「やた!んじゃ早くいこ!
「あ、はひ……」
加藤さんに手を引かれて立ち上がったぼくは、そそくさと鞄を担いで教室をでた。
「「「えーーーーーーーーっ!!!」」」
ぼく達が教室を出た瞬間、教室が騒然とした。
加藤さんは「ウケるwww」と言いながらその様子をメモに書いていた。
「え、メモとんの?」
「うんwレポートに書かなきゃだし」
「マジメかよ」
「ウチから言ったことだし、こういう事はちゃんとしないとね。ちな、今日のレポート内容は『一緒に登校実験』と『放課後デート実験』な」
「ほ、放課後デートぉ!?」
「驚きすぎ、ウケるw放課後デートなんて誰でもやってるよ(たぶん)」
「そういうもん?」
「もんもん!さ、早く行こ!時間なくなっちゃう!駅前のショップっしょ?」
「うん」
「あそこ近くにタリーズあるから、ついでに寄ってこうよ!」
玄関で靴を履き替えながら加藤さんが言った。
「こういう暑い日はやっぱあそこのシェイクだよね~」
「え、寄り道?怒られない?」
「澤井はゲームショップ寄るのに、なんでカフェだと怒られるの?」
「確かに」
「まぁ心配ならテイクアウトしようよ。あそこのシェイクマジ神ってるし。ウチ奢るからさ」
「いやいや、奢らなくていいから!」
「え、行きたくない?」
「いや、大丈夫。ぼくの分は自分で出すから、寄っていこう」
「やた♪」
そんなわけで放課後デート実験の開始である。駅まではさほど遠くないので、バスは使わず歩いていくことにした。
「で、目的地はゲームショップなわけだが、放課後デートって何するの?」
「なんだろ?手つなぎながら歩いて~」
「この季節に?手汗すごいしちょっと……」
「それな。今日も暑いしね。学校のグチとか言いながら歩いて~」
「愚痴?なんかある?」
「別に、無いかな?あとなんだろ……」
「ノープランじゃん!」
「そ、そんなことないし!あ!クレープ!クレープの食べさせあいっことかしたい!」
「駅前、クレープ屋ないから無理だなぁ」
「むぅ……(全否定じゃん)」
「タリーズのシェイクで我慢しなさい。ぼく別の買うから」
「!!!!!!」
「クレープは、またいつかおいおい予定が合えば気が向き次第ってことで(早口)」
「うん!!」
ぐっ、そんなに嬉しそうに喜ばれると、社交辞令ですって言い出せない。
「シェイク~♪シェイク~♪二人でシェア~♪クレープはまた今度~♪」
めっちゃ上機嫌の加藤と連れ立って駅前に向かった。
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