【第52話】天族への接触

私たちは荷物をまとめて、天族の元へと向かう旅に出発することになる。街に残した者たちは、信頼のおける者たちばかりなので、安心して私たちも旅立つことができた。


今回の旅は私とコハク、シャナンとサクラの四人で向かう事となる。少数精鋭の旅ではあるが、危険も伴う事となるだろう、合わせてゴーレムも一緒に来ているので、速度は少し落ちていた。


「コハク、目的地の場所までは遠いのですか?」


「いや、そこまでは遠くないよ。あの山を背にして進んでいけば川が見えると思う、その奥に天族たちが住む場所があると聞いてはいるのじゃ」


その川までの道は平原が続いているので、見晴らしも良く急に襲われることもないだろう。以前に、洞窟に向かった際も、そこまで魔物に襲われる事もなかったたので、考えているよりは安心な旅となるだろう。


「マスター・ナディ、私は初めての旅なので、少し楽しみにしています」


「そうですか、サクラはずっとあの洞窟にいましたからね」


「そうなんですよ、どうせならこの旅で色々なものを見たいと考えています」


そう考えるのは良い兆候だと思う、少しでも彼女が長く生きられる理由を探すのにも良い事だと私は考えていた。


そうして、雑談も交えながら目的地の川まで向かって歩く、しばらくして目の前にその川が広がっていた。思った通り、道中の魔物に出くわすこともなく、このまでは平和な道のりだった。


「コハク、あれが目的の川でしょうか?」


「あぁ、そうじゃの。あれが目的の川だろう、あの川を渡ってその奥に天族がいると言われている」


「かなり大きい川ですが、この川はどうやって渡りましょうか?」


「そうじゃな、妾は少しだけ考えたいので、休憩がてら川のほとりで少し休もうかの」


この中に土の原素を持つものがいれば、橋を作ったりすることもできるのだが、今はここにいるのが火と電のみ、そういえばシャランは各元素が扱えるはず。その力を使って土で橋を作ったりすることはできないのだのだろうか?


「それは無理ね、私たちにできるのはあくまで矢を形成するだけなの、ここまで大大規模なものとなると難しいわね」


「そうでしたら、どのようにしてこの川を渡りましょうか…」


「皆の者上じゃ!!上に何か飛んでおる」


コハクは声を上げながら私たちに伝える、この平原において上からの強襲はかなりの脅威となる。


上を見上げると、確かに頭上を大きな鳥のようなものが旋回していると告げる。こちらからは、その正体が何なのか確認ができないが。


もしかしたら、こんなところに大型の鳥型の魔物でも現れたのだろうか、この距離であれば狙撃できない事はないが、ここで大きな音を出すと天族に警戒心を出せることになるかもしれない、あまり大げさな事はしたくないが。


「あれは、もしかしたら天族かもしれないの」


「それって本当ですか?」


「警戒に当たっているだけかもしれぬ、それにこちらを確認しているだけかも、全員余計な手出しはせぬように」


「かしこまりました」


暫くその場に留まっているが、向こうから襲ってくる気配もなければ近づいてくる気配もない。コハクの言っていた通り、ただ警戒をして、こちらの様子を伺っているだけなのだろうか。


「コハク、動きがないが、どうしましょうか?」


「ふむ、そうじゃな少し声をかけてみようか」


そう言うと、コハクは大きな声を出し空に向かって呼びかけをする。しかし反応がない、変わらず私たちの頭上で旋回を続けている、声が届いていないのだろうか?


すると、川の向こうから同じ大きさの影が、複数体こちらに向かってくるのが確認できた、どうやら援軍でも呼んで、私の確認をするつもりなのだろうか。


私たちも、余計な手出しはしないと、様子を見ながらその場で待ち続けた。


すると川向こうの向かってきた影から、何かが放たれるのが確認できた、それはこちらを狙って、風の刃や炎の弾などが飛んできた。


私たちは、それらを確認すると同時に、全て躱しもう一度空を見上げる。


「間違いない、天族じゃろうな。いいか、妾たちは戦いに来たわけではないぞ」


「かしこまりました、ですが何も返答がありません。どうしましょうか?」


先ほどからコハクが呼びかけてはいるが、何の反応もない、それどこらか攻撃を仕掛ける始末だ。


「うむ、仕方ない。ナディ、威嚇も兼ねて当てないように、あの魔銃で一撃放ってくれるか?」


「かしこまりました」


そうして、私は背中に抱えていた魔銃・超電磁砲レールガンを取り出し、影に向かって銃口を向ける。


コハクに再度通告をしてもらうが、特に返答は無い。引き金を引こうとすると、また同じく風の刃や炎の弾を放ったれたので、コハクとサクラ、そしてシャナンがそれらを全て撃ち落としたり。弾いたりしてくれた。


私は、その隙に引き金を引き、空に向かって一撃放つ。もちろん当てるつもりはなかったので、大きく逸れるようにはなっていた。


「コハク、これでどうでしょうか?」


「ふむ見てみろ、慌てふためいているぞ、これで少しは話ができると良いの?」


するとその影がどんどんこちらと迫ってき、その姿形を、しっかりと確認できる距離まで迫ってきた。どうやら、向こうも会話ができる距離まで飛び寄ってくれたそうだ。


「もしや、お主らは天族ではあるまいな、ようやく話を聞いてくれる気になったかの?」


「先程の一撃は貴殿か?」


「妾ではない、こやつじゃ」


そう伝えると、その場にいた天族らしき人たちが全員どよめいていた。どうやら私の姿を見て、戒族と重ねたらしい、その集団たちは私たちに聞こえなように、話をしていた。


「すまない、こちらも今は厳戒態勢でな、寄ってきた者は警戒せざるを得ないのだ、大変申し訳なかった」


「うむ、すぐにこちらの力量を把握してくれてよかった。あのまま続けていたら、あの一撃を見舞うことになっていたかもしれないからの」


「はははっ、ご冗談を、大変申し訳なかった」


そして彼らは、私たちと同じ地面に降り立ちその姿を見せる。それらまさに人に近しいが、背中には大きな翼が生えていて、顔は鳥のような形をし、くちばしがあり、羽毛が生えていた。まさに鳥人といったところだろうか、空を飛べるから天族いうことなのだろうか?


「それで、皆様は、何用でこちらへ参られた」


「先日案内があったじゃろ、種族連合について話をしに来た。妾は獣族の王コハクである」


「それは誠である、かすぐに取り次ぎを行うため、私たちとついてきて欲しい」


「そのために来たよろしく頼む」


そして私たちは天族に掴んでいただき、、川を飛んで渡ることになった。そこからしばらく川を越えて飛んで行くと、そびえ立った崖のようなものが見えていた。


この上に村があるようで、空を飛べないと侵入することも難しいような場所だった。私たちはそのまま天族の皆に抱えられ、崖を登り村の中へと案内された。


上まで昇ると、あの大峰魔山とまでとはいかないがそれなりに絶景の場所だ、ここならば攻めることも難しく、守る事は容易いだろう。確かにここに住んでいるのであれば、無理に人族に進行する必要もないように思える。


そうして村へと降り立ち、中へと案内される。


妙に村の中は殺気立っていた、私たちの来訪が望ましいものではないと見受けらる。それもそうか、この平穏が壊されるかもしれないのだから。


村の中にはいくつかの建物があり、そのへと案内されるが赴く前に、向こうから天族の王が飛んできた。


「何奴」


「これは、天族の王と見受けられる、妾はコハクと申し獣族の王を担ってある者じゃ」


「帰れ」


「なっ、いきなりそれはなかろうて!」


「どうせ、人族への侵攻の話だろう、我らにとっては不要、この地ににて幸せに暮らしている。それに、いまはそれどころではない」


「なんじゃと、せっかく出向いたのに話すらせんと言うのか!」


「そうだ、話をする余地はない、去れ」


あのコハクですら会話が成り立っていない、天族ははなから話を聞く気がないのだ。この地への絶対的な信頼を持っている彼らにとって、無用な侵攻はさらなる災いを産むと考えているらしい。


それ以上の、災難が迫ってるとコハクが伝えるも、聞く耳すら持ってくれていない、この場はあまりよろしくないように思える。


何か、少しでも話を聞いてくれるきっかけがあれば良いが、私の存在やゴーレムに目線を向けているが、興味を示さない。


どうすればいいだろうか。




「王よ!!また攻めてきました!!」


「なに、またかっ、今行く!」


「ちょ、どこに行くつもりじゃ、攻めてきたとは!?」


「お前らには関係のない話、余所者に助けを求める必要性はない」


そう言って、名前も告げずに飛び去っていた。私たちはその場に残され、どうしていいのか分からなくなっていた。


「追うぞ」


「へっ?」


「いますぐ追うのじゃ!」


そういうと、先ほどの天族が飛び去っていった方角へと駆け走り出した。私たちも置いていかれないように、ゴーレム共に追いかける、



一体何が起こっているのだろうか。

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