【第51話】新装備と兵器のお披露目

「では、サクラ…宜しくお願いします」


「はい、こちらこそ」


私はいくつかの装備と兵器を用意したが、取り敢えずは体の動作確認をしたいので、普通に素手で戦う。サクラも意図を察してくれたのか、刀は抜かずに同じく素手で手合わせをしてくれる。


「木の体は無くなりましたね」


「おかげさまですよ、ありがとうございました」


そう、私の体は木では無くなっていた。あれから鉱石の発掘と錬金術による新たな資材の錬成を行っていた、その過程でチタンのようなものを生み出せた。


軽くて頑丈なこの素材を、体のメインパーツに利用し、それぞれの関節部分には、魔物のゴムのような柔軟性のある素材を採用した。


魔心は体の中心部分に埋め込み、壊されないように分厚いもので覆い守っており、そこから全身に神経の糸を張り巡らし全身を稼働させている。


新しい体は、それだけではないが。


「サクラ、中々動けていますね」


「クベアが血反吐を吐くぐらいの訓練に付き合わされていましたからね、これぐらいは」


「それはそれは、ではその特訓の成果を、さらに見せてもらいましょうか」


私は腰に携えていた、拳銃を取り出す。そう、遂に形にする事ができたのだ、ただ現状扱えるのは私だけだろうが。


引き金を引き、激しい音と共に弾を撃つ。


ただサクラには当たらなかった、直前で身を逸らして飛んできた弾を避けたのだ、初見にも関わらず避けるとは見事だ。


「よく避けましたね」


「いや、危なかったですよ、何ですかそれ」


「これは私の作った、拳銃です」


そう、これはついに私がこの世界で作り出すことができた拳銃だ。錬金術の応用で部品を作り出して、組み上げたのだ、今は私にしか作れないので、量産する事も出来ない。


何発かサクラに向かって発砲するが、ことごとく躱されていた。


「なるほど、ある程度の人には当たらないと」


「ええ、ある程度は予測できます」


使えなくもないが、ある程度の腕を持つ人には通じないようだ、これはこれで使えるので置いておこう。次は近接での戦闘に入る。


私は腰に刺していた二本の刀を鞘から抜く、それに合わせてサクラも腰の刀を鞘から抜いた。


「では、手加減なくお願いします」


「マスター・ナディ、こちらそこ」


私とサクラはそこからしばらく、刀の打ち合いを繰り広げる。サクラはコハクに教えられ、私はセーレンの戦闘データを復習しながら望んでいた。


それでも、互いに拮抗した状態が続いていた。どちらも、上手く攻めと守りを使いこなし、互いに譲ることなく打ち続けている。


互いに刀を押し付け合い、睨み合う。


私はサクラの腹部を押し蹴り出し、距離を空ける。私は刀を二本とも鞘にしまい抜刀の構えを取る、サクラも抜刀術を学んでいたようだ、同じく鞘にしまい構える。


互いに強く地面を蹴り、中心に向かって駆け出す。刀の範囲内に入る頃には、柄を握り居合い抜きを放っていた。互いの刀はたぶつかりあい、弾かれる。


「これは、サクラも同じことが出来るとは」


「正直コハクの実験に付き合い覚えました、その証拠にほら」


サクラにの指の先には、驚いた顔のコハクがいた。どうやら、ここまで出来るとは思っていなかったらしい、目が合うと笑みを浮かべていた。


嬉しいからなのか、良い相手を見つけたと思っているのか、それは私には分からなかった。


「サクラ、もう終わりですか?」


「どうでしょう、これ以上は術式を使うような戦いになってきますが」


「それもそうですね、では、最後に……」


私はシャナンの方へと駆け寄り、預かってもらっていた袋を手に取る。これが、もう一つの私の集大成。


袋から取り出されたのは、身の丈ほどのライフル銃。


「マスター・ナディ、それは?」


「お見せしましょう、私のもう一つの兵器を」


そういい、私はライフル銃を構え誰もいない方向へと銃口を向ける。全員の視線が集まる中、引き金に指をかける。


一間置き、引き金を引く。


先ほどのは比べ物にならない激しい爆音を轟かせながら、弾丸が放たれる。


その場にいた、全員の表情が驚き固まっていた。実は、私も今日初射撃の日だったので成功するかは、正直不安だったが、見事に成功した。


「マスター・ナディ、これも拳銃ですか、いや大砲ですか?」


「いえ、これは【魔銃・超電磁砲レールガン】と呼ばれるもので、これも私にしか撃てません」


そう、私は人工魔心を埋め込まれてからというもの、エレクトを扱えるようになっていた。そ!ならばと、両腕両足に魔核を埋め込み、魔道具のように改造したのだ。


そこから、この魔銃・超電磁砲に電を流し込み、元の世界のレールガンを実現させているのだ。

的にしたもの無かったが、それなりにこの威力は全員に伝わっていたようだ。これをさらに小型化して、拳銃サイズにするのが目標でもある。


「これは恐れ入りました、さすがマスター・ナディですね」


「いえいえ、サクラも見事でした、三日もないとはいえあそこまで強くなっているとは」


のおかげですね」


「サクラ!見事じゃったぞ、まだまだ教えがいはあるがの!」


「師匠、これからもお願いします」


「うむ、まかせておけ!」


私は後ろを振り向くと、驚いた顔のままシャナンがこちらに近づいてくるのが見えた。


「すみません、重たかったですよね」


「それどころではないよ、まさかあんなものを作るとはね!」


「一つの目玉になるでしょう」


「そりゃなるさ、元の世界でも驚異的な平気だったからね…体は大丈夫かい?」


「はい、問題ありませんむしろ快調です」


「ならいいが」


一発放つのに使った電は、すぐに元に戻っている感覚があった、ラクーンの三重術式トロワオペレーションように負担のかかるものではないと、少し安心する。


「あとは、ゴーレムとの合わせ技で、超電磁カタパルトなども計画していました」


「それはやめなさい」


成功したら、人族にとっても脅威となるが身の危険の方が大きいと止められた。何か安全な入れ物に入る事が出来れば問題ないとは思うが。


「マスター・ナディ、ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました」


お互いに握手を交わし、今回の実践訓練を終わりとする。


「そういえば、コハク。天族へは誰が向かう予定ですか?」


「おぉ、それならの、妾とナディ、コハクにシャナンの四人で行く予定じゃ」


確かに、ここスタンドレスの防衛も考えるとこのメンバーが妥当だろう。それに、ゴーレムも一体連れていき、人族への対抗手段として見せるとの事だ。


早速私たちは、各々の準備をまとめる為に戻る。



出発前に、コハクに話があると言い二人になる。


「なんじゃ?話とは」


「はい、実は…」


私はコハクに、ラクーンとライタの魔心の行方について話す、あの日私の中で最後の方に残っていた記録だ。二人の魔心が人族の手によって、武器に作り替えられていると。


「やはりか、タルトーともその可能性は話とった」


「はい、確かに確認はしました、同じものかと言われれば確信はないのですが、王燐の口ぶりからするに間違いないかと」


すると、コハクの体から熱気と火が漏れる。


「コ、コハク!?」


「おぉっ、すまんすまん、ついな……」


原素が表に漏れるほど怒っているのだろう、もちろんだと思う、あの場で残す事になった悔しはずっと抱えていたのだろうから。


「必ず取り返す、力を貸してくれ」


「言われずともです」


そうして、集合場所に集まり私たちは天族に会うために出発した。場所は少し離れているそうで、大峰魔山を背にして歩いて行くそうだ。


また、暫くの旅が始まる。

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