【第50話】街の名前と種族連合の行く末
そこから数日間、街の建設ラッシュが始まった。急に増えたエルフ族たちの家も必要になっていたからだ。
私も、色々と手伝いをしながら街を回っていた、特に大きな問題もなく、順調に進んでいた。
そんな中、一人のエルフ族に質問をされる。
「ナディ様、そういえばここの街ってなんて名前ですか?、それとナディ様が俺たちの王になるの?」
おや、そんな事考えた事もなかったですね。待ちの名前などは特に不要かと思っていましたが、それに王と言えば王なのでしょうか。
「すみません、これから…ですね」
「そうですか!また決まったら教えてください」
そう言って彼は作業に戻って行った。私も正直、研究所ぐらいにしか考えていなかったので、ここまでの規模になるとは思ってもみなかった。だが、街の名前を残す事は、これから長く居続ける現れにもなるだろうか。
私は研究所へと戻り、そこにいたシャナンとサクラに街の名前について問う。
「なんでも良いと思うよ」
「はい、マスター・ナディの決めた事なら」
それはまた、悩ましい回答が返ってきたものだ。街の名前…名前か……。
「そうですね、【スタンドレス】とはいかがでしょうか、“
「いいんじゃない?」
「ええ、いいと思います」
ここで始めた街を、戒族の思いを乗せながら終わらない街にする為に、私は頑張ろう。今は暫定的な王として。
「そういえば、ファーネの姿が見えませんが?」
「あぁ、ファーネなら…」
「ただいま戻ったでー!」
勢いよく扉を開けながら、ファーネが入ってきた。噂をすればなんたらですね。
「お、よやく戻ってきたか」
「おかえりなさいませ」
「おぉあっ!?ナディが元に戻っとる!!」
「はい、お陰様でなんとか」
それから、ファーネがいなくなっていた理由を尋ねると、竜族の里へ戻っていたとの事だった。向こうの近況確認と、クベアの武器を取りに行く為に数人を引き連れて行っていたと。
「そうでしたか、それでどうでしたか?」
「獣族は勿論、竜族と妖族に加えて、海族の王も合流したが、天族の王は来へんかった」
「そうですか、それで話し合いはどうでしたか?」
その場に集まった四王は問題なく、協力体制を整え人族への侵攻準備に入るとの事だった。問題は天族のみだ、関わりたくないとの事であればいいが、戦力は多い方がいい。住んでいる場所もある程度は把握しているらしいので、数名で直接交渉に出向くそうだ。
天族が味方となれば、完全な種族連合が完成する。
ここは一つ、一丸となって人族に挑みたい所だと思う。
「そう!妾達と共にゆくぞ、ナディよ!」
また勢いよく開けられた扉の向こうからは、コハクが元気よく入ってきていた。久々に見るが変わりながないように見える。
「お久しぶりですね、コハク」
「お主もの、そちらは色々とあったようじゃな」
「そうですね……こうしてまた会えたのが奇跡に思えるぐらいに、色々ありましたね」
「体つきもえらい貧相になりよって、まぁ、約束は違えてないようで何よりじゃ」
「あれ、タルトーはどうしたのですか?」
「あぁ、あやつは残って武器作りに専念しとるわ」
「で、話は戻しますが、
天族の説得のために、私の存在と数々の兵器を持って行きたいとの事だった。実際に目にする事で、交渉を上手に運ぶ算段らしい。
「でしたら、三日ください」
「何か準備か?」
「はい、今着手している研究が大詰めに入っています。制作にあと一日、調節に一日、そして実践訓練に一日頂きたいです」
「ふむ、よかろう。急ぎたい所ではがあるが。それほどのものが出来るのじゃな?」
「はい」
「なら妾もそれまでは滞在する事になるの、案内してくれんか?」
それならと、サクラに街の案内をお願いする。
私は研究所にこのまま籠り、研究に専念すしたい。少しでも改良に時間を割きたい、これが上手くいけば種族連合が成るのだから。
「そういえば、クベアはどこにいった?」
「あ、外で訓練と警備をしているかと」
何か悪巧みを浮かべたえみをしていた。クベア、無事に生き残ってください、かなり追い詰められるでしょうが。
二人が出て行った後、ファーネにあるお願いをする。
サクラの為に刀を打って欲しいと、コハクが来ているなら、お互いに火の原素を持っているのでいい師匠になるのでは、と考えたからだ。
良い見本が側にいると、学べることも多いだろう。
すると、ファーネは笑いながら刀を持ってくる。
「これは、どうしたのですか?」
「いやな、コハクにも同じことを言われてん」
「コハクに?」
「せや、ここ来るまでの間に色々話しとってな、もしかしたら何か教えれる事があるかもしれないと」
これは良い偶然だ、てっきり天族の説得から戻ってからだと思っていたが、早速訓練してもらえそうだ。
ファーネは笑いながら外に飛び出し、刀を渡してくると伝える。
私からサクラに教えたり、残せる事は無かった。私が壊れ消えゆく時に、サクラを一人にするわけにはいかない。
マスター・ナディと呼ばれているうちは、サクラのために何かをしてあげたいと思っていた。同じ失う事の辛さと、この先を生きる事の不安を抱えているから。
勝手ながら、同じ境遇にいると考えている。
そうして一人になった部屋で、作業を進める。シャナンには建築の方を手伝うようにお願いした。ここからは私だけで集中していきたいから。そう、ノイズと話しながら作業しているところなど、誰にも見られたくない。
何かあれば、私だけの責任に済むように。
[ ははっ、やっと一人か? ]
「そうですよ、早速始めましょうか」
[ そうだな…これはどうだ? 」
「いえ、それならこうして……」
[ お前はまだ甘いな、さすが家庭用アンドロイド ]
「ではどうしろと?破壊プログラム」
[ それはだな、ここをだな…… ]
そうして、一日が終わっていく。私とノイズは互いに意見を出し合い、体の改造と兵器の製造を行う。
悔しいが、この手の思考に関しては、ノイズの方が一枚も二枚も上手らしい。ただ、やりすぎないように、私がブレーキをかけながらにはなるが。
翌日には調節に入っていた、所々に不具合が出ていたり、動作に不備が見られたりしていた。
細かい所を調節していきながら、完成を目指す。思い描いていた以上のものが出来たつつある。
ノイズの思惑通りなのだろうか、本気で私に手を貸すつもりでここまで来ているのだろうか。一抹の不安を抱えながらも、止まらない作業を進めて行く。
予定通り、この二日間で形にはなっていた。
後は、実践訓練での性能テストだ。
[ くっくくっ、良いものになったな ]
「ええ、これなら二度と負けないでしょう」
[ 次も俺に戦らせろよ? ]
「それは叶いませんよ、大人しくしていてください」
[ そうなればいいな ]
「そう、させますよ」
実践テストには、コハクをお願いしていたが、コハクからの申し出でサクラと戦うことに。
向こうも三日ほどとはいえ、一度実戦に近い戦闘訓練をしておきたいとの事だった。
私としては問題ないので、そのままお願いする。
「サクラ、宜しくお願いします」
「マスター・ナディ、こちらこそ」
そうして、街の外での戦闘訓練を始める。
立会人にはほとんどの人が来ていた、皆が私の新装備に興味を持っているらしい、良い機会だ、ここで兵器の素晴らしさと恐ろしさを教えれる。
有能な武器は、時として牙を向く事もあると。
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