【第41話】鉱石採掘と、予想外の遭遇
私は、シャランとファーネの三人で洞窟へと向かう。
ファーネが昔の記憶を頼りに、私たちを先導してくれる、その洞窟からは鉄以外の鉱石も採取できるとの事で期待が持てる。運搬用にゴーレムにも、台車を引きながら付いて来てもらう。
道のりは意外と平和なものだった、特に魔物が出るわけでもなく、見晴らしのいい道が続いていた。
砂漠はそんなに広くもなく、越えていくと草木が生い茂る平原が見えてくる。かつての、戒族が舗装したであろう道が伸びていたので歩きやすい。
私はというと、あの戦いのあとすぐに足を作ってもらったので歩行は問題ない。今では、両手両足が新しく作られたパーツを使っている。
もし、この先の洞窟でいい鉱石が見つかれば、さらにバージョンアップするのも悪くないと考える。
私の最大の利点、改造と付け替えが可能なところだ。
暫くするとファーネが何もない場所で止まる。もしかして、道を間違えたか忘れたのだろうか?
「ついたで、ここです」
「何もないんですが…」
「まぁ、見とき」
すると地面に手をつきながら、何かを唱える。前に扉を開けた時と似ているが、もしかして。
唱え終わったのか、ファーネが立ち上がると地面に紋様が浮かび上がる。
「さっ、行くで、早くこの中に入って。説明は後でするから、今は信じて」
私たちは、言われるがままに紋様の上に立つ。
そうしてファーネがまた何かを唱える。何を言っているのか聞こえなかったが、それ以上の事が起きる。
光に包まれながら、景色が一変したのだ。
まるで、この世界に召喚されてきた時のように。
「これは、一体どういう事ですか」
「えっ、何が起こったの?」
辺りを見渡すと、そこは洞窟の中だった。ここが、言っていた鉱石の採れる洞窟だろうか、洞窟内には発光石が顔を出しており、それなりに明るい。
それにしても、ここまでの移動方法が似すぎている。
「ふっふーん、どうや?凄いでしょ」
「私がこの世界に来た時と似ていますね」
「それほんまか…実はな、これは古くにある技術の一つでな、未だに仕組みは解明されてないんよ」
「え、それって怖くないの?」
「なにが?」
仕組みのわからない技術を使う事への、恐怖や不安はないらしい、むしろそれは誇れるものらしい。
誰にも理解されない、未知の力を保持している証明。それは何より、求めていたものだと。
「それは、私たちの世界にはない発想ね」
「そうですね、仕組みの開示を行なって、全体で技術の向上に努めていく事もありますから」
「それでここが例の洞窟?」
「せやで、ここで採掘ができるよ」
この洞窟まで一瞬で移動できたらしい。ありがたいが、仕組みがわからない以上少し怖い。何かミスでも起こればどうなるのか。
ただ、今は時間がないので有効利用させてもらおう。
辺りには岩の壁が広がっている様子、狭くはないので皆で行動しても窮屈な感じはない。ここから先は、ファーネも覚えていないようなので、手探りで進んで行く事になる。
「取り敢えず奥に進もうか、手前は掘られているだろう、よく見ると穴が空いてるとこが多いからね」
「はい、そうしましょう」
通路がいくつかに分かれており、そのうちの一つに入っていく事にする。この通路も広さは申し分なく、奥へ奥へと進んでいく。
この洞窟にも魔物が現れる気配はない、ここまでは非常に安全な道だった。これも、戒族が通い詰めていた証拠なのだろうか、おかげでやり易いが。
しばらく通路を歩いていくと、広い空間に出る。その空間の壁面に数箇所、鉱石が頭を出していた。
近くに寄り採取を始めていく、それぞれが散り散りに道具を手に掘り始める。
私も、そのうちの一つを手に取り眺める。間違いない、鉄鉱石だ。言っていた通り、ここでは鉱石がと採れる事は間違いないらしい。
「ナディ、そちらはどうだ!?」
「はい!問題ありません、鉄鉱石です!」
「こっちも採れてるで!」
「では、ここでこのまま集めていきましょう!」
「「 はい!! 」」
私たちはそのまま採掘を続けていく、掘れた鉱石はゴーレムの引いてきた台車に乗せていく。
暫くする頃にはかなりの量になっていた、台車が一杯になると作業を切り上げる事にする。
本日は、様子見を兼ねていたのである程度の鉱石が掘れれば問題ない。ここまでは、なんの障害も無かったので、今後は安全に通えるようになるだろう。
あの移動方法だけは、不安材料として残るが。
帰ろうとすると、大きな音が鳴る。洞窟内の壁面が、崩れていた。私が掘っていた箇所だ、誘発して洞窟内の崩落を懸念したが壁が崩れただけで済んだ。
崩れた壁の奥に空間が見える、周囲の安全を確認し、全員でそちらに歩いて行く事にする。
崩れた壁の奥は、光が届かなく真っ暗だった。
灯りを持ち合わせていないので、これ以上先に進むのは危険だと判断する。
「だが、ここを放置しておくのも危険だろ」
「でも真っ暗やで?」
「灯りを作りますか…」
私は通路を戻り、発光石をいくつか採取し戻る。
それを割って数個に分け、奥の空間へと投げ込む。
多少マシにはなる程度だが、薄暗くも奥が見える。
特に何もなさそうではあるが、空間の真ん中に四角い物が見える。
明らかに人工物であるように見受けられる。
「あれ、なんやろな…」
「宝箱とか?」
「そんなもんあるかいな、夢の話じゃあるまい」
「えっ?」
「えっ?」
この世界では、洞窟の中に宝箱があるのは、想像上や、物語の中だけの話しらしい。
ファンタジー世界ようで、現実的な世界のようだ。私は特に気にならないが、シャランは少し落ち込んでいた。
中へと入り、四角い箱を確認する。
何の変哲もない、本当にただの箱だった。シャランがノックをするように箱を叩くと、それが動き始める。
私たちは、後ろに下がり箱を警戒する。
「なんか、やらかしたかな」
「分かりません、鬼が出るか蛇が出るか…」
「なにそれ?」
「一番嫌なものが出るか、そこそこ嫌なものがだるかって意味ですね」
「どっちにしろってことやな」
その箱はが音を立てて開き始める。展開図を開くように、その箱がゆっくりと開いていく。
私たちは、構えながら警戒を続ける。
中から出てきたのは、体育座りをしていた人だった。
「なんか怖いんですけど」
「人が箱に入ってたんか?」
「そのようですね」
誰も近づこうとしない、近づきたくないだけだが。
得体の知れない箱から、得体の知れない人が出てきたのだ、そっとしておきたいのが本音だろう。
すると、箱から出てきた人が声を発する。
「マスター、ですか?」
「……違います」
答えると同時に、体育座りのまま顔を上げる。
「では、マスターではないと?」
「私はマスターではないかと」
その人は、ようやく立ち上がる。その前に、あんな箱に入っていて生きていた事の方が驚きだが。
誰もそこには触れていなかった。それ以上に、恐怖と警戒が強すぎて何も出来ていないのだろう。
「では、お尋ねします、マスターはどこに?」
「すみません、マスターとは誰でしょうか?」
「……マスターは、私を創り出したマスターです」
その言葉に驚く、どうやら人では無いようだ。見てくれは完全に人と相違ないが。
創り出したと言っていたが、それでは私たち同じように、アンドロイドロボットの様な存在なんだろうか。
「そう…ですか…知らないのですか…」
そもそも味方なのだろうか?
「では、敵の侵入を許したという事ですね?」
「私たちは敵では…」
「マスターの敵は排除します」
そして、こちらに飛び込んでくる。
一目散に私に飛びかかってきた、そのまま腕を掴まれ、その空間から放り出される。
シャランと、ファーネが左右から襲いかかるが、それを躱し、二人もこちらへと放り出される。
こちらの空間に身を乗り出し、答える。
「マスターのため、敵は排除。生かさない」
マスターとは一体誰を指すのか。
話しをしたいが、話せる状況ではない。まずは、この戦いを止めねば会話すらできないだろう。
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