7話 「受け継がれる意志」







俺はジャッカルとの戦闘の一部始終をマライアさんをはじめ、遅れて到着したレナード警部やハインツさんなどの警察関係者に語った。


「そうか…セリーヌどう思う?」


「そうですね…体質変化や、単純に体の硬度を上げる、または特異な先天異能の可能性があるかと」


「そうだな、あのレッドを倒した藤堂君の攻撃が全く通用しなかったという事実だけを見ても奴にダメージを与えるのには骨が折れそうだ」


「それにしてもよく奴の攻撃を受けてこの程度の怪我ですんだものだ…君の体の丈夫さもジャッカル並だよ藤堂君」


「やめてくださいよレナード警部

ホントに死ぬかと思ったんですから…」


「すまない、だが運も君に味方したようだね

まさか私の同期で1番の出世頭が偶然居合わせるなんて」


「レナード、その呼び方は辞めてくれといつも言っているだろう?」


「まぁとにかく本当に無事でよかったよ藤堂君

ソフィも君の事とても心配していたよ」


「ハインツさん、わざわざありがとうございます」


「それから一応これも聞かなければならないが、

ジャッカルに狙われるに至った経緯に心当たりはないか?

やはりレッドの件だろうか?」マライアが問う。


「奴の口ぶりからは、今回の件はレッドとは無関係だと思います」


「では何者かが君の殺しを依頼したということか…

思い浮かぶ者はいないだろうか?」


「今は、これといって思い浮かびません…」


「分かった、医者の話だと君は明日には退院出来ると言う話だったから今日は私がこの病室の護衛を務めよう」


「ありがとうございます」


「それと退院後の護衛だが、しばらく君の周りにはある程度の人数の異能警察を配置することになると思うが了承してくれるか?」


「家族も心配なのでそれはとてもありがたい話です」


「それに、セリーヌ達ラビットテイルの隊員にも私の権限で武器の所持を認める事としよう

君も剣が使えればもう1度奴と遭遇した時、逃げる時間を稼ぐ事が出来るかもしれん」


「何から何までありがとうございます」


「これ以上被害者を増やさない為にも私達はなんとしてもジャッカルを逮捕しなければならない」




警部達が帰った後みんなと少し話をした。

俺の顔を見ると安心してラビットテイルの面々も帰っていったが、弟妹達は病室で一緒に泊まる事になった。

タケマルとたまもが寝静まった頃、俺はかりんとテンからお説教を受けていた。


「もう!またお兄ちゃんは心配かけて!だから言ったじゃない!」


「兄さんが病院に運ばれたって電話を受けた時、腰が抜けてしばらく立てなかったんだから!」


「ごめんな2人とも…俺はもう負けないから」


「そうじゃなくて!もう危ない事しないで!」


「それは無理だ…これが俺の夢だから

これからもお前達には心配かけちまうかもしれないけど、それでも必ず帰ってくるから」


「この2ヶ月で2回も入院してるくせに…」


「え?これが初めてじゃないの?」


「そうだよ!あの時はもっとボロボロで本当に死んじゃうかと思ったんだから!」


「でも今回もちゃんと帰ってきたろ?」


「結果論じゃん!」


「そうよ兄さん!調子にのらないの!」


「まぁそんなに責めないでやってくれよ君達」

マライアさんが仲裁に入ってくれた。


「私たち異能警察には常に危険が付き纏うが

それは全て君達国民の平和を守る為なんだ

お兄さんが平和を守るヒーローだと君達は誇るべきだ」


「でも!もしお兄ちゃんが死んじゃったら嫌だよ!

お兄ちゃんに変わりなんていないんだから!」


「私は昔、1人の異能警察官に憧れていてね

その人は私の命を凶悪犯から救ってくれた人なんだ

でもその人は10年前、亡くなってしまった…」


「それって…」


「そうだ、その人とは君達の母上だよ

君達は大事な人を亡くす悲しみを知っている…

でもその悲しみは何も君達だけが抱えているものではないのだ…


だが悲しみに暮れるだけでなく私は彼女の意志を継ぐため憧れに向かってひた走り同じグレイシスト7に登り詰めた

これは君達の母上が異能警察官でなければ見ることの出来なかった現在の光景なのだよ」


「マライアさん…」


「この世界には命を賭ける価値がある

君達の母上と同じく、私もそう感じているんだ」



翌日退院した俺は大事をとって学校を休むことになった。

放課後になると同級生の4人が家を訪ねてきた。


「あんたの護衛に来たわよ!」


「遊びに来たの間違いじゃないか?

サーシャ、その手に持っている物はなんだ?」


「もちろんアニメのブルーレイとおやつだよ?」


「遊ぶ気まんまんじゃないか!」


その後ろからマライアさんが顔を覗かせた。


「マライアさんまで?」


「聞いた話によると君の妹には姿を変化させる異能を持つ者がいるとか、妹さんにジャッカルの姿に変化してもらいその写真を撮らせて貰えれば捜査が進展すると思ってな」


「なるほど!その手がありますね

たまもー!ちょっといいか?」


「はいなのです〜!やっとたまもの出番がきたのです〜」


「私が異能の使用を許可するから、今からある人間に化けて欲しいんだ」


その後たまもに2人で指示をしながら何度か変化を重ね

俺達が見たジャッカル像を作り出す事に成功した。


こうして今までほとんど情報の無かった殺し屋ジャッカルの姿が全世界へと広まったのであった。

これがきっかけとなりこの事件を加速させる事となる。




―電話をする男―



「おいジャッカルどういう事だ!

殺しを失敗するどころかお前の顔が全世界に広まっているぞ!依頼は達成出来るんだろうな」


「当たり前だ、私は一度受けた依頼は必ず果たす

これ以上用がないなら切るぞ」


「くれぐれも依頼人である僕の足がつくようなことは御免だからな」


「私はプロだ問題ない」

そう言って電話は切られた。


「くそっ!奴が失敗すれば強硬手段にでるしかないか…」




―藤堂家―



「なぁ幸兄、最近家の周りに怖い顔したおっさんが何人かいるんだけどあれ誰?」


「俺を守ってくれている異能警察の皆さんだよ

あまり失礼のないようにしろよ?」


「でも刑事さんって何であんなに見た目が怖いのかしら」


「本当なのです〜、どっちが悪者か分からないのです〜」


「お前らなぁ…」


その時インターホンが鳴る。


「お兄ちゃん!かりん今手が離せないからお願ーい!」


「おぅ」


「たまもも行くのです〜」


「どちら様ですかー?」


扉を開けるとそこにはなんとジャッカルの姿があった。


「あれ?この前変身した人なのです〜」


「たまも!今すぐみんなと裏口から逃げろ!」


「私の狙いは貴様だけだ

貴様が言う通りにすれば家族には手は出さんでやる」


「刑事さん達はどうした?」


「始末したさ、奴らと連絡が取れなくなればじきに応援がやってくるだろう…場所を変えるぞ」


「俺がついて行けば本当に家族には手をださないんだな」


「約束しよう」


俺は玄関にある刀袋を持ち、たまもに伝言を頼んだ。


「たまも、ちょっと用事が出来ちまった

みんなに夕飯までには帰るから心配するなって伝えてくれるか?」


「分かったのです〜

幸兄様が帰るまでご飯食べずに待っているのです〜!」


「もし遅くなったら、先に食べてていいからな?」


「はーい!なのです〜」



そう言い残し幸近はジャッカルと共に家を出たのであった。




第2部 7話 「受け継がれる意志」 完




登場人物紹介




名前:マライア・フィラデルフィア

髪型:赤髪ロングのストレート

瞳の色:黒

身長:173cm

体重:57kg

誕生日:3月27日

年齢:27歳

血液型:O型

好きな食べ物:サーモン、ケッパー

嫌いな食べ物:ジャンクフード

ラグラス:氷華(アイスフラワー)

大気中や、水場の水分を凍らせ操ることが出来る

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