2話 「校長の呼び出し」



あれから俺達は1週間の間みっちりと勉強をした。

その甲斐あってなんとか赤点は避けられるだろうという程度の低い自信だけは持てるようになっていた。


「お兄ちゃん今日から試験だったよね?」


「とうとうこの日が来てしまったよ…」


「かりんたちはもう終わったから今は開放感でいっぱいだよねテン?」


「そうね、テストって初めて受けたけど結構緊張したから今はホッとしてるわ」


「お前も緊張とかするんだな」


「失礼ね兄さん!もう卵焼き食べてあげないからね!」


「え?お兄ちゃん、テンに卵焼き食べてもらってたの?」


「いや、それは…あの…2人ともごめんなさい!」


「「もう!!」」


「幸兄が怒られてる」

タケマルがニヤつきながらこちらを見ている。


「今のは幸兄様が悪いのです」

たまもも今回は助けてはくれなかった。


俺はその後の試験週間も乗り越え、クリスタ先生の地獄の特訓の成果もあって自己採点の結果では赤点は免れたと感じていた。


のだが、昼休み村上先生に呼ばれた。


「藤堂ちょっといいか?」


「はい」


「エマ校長からお前に話があると言われてるんだが、

お前何かしたのか?」


「いえ、特段そのようなことは…

試験も赤点ではないと思うんですが…」


「赤点ではないってお前…

まぁとにかく放課後校長室に行ってくれ」


「分かりました…」


(一体なんの用件なんだ?まさか試験の結果が悪くて退学とか?いやまさかそんなことは…)


俺は考えるのを辞めた。

そして放課後恐る恐る校長室の扉を開くと、

そこには他に数人の生徒の姿もあった。

その中にはよく見知ったいつもの4人の顔も並んでいる。



「これで全員揃ったようだな」


「エマ校長、これは一体?」ソフィが尋ねる。


「いきなり呼び出してすまない

前々から話したいと思っていたのだが試験が近かった為、終わったこのタイミングで皆に来てもらったのだよ」


「それでご用件は何なのでしょうか?」

赤髪の、恐らく先輩の女性が口を開く。


「君達は近頃の異能犯罪についてどう思う?」


「犯人が検挙されている事件だけ数えても、年々増加傾向にあります」

黒髪で眼鏡をかけた、こちらも恐らく先輩であろう男性が答える。


「その通りだ、そこで私は活発な異能犯罪に対してこの警察学校でも近隣の住民を守るべく対応策を練るべきだと考えたのだ」


「どのような対策なのでしょうか?」とソフィ。



「私の権限で学内から選抜隊を組織し、その者達には外部での異能使用の認可を与える事とする、

そのメンバーがここに集まって貰った8名という訳だ」


「なぜ私達なのだろうか?」山形が問う。


「君たち1年生5名の最近の異能犯罪者の検挙率は入校1ヶ月程とは思えん素晴らしい成果だ、

それを評価し選抜させて貰ったよ」



「そしてこの部隊には3名の優秀な2年生にも参加して貰う事とした

この部隊の隊長に任命したいのが、去年の学年主席の入校生であるセリーヌ君、後輩達に自己紹介を頼むよ」


校長がそう言うと先程の赤髪の女性が自己紹介を始めた。


「私は2年生のセリーヌ・フィラデルフィアだ

ラグラスは『氷華(アイスフラワー)』

大気中や水場の水分を凍らせ操ることが出来る」



「そして副隊長にはマルコ君、頼む」

次に眼鏡の男性が話し始めた。


「僕は2年生のマルコ・ベル、

ラグラスは『以心伝心(テレパシー)』

離れている特定の相手と心の声で会話が出来る」



「そして残りの2年生の隊員として林君」

もう1人見覚えのない金髪で頭の上部に2つのお団子が印象的な女性がこちらを向いた。


「私は林 玲(はやし れい)だよ!よろしくね!

ラグラスは『自己再生(セルフヒーリング)』

自分の傷を治すことが出来るの!」



「ってあれ?もしかして幸ちんじゃない?」


そう言われた瞬間ふと、この人と昔に会ったことがあるような気がした。


「もしかして玲姉ちゃん?」


「そうだよ!久しぶりだねー!」


「玲、知り合いなのか?」とセリーヌが尋ねる。


「そうなの!幸ちんとは同じ小学校でね、私が引っ越すまでは昔よく一緒に遊んだ幼馴染なんだー」


「本当にあなたって、3歩歩けば新しい女の子と出会うのね」ソフィが怪訝な目を向けてくる。


「そんな言い方よせよ…幼馴染なんだから…」


そして校長が逸れた話を元に戻す。


「まぁあまり深く考えず部活動のようなものと思ってくれれば良い」


「どんな活動なんでしょうか?」


「活動内容としては放課後に近所をパトロールしたり、近くで事件が起こった際には緊急の人員として派遣する事もあるだろう」


「願ってもない話だな」


「きっと早くから実践を積むいい経験となるはずだ

気が乗らない者は断って貰っても構わない」



もちろん任命された全員がこの話を受ける事となり、俺達8人は最初の任務として自分達の選抜隊の名称を考えてくれと校長からの宿題が出された。


そしてその後自己紹介も兼ねて8人で集まり会議をすることになったのだ。


「では自己紹介も終わったところで、この部隊の名称を何にするか案がある者はいるか?」

セリーヌ隊長が会議の指揮をとる。


「『ヒーロー戦隊マモルンジャー』なんてどうかしら?」


「おいクリスタ、今はふざける時間じゃないぞ」


「何言ってるの?大真面目よ」


「…」


「他に案がある者はいないか?」


「『魔法少女隊サーシャーズ』はどう?」


「サーシャ…言いたい事はこれだけじゃないが男もいるんだが…」


「えー?可愛いと思うんだけどなぁ…」


「では『武士道一家』などいかがだろうか?」


「山形、お前の案がマシに思えてくるよ…」


「ぷはははは、幸ちんの友達は面白い子ばかりだねぇ」

玲が笑いを堪えられず吹き出してしまう。


結局その日は纏まらず、明日改めて皆で案を持ち寄る事となり解散となった。


夕飯の際、夏鈴とテンにその話をしてみた。


「何かいい案ないかな?」


「この前時代劇で見たのだけど『鬼面組』なんてどう?」


「テン…それは警察に捕まる側の名称だよ…」


「じゃあ『妹ラブ隊』にしなよ!」


「どんな羞恥プレイだよ!」


俺は自分で考える事にして、話をすり替えた。


「あ、そう言えば小学生の頃よく一緒に遊んでた玲姉ちゃんに学校で再会したんだ!」


「誰それ?」


「お前覚えてないのか?玲姉ちゃんだよ!」


「かりんそんな人知らないよ?」


「まぁお前はまだ小さかったから覚えてなくても仕方ないか…」


その次の瞬間、タケマルが

「隙ありー!」と俺の皿から唐揚げを奪って頬張った。


「こら!タケマル!兄さんのおかずとらないの!」


「幸兄様わたしの唐揚げあげるです〜」


「たまもは自分の分食べていいんだぞ〜」

幸近はたまもの頭を撫でながら言う。


「おいタケマル、後で道場に来いよ稽古つけてやる」


「あー、幸兄が怒った!助けてテン姉!」


「タケマルが悪いんだからちゃんと謝りなさい!」



こうして本日も無事平和に1日が終わったのだった。




第2部 2話 「校長の呼び出し」 完




登場人物紹介




名前:セリーヌ・フィラデルフィア

髪型:赤髪ロングのストレート

瞳の色:紅

身長:171cm

体重:55kg

誕生日: 3月30日

年齢:19歳

血液型:O型

好きな食べ物:シーフードパエリア、クロワッサン

嫌いな食べ物:フォアグラ

ラグラス:氷華(アイスフラワー)

大気中や、水場の水分を凍らせ操ることが出来る



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