第2部

1話 「また、始まる」



「幸兄様朝なのです〜!早く起きないと遅刻なのです〜」



朝7時、いつもと同じく妹に起こされた。



「今日はたまもか、おはよう」


「みんなで一緒に朝ご飯を食べるのです〜」


「今行くよ」


リビングに入ると他のみんなはテーブルについていた。


「幸兄遅いよ!ご飯冷めちゃうじゃん!」


「お兄ちゃんおはよーう!」


「おはよう幸近兄さん、はやく食べましょう」


「待たせて悪かったな」


朝ご飯を食べていると夏鈴が嫌そうな顔で呟く。


「かりんたち明日から中間テストなんだー…」


「テンはいつも勉強してるから心配はないだろうが、

夏鈴は大丈夫なのか?」


「もう全然だめ、テンに勉強教えてもらわないと…」


「私で良ければかまわないけど」


「ありがとう!そう言うお兄ちゃんは試験とかないの?」


「…」幸近が無言で青ざめる。


「どしたのお兄ちゃん?」


「忘れてた…」


「え?」


「どうしよう夏鈴!来週から試験なの忘れてたよ!」


「もう兄さんったらなんでそんな大事なことを忘れちゃうの?」テンは呆れていた。


「幸兄はホントおっちょこちょいだよなー」


「タケマル!幸兄様はほんの少し抜けているだけなのです!」


「ははは…」

(たまもよ、それはフォローにはなっていないぞ…)





学校に着いてからも浮かない顔でいるとクリスタが話しかけてきた。


「はぁ?あんた今から勉強しても間に合うわけないでしょ!」


「だよなぁ…」


「まぁでもどうしてもって言うなら、わたしが勉強みてあげてもいいけど…」


「本当かクリスタ様〜」


「そうよ!もっとわたしを崇め奉りなさい!」


「なぜか今だけはお前が神様のように神々しく見えるよ〜」


「そりゃそうよ、能力でそう見えるようにしてるんだから」


「そんなくだらない事に能力使うなよ」


「あ!あんた今くだらないっていったわね!そんなこと言ってると…」


「クリスタちゃん、あたしにもお願い〜…」

涙目のサーシャが話に割り込んできた。


「もうあんたまで…しょうがないわね」


「ソフィは勉強大丈夫なのか?」

隣ですまし顔の彼女にも尋ねてみた。


「当たり前でしょう?私を誰だと思っているの?学年主席様よ」


「ソフィちゃん…助けて〜」


「もうサーシャったら…仕方ないわね」


「じゃあせっかくだから試験までの残り1週間、唯も誘ってみんなで勉強会なんてどう?」とクリスタが提案する。


「それはとてもありがたい話だが、場所はどうする?」


「そんなの決まってるじゃない、みんなで勉強できる所なんてあんたんち以外どこにあんのよ」


「そうね、テン達にも会いたいしちょうどいいわ」とソフィも続く。


「なんかパーティみたいで楽しそうだね〜!じゃああたしアニメのブルーレイ持っていくよ〜!」


「「それはやめなさい!!」」

珍しくソフィとクリスタの息が合った。


その日の放課後、皆が俺の家に集まった。


「もうお兄ちゃんったら、お姉ちゃん達が来るなら連絡してよね!なんの準備も出来なかったじゃない!」


「悪かったよ、突然決まってな…」


「ねぇこの写真に写ってるのってあんたの両親よね?」

クリスタがリビングに立て掛けてある写真を指差して言う。


「あぁそうだ」


「あんたの親って見たことないけど何してる人なの?」


「母さんは異能警察だったんだ、

無能力者で初のグレイシスト7になった人で俺の憧れだ」


「へー、すごい人なのね」


「10年前、デニグレとの抗争で殉職しちゃったけどな」


「そうなのね…変なこと聞いちゃったかしら…」


「いや、そんな事はない

母さんは自分の仕事を全うして多くの命を救ったんだ

俺はそれを誇りに思ってる」


「じゃああなたが異能警察になりたいのもお母さんに憧れての事だったのね」とソフィ。


「ガキの頃母さんにその夢の話をすると、とても喜んでくれたんだ

それで大人になったら同じ制服を着て一緒に写真を撮ろうって約束したんだ…」


少しの沈黙が流れたがすぐにそれはかき消された。


「その写真!みんなで撮りましょうよ!」

クリスタが思いついたように話す。


「それはいい考えだなクリスタ殿!」


「あたしたちが一緒に写ってもいいよね藤堂くん?」


「そうね、その為にはこの人を落第させないよう勉強しないとね」


「これは手厳しいですねソフィさん…

みんなありがとう、叶えたい夢がもう一つ増えたよ」


その時、隣にいた夏鈴が俺に向かって嬉しそうに小声で囁く。

「良かったね、お兄ちゃん」


「あぁ」



「ところで幸近のお父様は剣術の師範だと言っていたが、

どこに居られるのだろうか?」


「そう言えば山形には話していたな

俺の父さんはこの剣術道場の跡取りで、母さんとは門下生同士だったんだ」


「ご存命なのだろう?」


「生きてはいるんだが、母さんが亡くなった抗争に父さんも巻き込まれて目を悪くしてな…

それからは家を留守にする時間が増えて、今ではほとんど帰ってこないんだ」


「それは残念だ、是非ご挨拶したかったのだが」



その後残りの弟妹も帰って来て、騒がしくなりつつも俺たちは勉強会を始めたのだった。



「あんた何回同じこと言わせるの!

だからこれは刑法246条だってば!」


「そんな頭ごなしに怒鳴らなくても…

ソフィさん、クリスタが鬼教官すぎるんだが…」


「何度も同じ問題で間違えるあなたが悪いわ

サーシャそこ間違ってるわ、この問題は…」


「なるほどぉ、ソフィちゃん教えるの上手だねぇ」


ソフィが優しくサーシャに勉強を教える姿を見て幸近がクリスタの方を見る。


「なぁクリスタ、お前もああやって優しく教えてくれてもいいんじゃないか?」


「なによ…じゃああんたもソフィに教えて貰えばいいじゃない」


悔しそうな顔のクリスタを見てタケマルとたまもが茶々を入れる。


「あー!幸兄がクリスタ姉をいじめてる!」


「幸兄様!女の子をいじめちゃダメなのです!」


その言葉を聞いて幸近は慌てて弁明する。


「違うぞ!決してそんなことはしていない!

俺はクリスタに勉強を教えてほしいんだ!

お前じゃなきゃダメなんだ!」


「え?」顔を赤らめて下を向くクリスタ。


(咄嗟だったから妙な言い方になっただろうか…)


「仕方ないわね…そこまで言うならもうちょっと優しく教えてあげるわよ…」


その時何故かソフィの肘が俺のみぞおちにクリーンヒットした。


「痛っ!!」


「ごめんなさい、肩が凝ったから腕を回そうとしたら偶然肘があなたのみぞおちに当たってしまったわ」


「ぐ、偶然って威力じゃなくないかコレ…」


「何を言っているの偶然よ、あなたレベルになるとこんなこと日常茶飯事でしょう?」


「どんなレベルなのかは知らんが、それは早く経験値周回しないと命の危険を感じる…」


「今は勉強に集中しなさいよ、落第候補生さん」


「なんか怒ってるのか?」


「そんな訳ないじゃない」



そんなこんなありながらも勉強がひと段落ついたところで、夏鈴が声をかけてきた。


「みんな今日晩ご飯うちで食べていきなよ!

かりんも勉強でご飯作れなかったからお兄ちゃんピザとろう!ピザ!」


「そうだな!みんな遠慮せず食べてってくれ」


その後皆で晩ご飯のピザを囲む賑やかな食卓の風景に

こんな日がいつまでも続けばいいと思う幸近だった。




第2部 1話 「また、始まる」 完




登場人物紹介



名前:藤堂 真鈴(とうどう ますず)

髪型:青みがかった黒髪のセミロング

瞳の色:黒

身長:163cm

体重:49kg

誕生日:8月1日

年齢:享年33歳

血液型:B型

好きな食べ物:栗羊羹

嫌いな食べ物:生魚

ラグラス:なし


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