第6話 侵入部員、ルゥ

 コンビニから、ルゥを連れ出した。


『モモネさん。ありがとうございます』


「モモでいいよ。よっこらせっと」

 

 動くとまた電池がなくなってしまうので、私がおぶって持ち帰る。


 ルゥが使っている身体は、あまり電池の持ちがよくない。

 重いのに、よく動けたものだ。

 

「ところで、いつ動けるようになったの?」


『朝早くです。それまでは、ずっと充電をしていました』


 充電が済んで学校の外に出たが、電子頭脳がなくて動きづらかったという。


『それでお昼休みに、あなた方が見つけてくれるまで、ずっとコンビニで充電をしていました』


 コンビニの位置はわかっていたので、その都度充電しながらミザルゥの本社か支社まで向かおうとしていたらしい。 

 気が遠い話だね。ここから支社まで、何時間かかるかと。


「ムリに歩いたせいで、パーツがグラグラになっているわ。部室に戻ったら、治してあげる」


『ありがとうございます。詩麻シーマさん』


「モモちゃんからは、しーちゃんって呼ばれているわ。あなたもそう読んでちょうだい」


『わかりました。しーちゃんさん』


「……それでいいわ」 

 

 ルゥを連れて、部室に戻った。


 ネコモンは最初いぶかっていたが、事情を説明すると、対処してくれた。


「しばらくは、これでガマンしてくれ」


 ネコ型アンドロイドに使う予備の電子頭脳を、ルゥに搭載する。


「遠隔操作で動かしていただけで、学校の外まで持ち出せるとは」


『スマホの電波が繋がっていれば、造作もありません』


「どこへ行くつもりだったんだ?」


『電子頭脳のある場所まで。会計は、会社の財産を用いようかと思っていました』


 案外、大胆な女だな。


「よし」

  

 パーツの記録媒体では足りなかった分を、電子頭脳に送信する。

 

「よりルゥ。君は侵入者ではあるが、新入部員として歓迎しよう」


「おおむね、侵入部員だね」

 

 思わず、オヤジギャグを飛ばしてしまう。


 コンビニで買ってきたお菓子で、お祝いをする。


「とりあえず、かんぱーい」


 缶の炭酸で、乾杯をした。炭酸はペットボトルでもおいしいけど、やっぱりこういう席は缶でしょ。


「ところで、ネコモン。学校への手続きは、どうなさるんです? 彼女はアンドロイドで、実在していません。第一、戸籍がありませんよ」


「それなんだよなあ。しかし、生まれてしまったものを排除ってのも、なんだかかわいそうな気もするし」


 それは、私も同感だ。


 ただでさえ、会社の倒産という状態に追い込まれ、下手をすれば破棄されているところだった。


 そこで学校からも爪弾きにされるってのは、気分が悪い。


「いいじゃん。部員として迎え入れようよ」


 面倒な手続きは、ネコモンがすべてやってくれるという。

 ケモナーをこじらせているヘンタイってだけで、彼はやるときはやる人間だ。


「じゃあ、戸籍関係などは、お願い。私たちは、電子頭脳を集めよう」


「人間サイズの電子頭脳は、高いぞ」


 そうだったー。


 うちのパーツでも、電子頭脳は補助的なものしか置いていない。おまけに、持ち出せないものばかりだ。


 しーちゃんの家も、脳までは取り扱っていない。さすがに脳は、いじってどうなるわけじゃないもんね。



「予算はこちらが用意する」


「世の中には、研究費というのがあるんだよ」


 ネコモンから、名刺をもらった。

 これで買えという。


 では、ジャンク屋へGO。

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