【リレー小説企画】暇な日に捧げるギャグ小説を書きたい。

上殻 点景

第4話

 山田ロレジュリアわたし大エレガントジジイは、

 ミニトマト(トラ)に乗って、山道をぶち飛ばす。


 数時間、いや数分、たった一瞬にも思える時間を経てようやく、

 ジジイと同じ極致にたどり着きましたわ。

 ワンピースは糸がほつれ、帽子による肩凝りが酷いですが、些細な事。


 (動物との会話、世界とは、宇宙とは、そういうことだったんですね)

 

 朝露から落ちる一滴の中に自分を見つめる

 ────【静の精神】こそ動物との会話において最も必要な事。


 「ひやっふううううううううううううううッ」


 風────私は風になっていますわ。

 舞うは嵐、奏でるのは爆音。

 木々を揺らしながら走る姿は、地を食らう野獣の如く。

 

 (ミニトマトと一体化した私は誰にも止めれませんわ)


 車が、前を走っていますわね。

 パッと見は、スポーツカーを思わせる車体。


 「山田ッ、この先はカーブですぞ」

 「爺ッ、舌かまないように捕まってなさいなァ」


 相棒プチトマトに指示は不要ッ。

 

 地面3cm先を、黒いワンピースを通り抜けさせ、

 ヘヤピンカーブに、制動機ブレーキが壊れた速度で突っ込んでいきますわ。


 「ちんたら、走ってんじゃないんですわ」


 髪をたなびかせながら、後ろに悪質発言を差し上げますわ。

 抜き去った車────お嬢様ウインクは追加で送ってあげますわ。


 「おいおい、見たか今の車」

 「ああ、防護柵ガードレールスレスレをかっ飛んで行きやがった」

 「神風走行とかの比じゃねぇ。見てるこっちがヒヤヒヤしたぜ」


 「......まず、車じゃないだろってツッコミはないのか」


 ────なんて声が、風に乗って聞こえた気がしますわね。

 

 「名実ともに、峠下り最強はこの私ですわッ」


 後ろで爺がオロオロ言っている気もしますし、

 プチトマト(ゴリラ)の姿が見えない気がしますが気にしませんわ。


 スーパーまで数分。

 このまま、突っ切りますわよ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【リレー小説企画】暇な日に捧げるギャグ小説を書きたい。 上殻 点景 @Kagome_20off

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る