第三十一話 二人の昔

オスト(...眠れない...久しぶりに、あそこへ行ってみるかな...)

オストは、あの墓地へ向かった

そこに居たのは、レイだった

レイ「オストも眠れないんだ」

オスト「...うん...」

墓地は変わらず静かだった

レイ「...ここで話すのも、久々だね...」

オスト「...なんだか、懐かしいことを思い出せそう...」

レイ「えっ本当?昔について知りたいな!」

オスト「...でも、昔のことは、あまり思い出したくない...」

レイ「えっどうして?」

オスト「...あのことがあってから...!うぅ...!」

オストは、まるで"それ"を拒絶するかのように、震えている

そんなオストを安心させるように、レイは優しく包み込んだ

レイ「大丈夫だよ...もうそんな苦しみは、経験しなくていいの...」

オストは、その優しさに包まれて、涙をこぼした

オスト「うぅ...また、抱きしめられた...嬉しい...」

レイ「抱きしめるなんて当たり前でしょ、親友だもん!」


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レイも、オストも、昔の名前なんてなかった

昔からひどい扱いを受けてきた

虐待は当たり前、ゴミを投げられ、暴力を受けてきた

何をしようと、何があっても、理不尽にやられたんだ

そんな日が嫌で、ずっと墓地に居た

なんで墓地に居たかって?

雨風をしのげる場所があったんだ...

そして、何日もここにいると、当然二人の様子も変わるわけだ

オストは、ゾンビになる前の日、墓に居たら、町の人がオストを埋めてきたんだ

オストは抵抗するが、やはり大人の力には勝てなかったんだ...

地中で息ができないように、水をかけられて、死んでしまったんだ...

もちろん、レイは悲しんださ...

一緒に過ごした親友が亡くなるなんて思ってなかったんだ...

親友がいなくなって、何をしたか?

そりゃぁ...親友に会うために死んだのさ...

それも呪殺、本当に怖いよ

でも、レイは苦しみなく逝ったんだ

もうすぐ会えるよって言いながら、死んでいったんだ

すると、レイは霊となっていたんだ

ただ、ここで一つ問題があった

レイは墓に入れられず、森に放置された

死体は腐り、そして土に還る

レイは墓地の場所を知りたくて、いろんな場所を巡る

でも、そんな簡単に見つかるわけがなかった

オストも、親友を見つけたかった

でも、死んでから数年したせいで、忘れてしまっていた

そして、ずっとあそこにとどまっていたんだ

レイは、ずっと探し、ついに見つけたんだ、墓地を、オストのいる墓地を

オストを見つけるのは簡単だった、でも記憶がないから避けられる

だからレイはずっと見ていることにしたんだ、思い出すまで

でも、何年も何十年も待っても、思い出すことはなかった

そんな様子を見て、森に帰ろうと墓地を出た後に、ポルサネが来たんだ

それをレイは気にせず、森に行った

どうせ他の人の墓参りなんだろうと、無視をしていたんだ

そして森で独りぼっちで過ごした

すると、赤い髪の女の子、ルミがやってきたんだ

ルミは家を建て始めた

そんな様子を見て、レイは何かを感じたんだ

なんとなくオストに似ているってね

だから声をかけてみたんだ

「何をしてるの?」ってね

そしたらこう帰ってきたんだ

「雨風をしのぐ場所が欲しいんだ」と

昔オストが言ってたことを思い出して、屋敷を建ててあげたんだ

そしたら、「ありがとう」と言われたんだ

昔から言われたかった言葉を言われて、レイは涙を流した

「嬉しい...私からも...ありがとう...」

そして、一緒にあの屋敷に住み始めた

すると、ポルサネに出会った

最初は、あまり近寄りたくなかった、また理不尽な目にあわされるのではと

不安だったんだ

でも、ポルサネはそんなことをする人じゃないんだって

心で察したんだ

まあ、ユリが怖すぎて、一回は逃げたんだよね...

でも、ポルサネと一対一で話して分かったんだ

この人は信頼できるって

──────────────────────────────────────


そして今

そして、変わり果てた姿のオストにも会えたんだ

レイのことを思い出すことができたんだ


ずっと会いたかったんだ...

ついに思い出したんだ...


二人は、再度抱き合った

『...これからも、よろしく...』

朝が近づいている、二十九日目が終わって、三十日目が始まるんだ

オスト「...さぁ、帰ろう...」

レイ「...そうね...」


二人は手をつなぎ、家へと帰っていった

この先も、乗り越えられるのだろうか…

まあ、ポルサネがいるから大丈夫だろう…

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