第20話 vs ネクロクラウド

 立ち上る黒い煙と、降りてくる黒い雲。

 それが混ざっていく。


 沸き起こる不吉な予感……。


 

 そうして現れたのは巨大な黒い雲の顔!?

 なんだよこれ!


 

「まさか……」

 巨大な顔を見つめるミルティアは何かを知っているようだ。

 

「どうした?何か知ってるのか?」

 今すぐ逃げ出したい衝動を抑えながら聞いてみた。

 

「アンデッドモンスターと自然が融合してる……あれは……ネクロクラウド……」

「なんだよそれ?強いのか?」

 めちゃくちゃでかくないか?

 この船の何倍あるんだよ?

 

「わからない……いや、相当強いと思う。なんでいきなりこんなとこに?」

「どうした?どういうことだ?」

 問題はどれくらい強いのかだぞ?いや、明らかに強いですオーラを放ってるんだが……。


 呆然と眺めていると、そいつが大きな口を開く。

 

『グウォワオキギャイラカウオアー!!!!!!』


 何だこの声。気持ち悪い。


 そして上空に暗い光が集まって……降ってくる。


「うぉわっ」

 俺達はとっさに伏せたが、その光は船を外れて海にぶつかる……。

 そして起こる凄まじい爆発。


 めちゃくちゃ船が揺れる~~~~。


 なんだよ今のは!?


「倒せるイメージがわかないんだけども!!!!」

「いいから逃げて!」

 

 そこから連続して放たれる暗い光。

 逃げ続ける俺とミルティア。

 もとからボロボロの船だったが、もうズタボロだ。

 

 なんだよ!こんなんばっかじゃないかよ!?

 毎回敵が強すぎるだろ!?

 もっと初心者に優しいモンスターか、サキュバスとか出て来いよ!!!!


 

「なんかないかミルティア!?」

「なんかって?」

 黒い光から逃げながら可能性を探る。

 

「ほら、さっきのスキル本だっけ?あいつに攻撃できそうなスキルを俺に!」

「無茶言うな!そんなの都合よく持ってるわけが……いや、ある。あった!」

 ミルティアが鞄からオレンジの本を取り出した!

 おぉ?マジで?


「行くよ!」

 ミルティアがその本を俺に投げてきた。

 痛そうだけどちゃんと当たる俺。

 実際痛い。


 《おめでとうございます。あなたのスキル・夜の帝王が解放されました》

 

「なんじゃそりゃ!!!!!!!」

「あっ、ごめん間違えた!」

 ミルティアが手を合わせてごめんのポーズをしてきた。

 

 どういうことだよ?間違えたって何?

 間違いでなんかとんでもないスキルが解放されたんだけどさ!!!

 もともともってたやつだし、予想通りの効果なら嬉しいけども!!!


「こっちだったよ!行くよ!」

 またオレンジ色だ。不能とかを解放するなよ?

 なんで覚えてるのかわからないけど、夜の帝王が不能とか意味わからんからな!!


 

《おめでとうございます。あなたのスキル・魔法剣(聖)が解放されました》

 おぉ!!聖属性!!!

 

 ……って違う気がするんだが!

 魔法剣であれにダメージ入れられる気がしないんだが!!!!



「頑張ってアナト!」

 向こうでは俺に何かを期待しているオレンジ色のヘンテコ自称美少女女神が腕を掲げてる……。

 くっ、文句言いづれぇ~。そう言う作戦か!!


「無理だろ!こんなのでダメージ与えられるような大きさじゃねぇよ!!!」

「バレたか……てへ♡」

 舌を出すミルティア。美女や美少女がやったら可愛いだろうけど……。

 

「てへじゃね~よバカミルティア!」

「なんだよアホアナト!なんとかしろ!!!」

 無茶なことを叫んで来る。


 もういいや、呼ぼう。

 うん、今しかないな。

 な、そう思うだろ?


「アナト!」

「あぁ」

 ミルティアもこっちを見ている。俺の雰囲気が変わったのに気づいたんだろう。

 そうだよな!これを使う時だな!俺は貰った指輪を掲げる……。


 

「頼む、古代の神獣様。救援を!」

「なにしてんのさアナト!!!!」

「えぇ?」

 イメージを共有してなかった……。

 ミルティアは俺に何を求めてたんだろうか?

 

 

『ふむ……』


 現れたのは、聖なる力を浴びて復活した巨大な古代の神獣。


 ネクロクラウドの厚い雲を突き破り、巨大な顔を切り裂きながらその神々しい姿を現したのだった。


 すげぇ~神獣様かっこいい!!!!


「アナトーーー」

 ミルティアが叫んでいるが、どうした?

 

「なんだよ。倒せるイメージなかっただろ?」

「ボクに頼りなよ!今こそ渾身の一撃を!」

「ないないないない。神獣様にかすり傷すらつけれなかったじゃん……それにお前、『なんとかしろ』って言っただろ!」

 ミルティアは自分の胸に手を当てて自信満々な様子だが、今まで何か倒せたのかそれで????

 

「むぅっ」

 なんで膨れてんだよ!



『ふむ、珍しい魔物と戦っておるの』

 現れた神獣様がネクロクラウドに首を向けたままこちらに話しかけてくる。

 

「やっぱり珍しいの?」

『あぁ、あれは古代に存在した怨念の塊。自然を取り込んで強大化したアレは神族でも手こずる相手であるのぅ』

 なんでそんなやばそうなのばっか出てくるんだよ。

 呪われてんじゃないか?

 もしくはみんな戯神様の"おしり"に集まってるとか???

 

『だが我の敵ではない』

 おぉ!!!さすが神獣様!カッコいい!!!!


『味わうがよい。我が咆哮を。


 グオォォオォオオオォォオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!』



 やべーの来た!!!!!!!!!!!!!!!


 

 神獣様の口から放たれた白い炎を伴った凄まじい衝撃波。

 とんでもない攻撃に俺とミルティアはドン引きだ。

 咆哮と言いながら凄まじい量の魔力がこもった超凶悪な攻撃だった。


 前にもしあれを放たれていたら戯神様の"おしり"とか関係なく物語が終わるところだったな……。

 


 神獣様の攻撃はネクロクラウドってやつをあっさりと突き破った……。

 なんか暗い色の雲がバラバラになっていくよ?


『案外早いお呼ばれではあったが、あれが相手では仕方ないのぉ。我が言うのもなんだが、もうちょっと安全に行った方が良いぞ?』

 今まさにあの化け物みたいな魔物を倒したというのに涼しい顔……表情何かわかんないけど……で俺たちに注意を促してきた。

 

「ありがとう、神獣様。このバカ女神にはよく言って聞かせるので」

「うるさいよアホアナト!」

『はっはっは。面白いのぅ』

 こうやって笑えるからまだいいけどな……。

 

『ではこれでな。人間たちの船に見つかっては厄介じゃ』

「「ありがとう!」」


 神獣様はまだネクロクラウドが消えきらない中で、あっさりと消えていった。

 

 そして霧散したネクロクラウドが消えていく中で俺は落ちてきた何かを掴んだ……。


「なんだこれ?」


 それを見て驚くミルティア。

「ん?えっ?アナト!!!!」

「なんだ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る