第21話 配信 ~エロ本だって?(怒)~

「幽霊怖い幽霊怖い幽霊怖い」


 ???:あっはっはっは!

 ???:アナト弱点多くないか~~

 ???:遊神ちゃん容赦ない!スキ~~~~~~~!!!!!

 ???:遊神ちゃん、ボクチンにも電撃を!はぁはぁはぁはぁ!

 ???:やめろ変態!配信切られるぞ!!!


 いや切らないけども。

 ちゃんと投げ銭も溜まって行ってるし、配信自体は良い感じだ。


 問題はこのクソおやじだ。


「ふっふっふっふ。もっと投げ銭や投げアイテムを集めるために、少し手を貸してやろう!」

「なにするの???」

 

 まともな手段であるとは思えない。

 それならボクにやらせればいいからだ。


 変な事したら許さないからね!火神さまが……。


 いや、起きて!火神さま、起きて!寝てる場合じゃないから!!!


 部屋の隅っこでサイズのおかしい火竜が気持ちよさそうに寝てやがった。




 そして画面に映るのは白いもやから逃げ惑うアナト……ぷっ、かっこ悪い。


 ん?まさか。


「あ~っはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!白いもやくらいなら攻撃でもないから構わんだろうっはっはっはっは!!!!!」

 このクソおやじ!意外と面白いじゃないか!!


 ???:あははははは。いいぞ冥神様ー!!

 ???:あっはっは。めっちゃビビってる!ウケるwwwww

 ???:見ろよアナトのあの顔!たまにはいい仕事するな冥神様!!!!!

 ???:冥神様いいぞ~~~!!!!


 こいつら……ボクのアナトで遊んで!(怒)

 ボクはおやじを睨む……と、またボクの横を通っていくキレイな何か。



「ぐぉ、やっ、やめろ!戯神!ぐぉ……!?」

「ストーーップ、戯神ストーーップ!!!」

 ふたたび冥神の首を絞めはじめた戯神をボクは慌てて止める。

 デジャブじゃないか?

 今度はなんで怒ってるんだ!?もしかしてアナトが遊ばれたから?まさか戯神……。


 ???:ガハハハハハハ!いいぞ戯神!!!

 ???:やばいウケる。美女に首を絞められるおやじとか絵が酷すぎるwwwwwwwwww

 ???:いい気味だ~~(ぶくぶくぶくぶくぶく)



 本当にここは神界なんだろうか。

 配信は楽しいけどちょっと心配になるよね。



 「そこには旅の序盤に虫から逃げ惑っていた弱弱しいアナトの姿はもうない。あるのは火の魔法剣によってアンデッドモンスターを倒し続ける頼もしい男の姿。見てほしい、この変化を。旅の中で失敗しつつも様々な経験をし、成長した男の姿を!彼は成長し、様々な敵とも戦える立派な剣士になったのだ!!!」


 おっ、ついにスキル本を使ったね。

 くれた神さまはご愁傷様だったけど、アナトの役には立ったね。

 そもそもあんなにスキルをため込んでるアナトは相当頑張って戦ってきたんじゃないだろうか。

 普通覚えても覚えてもスキルが使えなかったら、不貞腐れて諦めてしまいそうなのにめげずに頑張って覚え続けたんだろうな。



 ???:おぉ~~~。スキル本、いいじゃないか!

 ???:本当ね。予想外に頑張ってるじゃない。

 ???:ちょっとカッコいいかも……。


 アナトへの応援も増え……てるか?笑われてるときに比べて反応が薄いけど、ゼロじゃないからいっか。



 ???:ふむ。ああやってスキル本を使ってスキルを解放したら強くなるわけだな。だったら俺もなげてやるぜ!

 ???:えっ?いや、お前はやめとけよ、夜神!

 ???:ばらすなよお前!もういれちゃったぜ!?


 見てる人たちは相変わらず何をしてるんだろう。

 

 ボクのところに届いたのはオレンジ色のスキル本・夜の帝王だった……。

 ふざけんな!(怒)


 ???:えっ?ダメ?あいつが持ってるスキルだろ?なんで~~~!?

 ???:あはははははは。ダメだろ!そりゃ怒るわ!

 ???:怒ってる遊神ちゃんかわゆす!

 ???:遊神ちゃん、ワタクチにも鞭を~!!!


 鞭なんか使ったことないからね!!!


「もうっ、ほんとになんなんだよ!こんなスキル本、アナトには使わないからね!」


 ???:あはははは。夜神ドンマイ!

 ???:嫌われちゃったね、夜神ざんねん!

 ???:いい気味ね。ちゃらちゃらしてるからよ。

 ???:チーーーーーン


 いや、そんな落ち込まなくても。


「遊神……視聴者へのダメージは控えて……」

「わかってるよ!別に〇ねとか思ってないから!!」


 ???:えっ?ほんとうに?

 ???:やったな夜神!

 ???:ここはもう1個投げて挽回するんだ、夜神!!!

 ???:えっ?なんでめいしんさ……(ぶくぶくぶくぶくぶく)

 ???:よし、行くぞ!今度はこれだ!


 なにしてるんだよ、冥神さま。ほんとに抜け目ない……。

 投げられたのはまたオレンジのスキル本・魔法剣(聖)だった。


 これは良いんじゃないか?

 これならある程度のアンデッドモンスターなら無双できる。


 ボクがそう思ってると……


 ???:おいおいおいおいおいおいおいおい

 ???:なんだありゃあ?

 ???:やべぇな。今回のはいつもより酷くないか?

 ???:(失神……)


 えっ?


 画面に映ったのは天まで届く黒い雲でできた顔……なにあれ?


「(そろりそろりそろりそろり)」

『冥神。なにをやってるんだ?』

「ぎくぅ」

 こっそり部屋から出ていこうとしていたクソおやじは目を覚ました火神さまに呼び止められる。



「ぎくぅじゃないよ!なんなんだよあれ!!!」

「しっ、知らん。ワシは知らんぞ!?あんなところでネクロクラウドが出てくるなんて!」

 ボクの文句にあわてふためく冥神さま……。

 

「……ネクロクラウド……怨念と自然が合体した魔物……あれは危険……」

 画面をぼーっと見つめている戯神がつぶやいて教えてくれたそれは明らかにやばそうだった。


 ボクは慌ててスキル本を化身に送った。

 こんなので倒せる気がしないけどないよりはましだよね!

 ……あっ、2冊とも送っちゃった。


 頼むよボクの化身!魔法剣(聖)だけに……ってもう使ってる~~~~~~(涙)


 ごめん、ごめんよ。そりゃそうだよね。

 慌ててるときに同じ色のスキル教本があったらムリだよね。

 くそ、夜神め~~~~。


 ???:あっはっはっはっは、遊神ちゃん、自分で送ってるじゃん!あっはっはっはっは


「あぁん?(怒)」


 ???:あっ……

 ???:ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 ???:ダメ~怒りを鎮めて~

 ???:くぅ、こうなったら私が……これをどうぞ!


 どうしたのかな?ちょっと怒っちゃったけど、何かくれたのかな?


「って、こんなもんいるか~~~~!!!!」


 ???:(ゴボゴボゴボゴボゴボゴボ)

 ???:(こえぇえぇぇぇええええええええ)

 ???:おい、なに送ったんだよ!?


「あぁん?」


 ???:ごめんなさいごめんなさいごめんなさい


「あっはっはっは。エロ本。っはっはっはっはっは!!!!」

 ぶちっ。


「ん?おい……遊神……遊神ちゃん???」

「冥神さま……覚悟はいいな?」


 ???:あぁ、遊神ちゃんだめ!それはさすがに!!!

 ???:戯神ちゃんの首絞めも良かったけど、遊神ちゃんのアッパーカットもウケるなwww

 ???:しかも畳みかけるようなラッシュ!!!誰か!誰か止めて!!

 ???:ダメだ。あそこに止める神がいない~

 ???:おい!アナトの画面見ろよ!すっげーぞ!!!


 ん?そう言えばどうなった?

 化身に変な反応はないから消されたりはしてないはずだけど……って、


 えぇええええええ!!!!!!!


 ???:すげぇ~さすが古代の神獣様だ!!!!!!

 ???:あれは我々よりも強いのではないか?

 ???:戦いが終末の戦争みたいなんだが……。

 ???:これドキュメンタリーだよな?特撮じゃなくて?

 ???:また異界の概念を!?


 画面の中ではアナトが古代の神獣を呼び出していた。

 そして古代の神獣の凄まじい攻撃一発でネクロクラウドが消し飛んでいた……。






 強すぎじゃないか????






 よかった、アナト♡



 ???:えぇぇぇぇえええぇぇええええええええええええええええ!!!!!!!!

 ???:待って!待ってよ遊神ちゃ~~ん!!!!!

 ???:余もあれくらいの力を見せれば好かれるのじゃろうか?

 ???:こっちも待って。ダメだから。光神様、ダメですって~~~!!!!

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