第2話 つぶす女神あれば笑う女神あり
「お前はな……ぷっ……少しずれた次元でな……大いなる神のな……ぷぷぅ……"おしり"に挟まっておる、ぷはーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは」
「はっ????」
すまん、なんて言った?よく聞き取れなかったんだが……。
「あっはっはっはっはっはっは。次元がずれていて助かったなっはっはっはっはっは」
もう意味わかんねぇよ。
なんだよ次元って。
「はひーーーー(ぱたり)」
笑いながら気絶しやがった!ふざけんなよこのヤロウ!!!!!!!
笑撃の事実……いや、衝撃の事実を口にし、笑いながら気絶した神官を前に絶句するアナト。
お付きの方々が慌てて神官を介抱している。
どうやらこの神官は神殿長らしい。
こんなのがかよ!
そう思いながら俺は部屋を出る。
すると、部屋を出たところにオレンジ色の髪の女の子がいた。
神殿に来る途中でぶつかった子だ。
「さっきはごめんね。まさかこんなことになってると思わなくて」
「どういうことだ?」
申し訳なさそうに頭を下げる女の子。なぜこの子が謝ってくるんだろう?
よく見ると可愛らしく見えるのに、さっき笑い転げてたから服に泥がついたまま……。
やっぱり色々と台無しだ。
「ボクは遊神の化身ミルティア・アベンディアだよ」
「は?カミサマ……!?」
「化身だけどね。中身は遊神だよ!ミルティアって呼んでね!」
申し訳なさそうな表情から一転してのドヤ顔。
遊神といえば世界を放浪している神……。世界にダンジョンを作った神様のはずだ。その性格は軽く、楽しいことが大好きだったはず。
でも、失礼なこと考えてたの全部バレてるとかないよね?
読心術みたいな……。
全力で一発ギャグとかしたら許してくれるかな?いや、今の俺の状態がすでにギャグか……。
今日はなんて日なんだ!
嘆いている俺を尻目にその女の子……ミルティアはのんびりと語りだした。
「実は神界でこういことがあってね……」
* * * * * *
とある日の神の世界……。
ここは人の世とは異なる次元のはざま。神々のいる場所である。
そんな場所の一角で戯神はのんびり瞑想していた。彼女の周りにはたくさんの浮いている石。
この石は駒であり戯神はこれを使って歴史を揺るがす。
ふと石が落ちる。
「あっ……」
それにあたって尻もちをつく戯神。
「遊神……また何か思いついたのでしょうか?」
なにか"おしり"に違和感が……。
くすぐったいように思います……。
しかし自身の状態にあまり興味のない戯神は再び瞑想に戻る。
それによって、1人の青年が苦しむことになるとは夢にも思わずに……。
* * * * * *
「……というような事があったんだ。そう、キミの体調が悪いのは戯神のせいなんだ」
「ウソだろ……?」
いきなり頭に浮かんだ光景は目の前の神様の力なのか?
聞いても全く理解できないんだが……。
次元を超えて"おしり"に挟まれるってどういうこと???
っていうか、戯神様というのは
戯神様……もの凄い美人さんだったな……。
「本当だよ。神の世界はこことは違う次元にあるんだけど、偶然接近しちゃったみたい。接近すると向こうで起きたことがこっちに影響を与えたりするんだよね。だから調査に来たんだけど……ぷぅ~」
真面目に説明してくれてたかと思うと笑いやがるし忙しいやつだな。
そして、神の世界は神の世界でちゃんと安定して高みにあってほしいと思うのは俺だけだろうか……?
「まさか"おしり"に接近して挟まれたままっていうのは予想もしてなくてちょっと笑っちゃったけどね……ふふっ」
ちょっとどころじゃなく、笑い転げてたよな?
というか、何を接近させてんだよ!!!
戯神様……どうか"おしり"の状態くらい気にしてください(涙)。
次元を超えて影響を及ぼす"おしり"とかどんだけデカいん……。
うっ、なんか一瞬苦しくなったんですけどぉ。
あれ?そういえば……?
「なんか、遊神がどうとか聞こえたような気が……」
「なっ、なんのことかな~~~」
視線を逸らす遊神様の化身。
怪しい……。
ちなみに遊神様も2級神だったはずだ……。
属性を司る1級神、事象を司る2級神、上位神の支援をする3級神、力の弱い4級神、神と地上の生命との子供である5級神という区分けの中で、戯神も遊神も上位の神様だ。
なのになんで俺なんかに関わるんだよ。
「で?キミの名前は?」
いきなり話題を切り替える遊神様の化身。
わざとらしすぎるけど、なぜか抗えない。
「アナトだ」
これが神様の威厳というやつなのだろうか……
「……ぷぷぅ。アナトって名前が"おしり"に似合っててウケるね」
「てめぇ!!!!!!」
このへんてこ女神が!!!!!
そんな言葉を威厳を伴って聞きたくはなかった。
そしてパーティー追放以上に意味がわからない状況で頭が混乱してるところに畳みかけてくるとは、このやろう!!
「ぐっ」
しかし体が重い……。
「どうすれば助かるんだ?」
本格的にやばい気がする。くらくらする。
「アナト、キミを救うには戯神に会うしかないね」
「はぁ?」
どういうことだよ。そもそも戯神様なんてどこにいるんだよ。違う次元とか言ってなかったか?
「神界へ行って戯神にあって、"おしり"から外してってお願いするんだ」
「なっ……!?」
無理だろう。神様にそんなことを言うのか?
俺が?
そもそも次元を超えて影響してることの意味が理解できないんだが……。
「そのままじゃ普通の生活はできないと思うんだけども」
体はどんどん重くなっていく。
これを回復させる方法が戯神様に会いに行くことしかないんだったら行くしかないとは思う。
ただ、そうは言っても俺のこの街での生活を捨てていくのか?
パーティーは……追放されたな。
恋人?いね~よ!(涙)
……これ、別に旅立っても問題なくないか?
へんてこだけど可愛いことは可愛い遊神様の化身と一緒の旅で、美しい戯神様のところに行くのなんて、今よりよっぽど楽しいような気がする……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます