第3話 女神と一緒に旅に出るぞ!

side ?????


「よし、遊神はうまく目標に接触したな」

 アナトたちのいる場所とは異なる次元でなにかをしている神様たちがいます……。

 

『……zzz』

「おいっ!寝るんじゃない!」

『ん?……』

 その姿は良く見えないですが、ここには2柱の神様がいるようです……。

 

「この私が20年以上も前から準備していた企画なんだから、しっかりと見てもらわないと」

『20年?』

「そうだとも」

『20日じゃなかったのか?もっと前から?』

 なにやら仕事したぜって感じの神様のテンションにもう1柱の神様があまりついていっていませんが、これはいつものことです。

 

「企画にちょうどいい人間を用意したのだ」

『ただ単に遊神と戯神をあやつって不調に陥った人間を旅させるのを楽しむ企画じゃなかったのか?』

「そうだ。だが、なんの変哲もない人間を出してもつまらんだろう」

 2柱の神様たちは一緒になにか企んでいるようですが、片方の神様がより深いところでなにかを企んで行動していたようです。

 これもいつものことですね。

 

『細工をしていたのだな?』

「その通りだ。あえて見つけ出したメインアクターの能力を制限しておいた。もちろんそんなことには触れないがな……くっくっく。これで面白い企画になるぞ」

 この悪い神様こそがアナトさんの無数のスキルの大半を使えなくしていた悪の元凶だったのです。

 アナトさんがこれまで苦労してきた原因ですね。悪すぎます。

 

『見つけ出した男は大量のスキルを持つ男だったか……』

「その通りだが、それも私が……いや、なんでもない。とにかくこの企画にぴったりな男だ!」

 この悪い神様は何をしたのでしょうか?能力を制限しただけ?

 わかりませんが、どうぞこの物語をお楽しみください。

 

 

『果たしてそう、うまくいくのだろうか?あの男、案外、頑張ってくれそうだが』

 

 頑張れアナトさん!負けるなアナトさん!

 ん?いえ、すみません、つい。


 頑張ってもらわないと、私の……いえ、なんでもありません。

 私のことは気にしないでください。

 普段はあまり明確な意識を持っておりませんし、どうぞ忘れてください。

 

 


side アナト


「戯神様に会いに行って、助けてくれって言うしかないわけだな?」

「そうだね。それができれば間違いなく元に戻してくれると思うよ」

 遊神は笑いを押さえて俺と向き合ってくれている。

 どう考えてもアホな状況なのに神様の世界に人間の俺が行くなんていうそんな壮大な冒険をするのだろうか……。

 

 でも、行くしかないか。

 神様が何を考えているかなんて俺にはわからない。

 そんな中で不調を治すのにそれが必要と言われたら他に手段がない。

 

 神様のところにまでどうやって行くのかな?とは思うが、他でもない遊神様がついているなら大丈夫な気もしてくる。


「治しに行こう、アナト。そして見返そう」

 遊神がなにやら拳を握りながら俺を焚きつけてくる。

 このヘンテコな神様は慰めてくれる。気力もくれるようだ。ヘンテコとか言ってすまんな。


「こんなに可愛い神様と一緒なんだ。何か起きるかも」

 腰に手を当てガキっぽく言う遊神様の化身。

 すぐにこんな調子でふざけたことを言うところが、『性格は軽く、楽しいことが大好き』という伝承にあるとおりだ。

 

「起きてどうするんだよ」

 バカじゃねぇのか?神様と何かあったら神敵確定で神殿に殺されそうだ……。


「あはははは。キミ面白いね。普通相手が神様と分かったらもっと丁寧というか、固い応対をする人ばっかりだよ?」

 また俺の方を楽しそうな表情で見つめてくる。


「すまんな。でも現在進行形でその神様の"おしり"に挟まれて、しかも別の神様が散々笑ってる間抜けな姿を見せられたからなんか威厳を感じたりしなくなった」

「あはははは。図太いね。でもいいじゃないか。楽しい旅ができそうじゃない?」

 くるくる回る遊神の化身。

 もう様はいいよな。楽しく旅することしか考えてなさそうだ。


 

 神様と友達になったとか1週間前の俺に言ったら気が狂ったのかと思われるだろうな……。

 でも、遊神の言う通り、楽しそうにも思う。

 これは洗脳とかじゃないよな?


 


「わかった。行こう」

「えっ?ほんとに?」

 俺はミルティアの言葉に決意を固めた。

 なんで驚いてるんだよ。


 

「よし、アナト。キミのその決意を讃えて、今の不調はボクが抑えてあげるよ。これを持って!」

「えっ?」

 そう言うと遊神は俺に短剣を渡し、オレンジ色の光を俺に向けて放った。

 

 ……『これでキミは"ボクの使徒"だ!以後、ボクを楽しませるように!』とか言わないよな?

 


「楽になっただろう?その短剣は持っておいてね」

 良い笑顔で短剣を指さしてくる。

 

「あぁ、ありがとう」

 いきなり体が軽くなった。さっきまで感じていた締め付けが嘘のようになくなった。

 遥か遠くの方で「あっ」とかいうなんか艶っぽい声が聞こえたような気がしたけど……。


「ずっとこのまま楽なままでいれないの?」

 まさか今まで遊ばれていただけとか……?

 

「ダメに決まってるだろ!」

「えぇ……」

 遊神はものすごく疲れた表情になった。

 ダメらしい。

 

「ボクの力をずっと使い続けるのはムリだよ」

 両手を広げてまるで『はぁ、わかってないなこいつ』とか言いそうな表情をしてる。

 そんなに力を使うものなのだろうか……?


「でも、旅立ちを決意したキミが困ったら支援するくらいはするよん。まかせてね!」

「わかった……。よろしくな」

 これ以上神の力に頼るのはダメということなのだろうか。釈然としないけど。

 でも、自分で行くと言ったからには頑張ろう。



「さぁ、旅立ちを決意した魔法剣士アナト!彼が向かう先には何が待っているのか?こうご期待!!!!!!!」

「……」

 急にどうしたんだ?


「気分を盛り上げていこうかと思ってね(笑)」

 なるほど。へんてこな行動の一種かと……。


「いてっ!?」

 脛を蹴られた。え?まさか心の中を読まれてる……?

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