第15話 呪われた種族


(Side: アル)


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………


 近くで、地面が揺れる音がした。


(なんだ……?)


 俺は気になって、テントから出てみると、人影が見えた。

遠くに兵士らしき人物が十人ほど、兵士たちの前で光っているのは……人、か?


(倒れている?)


 金、に見えるが……。


「……‼️」


 ハッと今起こっていることに気がついて、走り出す。


 倒れているのは、おそらくオスカーだ。

あの兵士たちが、オスカーに何かをした? ……もしそうなら、助けなければ。


「?」


 兵士たちに、歩いて近づいてくる人物がいた。

あれは……?


 その人物はオスカーの前へ行き、ひざまずく。

そして、夜空のような瞳が見えた。


(ルナ!? なんであんなところに!?)


「ルナーっ! …………――ルナっ‼️‼️」


 俺が叫ぶと、ルナがバッとこっちを向いた。


「……っ!」


(ルナの、瞳が……!)


 また、ルナの瞳の色が変わっている。何なんだよ、あれ……。

次の瞬間、ルナがドサッと倒れこんだ。


「ルナ!」


 俺は、全速力で走ったが……だめだ、この距離じゃ間に合わない。

ルナが立ち上がろうとしているが、また倒れこむ。


(ルナ‼️)


 兵士の一人が、ルナに剣を向けた。


(やめろ……やめろ‼‼️)


 兵士の一人が、剣を振り下ろす。

だが、ルナの首元で、その剣を止めた。


 少し話し合って、ルナを突き飛ばす。


「あいつ――っ!」


 怒りが腹のそこから湧き上がった、その時。


「「「「大地よ! ――」」」」


 大勢で、呪文を唱えた声がした。

次の瞬間。砂漠の砂が舞い上がり、大きな竜巻が発生した。


「なんだ、あれ……」


 バッと声がした方を向くと、見慣れた顔がいた。


(コルン、レオ、レイナ!)


 思わず笑みがこぼれる。


(サンキュ……)


 心のなかで礼を言って、すぐにルナ達の近くに行く。

兵士たちは動揺して、その場で立ち尽くしている。


「……おいっ!」


 俺は兵士たちの前へ行き、いつでも剣を出せるように鞘を握った。


「俺達の仲間に何をした」


「……仲間? この娘のことか」


 兵士の一人が、ちらっとルナの方を見る。


(ルナとオスカーは……気絶、してるだけみたいだな)


 俺は一度安堵あんどのため息をついて、キッと兵士たちを睨む。


「そっちの金色の髪の毛のやつもだ。もう一度聞く、俺達の仲間に何をした……!」


「私たちは、クリストファー様を連れ戻すためにやってきた……だが、ついでにを見つけただけだ」


「珍しいもの……?」


 嫌な、予感がした。


「この娘のことだ。ただの可能性の一つだが、呪われた種族の生き残りかもしれない。……クリストファー様と共に、保護させてもらおう」


 兵士が、ルナへ手を伸ばした瞬間――。


キンッ!


 俺は剣を抜き、手を伸ばした兵士に斬り掛かった。

だが、他の兵士がそれを止める。


ドゴッ


「~~っ!」


(まずい、油断した……っ)


 斬りかかる剣を止めた兵士が、俺の腹を殴った。

ドサッと音を立てて、うずくまる。


 くそっ! 早くルナとオスカーを助けて……!


「殺しますか?」


「いや、いいだろう。クリストファー様とこの娘さえ保護できればいい」


「わかりました」


 俺は途切れそうな意識の中で、必死に立ち上がろうと力を入れる。

だが、視界は段々と暗くなっていく。


(早く……ルナと、オス、カーが……!)


 その時。

プツリ、と俺の意識は途切れた。



   *  *


(Side: ルナ)


「ルナさ…………ルナさんっ」


「う、ん……」


 聞き覚えのある声に、ルナはうっすらと目を開ける。


「……オスカー?」


 起き上がって辺りを確認すると、ルナは貴族が使うような広い部屋のソファーで、寝ていたことが分かった。

 目を覚ましたルナに、オスカーはほっと息を吐く。


「よかったです。どこか怪我はしてませんか?」


「うん、大丈夫だけど――」


コンコン


 ビクッとオスカーの肩が揺れた。

ルナを後ろにし、守るように前へ出る。


ガチャッ


 開いたドアからは……ルナたちを連れ去ったのとは別の、兵士がたっていた。


「どういうつもりですか」


 オスカーの問いかけに答えず、どんどん距離を縮めてくる兵士。

そして、オスカーの前で拳を振り上げた瞬間ーー!


「だめっ!!」


 ルナが、前に出た。


「ルナさんっ!」


 「前に出てはだめです!」とオスカーが言いきる前に、兵士が狙ったかのようにルナを捕まえた。


「っ」


「……別室へ連れていくだけだ。なにもしない」


 ぐいっとルナの腕を乱暴に引き、別室へと連れて行かれてしまった。


「ルナさん!!」


 オスカーの声が、段々小さくなっていく。

ルナは兵士とともに廊下へ出て、三つ下の階へ行ったところの奥の部屋まで歩いた。


コンッ


「例の少女を連れてきました」


「入っていい」


 ガチャッとドアが開き、乱暴に中に入れられる。

中にいたのは――。


「……あの、時の」


(私を殺そうとした兵士を、止めた人だ……)


 あの時は薄暗く、顔なんて見えるはずがない。

だが、銀色の瞳をした彼だけが、印象に残っていた。


「そこに座れ。……お前は見張りを」


「はい」


 ルナをソファーに座るよう言い、ルナをここまで連れてきた兵士を外へと出した。


「単刀直入に聞く。お前は”呪われた種族の生き残り”なのか」


「呪われた、種族……」


 聞いたことは、何度かあった。


『……、か――』

をしてる。人の間では……呪い、というのだったかしら?』


 ゲイルタウンと、フィレーナ港で言われたことを思い出す。


「何度か、似たような感じに言われたことは……あります。

 でも、呪われた種族についても、生き残りなのかも、わかりません」


 言葉を選びながら話すルナ。


「ほう……呪われた種族について知らないのか。

 …………知りたいか?」


「――はい」


 きっぱりと、相手の目を見て即答する。

すると彼は「ハッ」と笑い声を漏らした。


「まあいいだろう。その代わり、こちらの質問にも答えてもらう」


「わかり、ました」


 ルナがそう返事をすると、彼はゆっくりと話しだした。




呪われた種族――。

そう呼ばれている人間たちは皆、魔力が少なく、非力な者ばかりだった。

魔力と言えば、人間の生命力であり力の源だ。魔力が少なければ魔法もできない、力もない、体調が不安定になるときだってある。


この部分だけを見れば、最も地位の低い種族と言えるだろう。


……しかし呪われた種族は、最大限に溜めた魔力を一瞬に爆発させることができた。


これは魔法とよべない。……理由は簡単だ。

魔法と比べ物にならないほど強力だから。


この特別な力の原動力は魔力……つまり術者の生命力。

簡単にできることではないし、使い続ければ術者の命に関わる。特別な力を使わずとも、呪われた種族はもともと魔力が少ない。一気に魔力を使うため、皆短命で死んでしまうのだ。



最弱とも言え、最強とも言えるこの種族。



他の種族らは彼らに哀れみの目を向け、”呪われた種族”と呼んだ――。





「……っ」


 ルナは息を呑んだ。

全て、今までの不自然な出来事に一致したからだ。


「もう一度問おう。お前は呪われた種族の生き残りなのか」


 低い、圧のある声。


「答えろ」


 命令口調の彼。

ルナは、キュッと唇を結んだ。


 自分を希少な存在だと知った今、それを認めたらどうなるかくらい分かる。


 急に拐われ、オスカーもいないこの空間は息苦しく、冷たい。

震えている手に気づかれないように、ルナはキッと彼を睨んだ。


「沈黙、か。ならば……」


 彼は気持ち悪い笑みを浮かべながら、ささやいた。



 ……従わなければ、お前を助けようとした仲間を全員殺す。



 ドクンッと、心臓が嫌な音をたてた。

ルナは、悔しそうに顔を歪めながら、口を開いた。


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☆ここまで読んでくださってありがとうございます!♡や、やさしい感想等お聞かせ願えるとうれしいです!SANA✿☆

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