特別編 思い出の温もり Side: ルナ

 私がレイナを見つけて、どう声をかけようか迷っていた時。


『大丈夫』


 ふと、聞いていて安心するような、力強い声を思い出した。



 ~ 五年前 ~



 私がまだ、十歳になったばかりの頃。

薬草を摘みに行こうと森へ入ったときのことだ。


「う~ん、キレイに晴れないなぁ」


 私は曇った空を見て、そう呟く。


(なるべくはやく帰らないと、アルやオスカーに心ぱいされちゃう)


 幼い私はそう思って、森の奥へと走った。

……だけど、薬草を摘んで帰り道を歩いていたとき。


ピカッ!


「きゃあっ!」


 空が真っ白に光った。


(フラッシュ……雷! はやく帰らないと!)


 そう思って、私は走りだした。

だけど、天気は悪くなっていくばかり。


 大雨も降ってきて、雷が近くで鳴っていて……本当に怖かった。


「はぁっ、はぁっ、はぁ……」


 足も疲れてきて、一旦休もうと周りより背の高い木の下へ行く。


(こわい、さむい……)


 雨に濡れて、ガタガタと自分の体が震えだした。

その瞬間。


「ル――……! ル……ナ! ルナ‼️」


 人影が、見えた。


「……アル?」


 顔はよく見えない。

だけど、あれは間違いなくアルだ。


「はな……て! 雷……落ちて――る!」


「アル!」


(アルだ! 来てくれた!)


 何を叫んでいるかはわからないけど、私は嬉しくなって駆け出した。


……ピカッ!


 空が、白く――。


ドーンッ‼️


「きゃあぁっ!」


 すぐ近くで、大きな落雷の音がした。

私は驚いて、前に思いっきりころんだ。


「ルナっ‼️」


 アルが走ってきて、すぐに私の近くに来た。


「あ、アル……?」


「ああ、アルだ。ケガは――」


 私は、アルの服のすそをもって、たずねた。


「ルナっ、平気か? どこか痛いところはあるか?」


 アルは私を心配してるけど、アルもすでにずぶ濡れだった。


(よかったぁ……アルが、きてくれた)


 アルの顔を見てホッとたら、急にボロボロと、目から涙がこぼれた。


「る、ルナっ?」


「う、うう……うわあぁぁぁんっ‼️‼️」


(こわかったよぉっ、さむかったよぉ……)


 大きな声をあげて、泣いた。

私は昔も今も、あんまり泣かない。でも、本当に怖かったんだ。


「…………大丈夫。俺がいるから、何も怖くないだろ?」


 アルが私をぎゅっと抱きしめる

アルの体温が伝わってきて、安心して、また泣いた。


「大丈夫」


 ……この、アルの力強い声が、今でも忘れられない思い出になった。


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