第6話 神に指名されました
VIPルームの中に入ると、カラオケで盛り上がっている部隊もその奥にいた例の4人組も一瞬視線をこちらに送る。
(え、何?めっちゃ視線が痛いんですけど…)
神は気にせず私の手首を引っ張り、ズカズカと4人組に近づいていく。
(いやいや、またさっきの4人組のところに座らされるの?!)
「わ、私さっきのところじゃなくて…カラオケ歌いたいなあ…ははは」
神に懇願するように伝え、目で訴える。
ハアー
立ち止まった神は振り返り私を見て、また溜息をついた。飽きれた眼差しで私を見る神。
(え、な、なんでしょうか?なんかまた変なこと言いました?)
神は再び歩み出し、4人組の元へは行かず、その横にある端のテーブルに座るよう無言で促される。
その間始終4人組の視線を感じながら、私は奥に席を着いた。
(なんか、いたたまれない気持ちなんですが…なんでしょうこの居づらい感じは…その他の人からの視線を感じるのは気のせいでしょうか…)
そんな私をよそに神は私にシャンパンを入れるか聞いてくる。
「え、いいんですか!ありがとうございます!」
(とは、言ったもののシャンパンとか分かんない…そもそも私いつもノンアルだしなあ…)
とりあえずボーイを呼びメニュー表を貰う。
メニュー表を見ながら神は「サロンで」とボーイに伝えた。
それを聞いたボーイは驚きの顔と共に満面の笑みで「ありがとうございます!神崎様からサロン入りました!」と大声で叫ぶボーイ。
すると、その場にいた女の子もざわつき「ありがとうございます!」と返した。
そして、私も同様驚かずにはいられなかった。
なぜなら、サロンというシャンパンはこのお店でめったに出ることのない価格40万円で提供されているこの店で1番高いシャンパンだからだ。
「あ、ありがとうございます」
私の動揺に神はそんな大袈裟にするなという顔で「どういたしまして」と言った。
(この人大丈夫だろうか…ここがいくら高級ラウンジとはいえ、初めて会った女に指名をしてこの店1番のシャンパンまで入れるなんて、相当金使い荒いのでは…)
「あの!紫乃ちゃん!」
名前を呼ばれ、声のする方へ向くと、4人組がこちらを見据えて背筋をピンと伸ばし両手を膝に置いて座っていた。
「は。はい」
(何?怖いんですけど)
「さっきは…「「「すいませんでしたッ!!」」」」
4人同時に私に謝罪してきた。
「いや全然!もう過ぎたことだし、お酒の席だし私気にしてませんから!」
その私の返しに「気にしろ」とボソッと宏人が呟いた。
絢菜には聞こえなかったが4人組はしっかりとその怒りの声を察知し、4人組は「本当にすいませんでした」と再び謝った。
謝罪の下りが終わると4人組は自然に4人で話し始め、女の子もカラオケ部隊から4人組のもとへ付き始めそこはそこで盛り上がり始めた。
私は他に大勢いるにも関わらず神と2人きりのようになってしまった。
ちょうどいいタイミングで、頼んだシャンパンも届き、ある程度全員にシャンパンが行きわたると、
「もう仕事しなくていいから」と隣に座るように指示された。
「いや、これが仕事なので」と思いつつも言われるがまま神の隣を座った。
(何を話せばいいのでしょうか。生まれてこの方ここまでのイケメンと接したことがないので、とっても緊張します…)
「今何歳?」
この静寂を破ったのは神のほうだった。
「今年27になります。逆に何歳ですか?」
(私よりは年上だよね?大人って感じだし…)
「32だよ。名前の紫乃って本名じゃないだろ?」
「本名じゃないです!本名は絢菜です!」
そう言うと、神はふっと笑った。
「え、なんですか?!(さっきから、溜息とか笑ったりとかされてる気がするんですけどおお!)私そんな変なことばっか言ってますか?汗」
「いや、可愛いなと思って」
(か、かかか可愛い?!はいイケメンから可愛いいただきました~~)
「俺だからいいけど、本名はそう簡単に教えないほうがいい。変なヤツも多いから自分から名乗り出ないほうが身のためだ」
(そ、そういうことね…私アホと思われてるじゃん)
「そ、そうですよね。気を付けます…名前聞いてもいいですか?」
「俺は神崎宏人」
「じゃあ宏人さんって呼びますね!」
宏人さんは、コクンと首を縦に振り名前呼びの許可をした。
(神崎…宏人…なんかどっかで最近聞いたことがある気がするなあ。にしても名前に「神」が入ってるなんて、やっぱり神だ)
「どうしてこの仕事しようと思ったんだ?」
そう聞かれ、なんて答えたらいいのか悩む。
(「出会いがあると占いで言われたからです」なんて言ったらそれこそアホだと思われる。ここは無難に…)
「社会経験ってやつですかね」
「そうなんだ。昼職はOLとかか?」
「化粧品会社です!」
「へえ、だから綺麗なんだな。」
(綺麗とか、可愛いとか平気で言えるってことはこの人遊び人?)
「化粧品って美容部員とか?」
「いえ!化粧品の会社を経営してる側です」
そう言うと宏人さんは少し驚いた顔で「へえ!すごいね」と一言。
「宏人さんは、何のお仕事されてるんですか?」
「俺も一緒」
(一緒?!男性でも化粧品興味ある人多いしね!)
「営業とかですか?」
「そっちじゃなくて、会社経営してるのが一緒ってこと」
「あ!なるほど!すごいですね!業種はどんな感じなんですか?」
「うーんメインは不動産で、他にも飲食とかエンタメとか幅広くって感じだな」
「めっちゃすごいじゃないですか!」
「そうか?」
(そうですよ!イケメンに仕事ができるってもう引くて数多じゃないですか!あなたのほうがよっぽどすごいですよ!)
「紫乃ちゃんは何歳で起業したんだ?」
「25です!2年目なのでまだまだ成長段階って感じですね」
「2年目ってまだ大変な時期じゃないのか?大丈夫か?ここで働いてて」
「週1しか働いてないので大丈夫ですよ!」
(私も最初両立心配していましたよ。占い師の助言がなければ今ここにはいませんでした笑)
「ここはいつまでやろうと思ってる?」
(出会いがあったら…なんて言えないです兄さん…ここも無難に)
「辞めたいと思ったらですかね…」
「どうなったら辞めたいと思うんだ?」
(めっちゃ聞いてくるじゃん。そんな私が辞めることに興味あります?)
「うーん…心の余裕(恋人)と金銭的余裕(事業の拡大)ができたときですかね?」
「なるほどねえ」と宏人さんは何か耽りながら答えた。
そのあとは事業においての心構えや経済のことやお互いの事業での話をして、気づいたらそろそろ解散という流れとなっていた。
「ライン教えて」
「もちろんです!」
最後に連絡先を交換した。
「俺これから紫乃ちゃん指名するからよろしく」
そう言って彼は笑顔で頭をポンポンした。
(その顔で笑顔はずるい)
「はい!よろしくお願いします」
私もそう答えた。
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