出会い

第3話 助けてください

「ーはい、ということで、今日のゲストは時代を先行く企業をテーマに、株式会社KANZAKIホールディングス取締役代表の神崎ー」


 私は数百人が集まるであろう会場の中を早足で歩く。


「えー皆様、本日は雨の中お越しいただきー」


 本当は、こんなところまで来たくなかった。彼にも一生会いたくなんてなかった。


「ーそれでは、皆様最後に盛大な拍手でー」


 できれば、彼だけには頼りたくなんかなかった。だけど、、、


 パチパチパチ

 拍手喝采で鳴り響く会場。


 血だらけの手に、雨でびちょびちょに濡れた全身。こんな場に相応しいとか相応しくないとかそんなこと考えてる場合はない。


「あの!」


 会場に集まるもの全員の視線を感じる。それでも私は構わず、そこにいる彼に向かって続ける。


「あの…ッ…」


 一度流れ始めると次から次へと溢れ流れ出る涙が邪魔してうまく伝えられない。それでも私は彼に言わないといけない。


「ったすっけて…ッひったすけて…ください…ッ…お願いッです!っどうかッ助けてください」


 静まりかえる会場。私の声だけが響き渡っていった。

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