第20話「その瞳には」
美緒ちゃんと香先輩が鉢合わせてしまって私は内心あたふたしてしまっていた。
2人が知り合いで因縁深い関係なんて思ってもみなかったし。
「あんたは昔からそうやって突っかかってきて、人を傷つけて。どうせ今もそうしてるんでしょ?サークルのバーベキューの時だって陸に何かしたんでしょ?」
「ま、あの男も何も覚えていないんだかわからないけど私のこと知らないみたいだし。
少しずつあの男には復讐するだけ。」
「そんなのあんたの勝手な思い上がりよ!
ぶっちゃけあんたの親が関わってただけで陸とあんたはなんも関係ないはずでしょ?
それに透を狙ってんだったらさっさと口説けばいいだけでしょ、1人じゃ何もできないビビりが偉そうに語ってんじゃねぇよ。」
「それじゃ何も満たされない。
私の中の怒りも憎しみも、だから最大限あの男には不幸になってもらわないと。
あの時言ったでしょ?私の家族を崩壊させた間宮家の人間に人並みの幸せを得る資格なんてないって。」
なんて性格の悪い人なんだと思ったのと同時に悲しくなった。こんな生き方しかできなかったのかなと言いたくなるくらいに。
そしてついに美緒ちゃんがブチギレた。
「いいかげんにしろ!
人の幸せを他人が勝手に決めるな!
あんたが過去に辛い思いをしたのはわかる、けどそれを理由に周りを巻き込んでいい理由にはならないだろ!
それに陸に手を出すんなら私や透が絶対許さない!陸は私が絶対守る!!」
美緒ちゃんはやっぱり強い人だなと感じる。
すかさず香先輩も反論する。
「おいおいこんな静かなカフェで大声出すなよな。私は透くんを手に入れてあいつに復讐できればいいんだよ。
それにあんただってあの男に振られたんでしょ。正直可哀想って思うの。入学してすぐに公開告白されて、その後もしつこく付き纏われて、付き合ってからもそんなに良い思いなんてしなかったんじゃないの?
あなただって自分を振ったあの男を見返したいとか思わないの?」
美緒ちゃんを見ると強い眼差しで香先輩を見ていた。その瞳は潤っていて、強くそして若干の怯えが見えた気がした。
「確かに陸はアホだよ。
みんなの前で告白してすべって、そのくせ強がってしつこく付き纏ってきたよ。
最初はなんだこいつと思ったしみんなで彼のこと軽蔑してた。
でも、彼のことを知るたびに少しずつ惹かれていって彼の行動に助けてもらったこともあった。
私は自分が好きになったからあの文化祭の日に告白して付き合ったの!デートはそんなに華やかじゃなかったけど毎日が楽しかった!陸と付き合ったことに私は1ミリも後悔なんてしてない!
今は更に綺麗になったりまたみんなでワイワイと楽しみながら遊んだりして私をあの時振ったことを後悔させてまた振りかえさせてみせる!
私は、今でも陸が好きだから!!」
美緒ちゃんの本当の思いをやっと聞けた。
やっぱりまだ陸くんのことが好きなんだと...
正直胸が張り裂けそうなくらいな気分。
美緒ちゃんは途中から泣いていた。本気なんだ、本気でまだ好きでいるんだ。
「バカみたい、人を好きになって何が楽しいんだか。」
それは違う。私も先輩に文句が言いたくなった。
「たぶん先輩には一生わからないことですよ、美緒ちゃん移動しよ?」
美緒ちゃんもうなずき、私たちは場所を移動することにした。
ーーーーーー
別のカフェに移動した。
気持ちも聞けたし落ち込んでる様子だったからラテを奢った。するとたちまち元気になったからこれは演技なのかなと一瞬疑ってしまった。
「いやーごめんね未紗ちゃん変なとこ見せちゃって。私らしくないよねーw」
「ううん大丈夫だよ。
美緒ちゃんも怒ることあるんだなーって思っただけ。」
「だってウザくないあいつ!
死ねばいいとは言わないけど、地獄に落ちろとは思うわw」
「正直それ私も思った♪」
あんなことがあったけど今こうして楽しく会話ができるならよかっと思う。
そして美緒ちゃんは少し顔を赤くして恥ずかしがっていた。
「てか私のほんとの気持ち知っちゃったよね?そうなんだよ私まだ陸が好きなんだよー。」
ぐてーっとしながら言うからあの告白もほんとなのかなと態度からしてそう見えないw
まぁ怒るのもエネルギー使うしね。
「うん、美緒ちゃんの性格だとすぐに他の人に行ったりモテたりするんだろうなって思ってたから意外だった。」
「だよね。私本当は嫉妬深いし執着したりしちゃうから、陸のこと別れてからもずっと考えてた。
陸にもし別の彼女ができたらどうしようとか、まぁ陸は相変わらずだったけどw」
「確かに透くんがモテるからちょっと影が薄い脇役って感じが強いよね。」
「そうなの!けど透より個性強いし頑固で時々キチガイみたいなことするしw」
「美緒ちゃん家に泊まったって聞いた時はほんとにそう思ったよー」
「あははwあの時はごめんねーw
それで未紗ちゃん、確認するよ。」
顔がコロコロ変わるなー。
笑ってたと思ったらいきなり真剣な顔するし。
「未紗ちゃん、陸のこと好きでしょ?」
核心的なことを聞かれた。
やっぱり元カノって存在は正直ウザイ。
美緒ちゃんは陸くんと付き合ったことがあるから有利ではある。陸くんも満更じゃないのは確か。
でも、でも私はそれでも...
陸くんが好きだから。
「うん、好きだよ。」
それを聞いた美緒ちゃんは優しい目で私を見ていた。そして納得したよう頷き
「そっかー...
うん!それが聞けたから私は満足、じゃ正式にライバルになるね!
元カノの私に勝てると思ってる?w」
多分覚悟を聞きたいんだろうなと感じた。
だから私も。
「勝てるに決まってるでしょ♪」
「よし!楽しくなってきた!
これからも仲良くしよ、もっと未紗ちゃんとは仲良くなれる気がするわ。」
「うん!こっちこそよろしくね!」
最初は関われないような苦手な印象があったけど話してみないとその人の性格とかはわからない。それを実感した。
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