第17話 「梅雨に入り」

バーベキューが終わり、おれたちはまた日常に戻っていった。

あれなら香先輩とは一切話していないからどうなっているのか気になっている。



梅雨の時期になり、雨が続くジメジメとした季節になった。もうだいぶ湿度が高くて半袖でも充分に汗をかくような暑さだ。




大学に通いながらバイト三昧の日々を過ごしているおれはあまり最近は遊びに行けなかった。




ある日、偶然バイト先に美緒がやってきた。

あいつの大学の友達と来た。





「あれ、陸じゃん!

ここでバイトしてるの?」




「ん、美緒か。今日は大学の友達と一緒にいるんだ?」



「ねぇねぇ美緒、この人が美緒の彼氏?」



おい何勝手に変なこと広めてんだ。




「そそ、ここで働いてるとは聞いてなかったけど」


そりゃお前がしょっちゅう来るから黙ってんだろ。




高校時代はバイト先を教えたせいでしょっちゅう邪魔しに来たから今回は教えなかったのにこうもあっさりとバレてしまうなんてと考えていた。




「んで、今日はどのプランになさいますか?」



「フリータイムで!」



「現在ASOBUSOUNDしか空いてないですがそちらでよろしいでしょうか?」



「大丈夫でーす!」




「それでは5番のお部屋になります。

ごゆっくりお楽しみください。」



「はーいありがとうございまーすw」



「...なんだよ」



「いやー何もw

じゃみんな行こー!」



そうして美緒と友達は部屋へ向かっていった。調子狂うなあいつが来ると。




「んー陸さんのお友達だったんですかー?」



そう聞いて来たのは高校生の『如月侑芽』、バイトの後輩にあたる。




「あーそうだね。高校時代の同級生だよ。」




「それにしては随分と仲良さげな感じだったですけどね?w」



年下にからかわれるとなんかムカつくな。




「全然仲良くないからね?

調子良い女だからいつもからかったりしてくるんだよ。」




「そうなんですかーw

どうにもその女の人が気があるような感じもしますけどねー。」




結構話し方がのんびりした感じなのにどうも鋭いから侮れない。




「まぁいろいろとあったんだよ。

はい、早く3番片付けに行ってねー。」




「ちぇ、あとで必ず聞き出しますからね?w」




そう言って侑芽ちゃんは部屋の片付けに向かっていった。


はぁ、なんだか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。









       ーーーーーー


1時間くらいした時か、今度は透がやってきた。




「いらっしゃいませー。」



「お、陸じゃん!

みんな、陸がいるよー!」



「ほんとだ!陸くんやっほー!」



今日透は高校の時のやつらと一緒に来た。

たまに透はこのカラオケにちょこちょこと来たりしているからおれがバイトしてるのは知ってる。

ただ周りには言っていないからまたバレたかと頭を抱えそうになる。





「久しぶり陸くん!元気にしてたー?」



んー誰だったけなこの人。

あんま話したことないから覚えていない。



「まぁ元気だよ。

それで透、今日は?」



「今日はざっと3時間ぐらいかな。

もしあれなら延長する連絡入れるし!」




「あいよー。

そしたら3番の部屋で3時間で承りました。」




そう言ってデンモク版とマイクを渡した。



「陸もバイト終わったら部屋来いよ!」



「いや、終わるのまだ時間かかるよ。

あ、5番に美緒来てるから気をつけなw」




「げ、美緒も来てんのかよ!」



「え、美緒も来てんの?

ちょっと覗いてみようかな!」



どうぞご自由に。





透たちは3番の部屋に向かっていった。




出くわさないことを祈ろう。











      ーーーーーーー



それから数時間が経ってバイトが終わり、休憩室で少しゆっくりしていた。

侑芽ちゃんもバイトが終わったから今こうしていろいろと学校のことを聞いたりしていた。




「侑芽ちゃんこの間の中間テストとかはどうだったの?」



「どうもこうもないですよー。

学校が楽しすぎて対策0で挑みましたよー。」



「あーじゃ赤点かw

補習がんばw」



「学年1位でしたよーw」




こいつ自慢か!w




「あとは夏前の期末テストまで友達と遊びまくったりバイトしたりします!」



「普通に勉強してる人からすれば羨ましい限りだねそれは...」



ある意味ドン引きだよほんとに。




「先輩は高校の時はどんな感じだったんですかー?

やっぱりモブに徹してたり?w」




「うるせぇな、合ってるから何も言い返せないけど。」




「そんな顔ですもんねw」




「顔は関係ねぇだろ!」



ほんと最近のJKは怖いなほんとに。





「じゃお疲れね。」



「お疲れ様でしたー!

変な人に捕まらないようにーw」




どんな捨て台詞だよ全く...



そう思い休憩室を出て入り口に向かう。




入り口には美緒がいた。





「あ、陸バイト終わったの?

お疲れ様!」




「あぁ、ありがとな。

こんなとこで何してんの?」



「え、陸のこと待ってたw」



そうやっておれのことたぶらかしやがって...




「嘘つけ、雨降ってて傘忘れたから誰でもいいから傘貸してくれるやつ待ってたんだろ。

てか友達どうしたんだよ?」




「友達は用あったりバイトあったりで先に帰っちゃったんだよねー。


陸ー傘貸してー」




「一つしか持ってねぇんだよ。

忘れたお前が悪いんだろ?」




「ひどいなーこんな女の子を1人で雨に濡らせようとしてるなんて...

シクシクw」




「心にも思ってもねぇこと言っちゃって。

笑ってんじゃねぇかよw


雨に滴るいい女って言うだろ?w」




「紳士じゃないねほんとにw」



「ちっ分かったよ。

ほら、これ差して帰りな。」




「違うなーw

そんなこと求めてないんだよ私は。未紗ちゃんを惚れさせられないよ?w」



余計なお世話だわ。

はぁ、仕方ない。おれは傘を開いて美緒の上に差していく。相合傘ってやつ。




「うん、それでいいw

大義であるぞw」



「はは、ありがたき幸せ...」



なんだこの茶番は。




そうしておれたち2人は帰り道を歩いていく。

美緒はおれの袖につかまってる。あざとい女め、嫌いじゃない!w






その後ろで



「あれ、陸くんと美緒だ!

2人って別れたんじゃなかったっけ?」



「え!?

あ、あぁそうだね。あいつらは別れてるよ。

陸は今フリー...なはずだけど。」



「でも相合傘って、やっぱ2人とも満更じゃないよねーw」



「そうだよね、2人がまさか付き合うなんて当時思わなかったし。

美緒の気まぐれっていうか、陸くんが起こした奇跡っていうかw」



「まぁおれたちも帰ろうぜ、邪魔すんのはあれだし。」




透たちにどうやら見られてたみたいだ。

後日、なぜかいたメンバーとおれ、美緒のグループチャットが作られて問い詰められたのは恥ずかしかった。

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