第16話 「不安」
透はまだ香先輩に付きまとわれている。
初めのうちは笑顔で対応していたあいつも今はもうただの愛想笑いになっている。
「ねぇ、透くんは最近何かハマってること...」
「すみません先輩、一旦席を外しますね。」
透はおれの元にやってきて
「あとは任せた...」
おいー!!
おれにあの女を押し付けんじゃねぇよ!
「ねぇ、陸くん。
協力するって約束したよね?
なんであんたがわちゃわちゃ楽しんでのよ!?
透くんの情報が何一つ合ってなかったし!
騙したの!?」
全くないいがかりだ。
「おれが知ってる情報はちゃんと教えてますよ、単純に情報が古かったりはしますけど。
香先輩はいろんな手を使って透を落とそうとしてますけど多分無駄になるんじゃないですか?」
そう言うと先輩は周りを見渡して涙を流した。タイミングを見計らったのか。
「ねぇ、何泣かしてんの?」
香先輩の同級生が何人かおれに寄ってきた。
そして香先輩は携帯の画面を見せて来た。
『私のこと怒らせるからこうなったんだよ』
おれの不安が的中してしまった。
あーなんか一気にテンションが低くなっていく。
いろいろとめんどくさいなこのサークル。
ーーーーーーー
一方透と合流していた未紗さんたち。
「ねぇ、なんだか陸くんの周りに数人囲ってるみたいだけどなにかあったのかな?」
「あぁ、香先輩か...
あの人絶対性格悪いって思ってたから大半スルーしちゃってたんだよな。
なんか様子おかしいし。」
「確かに!なら助けに行かないと!
ほら未紗、食べてばっかいないで行くよ!」
「えーあとこれも食べたいよー♪」
「何言ってんの!あんたの陸くんがピンチになってんだから」
「陸くんなら大丈夫だよー♪
華麗なスルースキルでなんとかするって。」
「まぁとりあえず透くん行こ!」
ーーーーーーー
とりあえず周りがおれへの文句でとにかくうるさい。
あらかた無視をし続けていく。
それが気に入らなかったのか、香先輩が耳打ちをしてくる。
「私、あんたの秘密知ってるんだよ?
確かあんたのお父さんは...」
父親のことが聞こえた瞬間に振り払った。
そして問い詰めていく。
「なんであんたがそれを知ってんだよ。」
そう聞くと続けて耳打ちをしてくる。
「私のパパとあなたのお父さんは同僚だったの、あなたのお父さんがあの時なんであんなことになったのかも全部知ってる...
多分それ知ってるのって透くんぐらいだよね?
バラされたくなかったら私の言う通りに透くんと上手く接点作りなさい。」
「なんでだよ、おれの親父が一体何したっていうんだよ?」
「それは..」
理由を聞こうとしたら向こうから透と朱音さんがやってきた。
香先輩は即座に離れていった。
「よっ陸、楽しんでっか?」
「なにがよっだよ、勝手に人に押し付けてんだよ。」
「あ、透くん!戻ってきたんだねー!」
ほんとこの女...
「てかみんなどうして陸の周りに集まってる感じですかー?」
「聞いてよ透くん、陸くん私に対して酷いことばっか言ってきたんだよー?」
おい、一体なにをバラすつもりだ。
「陸くんに透くんとどうしたら仲良くなれるかなって相談したら何やっても無駄って言ってきたんだよー」
あ、それは言いました。
とりあえずあの件についてじゃなきゃ別にもういいや。
「あーそうなんですね。
全く陸はデリカシーってのがないからなーw」
笑いながら透はおれをイジリ、そしてこう言った。
「おれ香先輩とは仲良くできないですよーw」
「え、どうして...?」
「だって陸のこと寄ってたかっていじめてんじゃないですか?
普通親友にそんなことされて黙ってられるわけなくないっすか?
もう20超えてる成人がいつまでもガキみてぇなくだらねぇいじめなんてして何が楽しいんですか?
マジで冗談は顔だけにしろ。
次何かしたらあんたもあんたの周りの取り巻きも全員潰す。
...ね、朱音ちゃん?w」
うわ、透が久しぶりにブチギレてる...
え、なんで?
「え、そこ私に振る?w
でもそうだね...
香先輩、確かに陸くんがなんかデリカシーないこと言ったのは代わりに謝ります。
確かに陸くんはデリカシーないしスケベな人です。
でも故意に人を傷つけるようなことはしません。
それが気に入らないからって取り巻きを呼ぶような行為をしてみっともないですよ?
言っときますが透くんと同じで次何かしら陸くんに絡んできたのなら、潰しますから。」
え、朱音さんもブチギレてます...?
「はぁ、クソつまんな...
もういいわよ、行くよみんな。」
香先輩は取り巻きと一緒に帰り支度をして帰って行った。
なんか久しぶりにスカッとした気分。
2人にはほんと感謝しかない。
ちょっと誤解してるようだけど。
ほっとして少し冷めて硬くなった肉を頬張ろうとすると、シャツの襟を掴まれて引きずられてしまった。
「えちょっ...
2人とも引き摺らないで...w」
「は?
何笑ってんだお前、お前はこっちで説教だ。」
「そうね、陸くんにはお説教が必要だね」
「こんなときだけ息ぴったりじゃないですかお二人ともーw
大丈夫だから、だから離して...」
別の意味での不安が的中してしまった。
ちなみに未紗さんはそれを笑いながら見て肉を食べていたと言う。
ーーーーーーー
「いやー陸くんお説教のときの顔、思い出しただけで...w」
未紗さん、さすがに笑いすぎだろと思いながらバーベキューの片付けをしていた。
「まさかまた朱音さんにビンタされるとは思わなかったよ、まだヒリヒリするんだけど」
「あんたが頼らないのが悪いのよ」
みんな勝手なやつだな。
「まぁ香先輩もいなくなってまた楽しめたならそれでいいじゃねぇか。
未紗ちゃんは説教も目もくれずにひたすら食べてたけどねw」
「だってお肉冷めちゃうもん♪」
説教されて結局肉食えなかったけど、2人が心配をしてくれたのはおれにとっては嬉しかった。
あそこで助けてくれなかったらいろいろと面倒なことに巻き込まれてただろうから。
「はーいみんなお疲れ様ー。
楽しんでくれたなら何よりよー、お帰りはあちらから。2次会はおれのとこ来てねー。」
翼先輩の無気力な号令でバーベキューは締められた。
なんだかんだでバーベキュー楽しめたから参加してよかったなと思えた。
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