第4話 「お出かけ」

あの日はあれから一緒にタバコを吸いながら他愛もない話をし、連絡先を交換して解散になった。


ずいぶんと呆気なかったけどさすがに時間も遅くなってたこともあったからやり取りなどしていきながら未紗さんのことを知ろうと思った。


ちなみに名前でこれから呼んでと言ってきたからそう呼ぶことにする。初対面なのにやっぱり距離が近い。そういう人種の人なのか。




       ーーーーーーー


あれからしばらくは学校に出席をし、バイトをし、の何もない日々を過ごしていた。

やっぱりあの新歓は幻だったんだ。



.....


と思っていたけど未紗さんから連絡来たりしてやりとりしてるから夢じゃなかったんだなって実感する。





そんな中でいくつか未紗さんに関して知ったこともある。

例えば...


・未紗さんには兄と弟がいる

・未紗さんは高校時代は吹奏楽部に入っていた

・勉強はそれなり

・バイトは某カフェでやっている

・倉科さんとは小学校から一緒






と少しだけど情報を得ることができた。

そういえば透も確か未紗さんと連絡先交換したって言っていた。相変わらず早い。

さすがにフォロワー2.5万人もいる透の~スタグラムとかも見てるけど匂わせとかする。





【あーあそこのカフェに通い出してからマジで楽しいんだよなー】





うん、きっと透なら未紗さんを幸せにできるのかもしれない。昔から透と付き合った人のあの笑顔だったりが印象的。

可愛い人、綺麗な人、人気な人、面白い人、みんな透のことを好きになる。



今回もきっと...





そう考えるうちにほんとに遅い時間になってしまったから今更だけど軽く寝ることにする。









         ーーーーーーー




次の週の日曜日、透からトークがきた。



『陸ー、今日空いてるー?』


『今日?空いてるけど』


『なら一緒に出かけようぜ』


『いいよー』


『サンキュ、そしたら12時に渋谷でいい?』


『おけ』







というわけで、透と出かけることになった。

一体どこへ連れ回すんだろうか...

そう思いつつ支度をしながら朝を過ごした。









        ーーーーーーーーー



午後12時



さてと、渋谷に到着したけどあいつ今どこにいるんだ?

トークで伝えておくことにする。




『とりあえず駅に着いた。どこにいる?』


『おけ、陸そしたらハチ公の近くにいて』


『おけ』




渋谷は久しぶりにきたな、前に来た時は1人でライブを見に来たっけ。

こう見えてライブハウスでバンドやシンガーソングライターとかのライブを見るのが趣味だった。








15分後...

向こうから透がやって来た。


「悪い、遅くなった!」



「いや、そんな待ってないから大丈夫」


「よかった!そしたら行こうぜ!」


「おけ、どっか行きたいとこあんの?」


「そそ、とりあえず最初は軽くラーメン食いに行ってからそこ行こうぜ!」




そうニコニコしながら言ってきた。透ラーメン大好きだからな。

とりあえず某○系に行き、ラーメンを食べる。高校の時から2人でそこに行くのがルーティンみたいなもの。

今日は濃いめとか硬めとか決めたりするのが好きだ。


ちなみにおれは濃いめ固め油多めにんにくマシマシだ。




「相変わらず体に悪そうな決め方」


「え、そうか?」


「硬め濃いめ油多めなんてマジでいつか身体壊すわ笑」


「わかってねぇなー笑 これがいいじゃねぇか」



高校の時から変わらないこのノリが今になって思い返すと大事だったんだと気付いた...








        ーーーーーーーー



いやー、相変わらず人気の店だけはある。

透も満足そうに感想を共有してくる。


「美味かったな!」


「そうだな、それじゃ透の行きたいとこに行こうぜ」


「よし、じゃそろそろ行くか!」




そう言い、透に案内してもらいながら渋谷の街並みを見ていく。

本当に人が多い。正直ここまで多いとはぐれてしまう...






おれは一体どこに行こうとしてるんだろう。

このスクランブル交差点のようにいくつも道がありながらまだいまだにどこへ向かおうとしてるのか自分でもわからない。


そして周りを歩いているこの人たちは一体どこへ、そんなくだらないことを考えながら目的地へ向かっていった...









         ーーーーーーーー


歩いて10分、ようやく目的の店の前に到着した。



「着いたぜ!ここだ!」

透はオススメの店を紹介しようとウキウキしながら言ってきた。



「ここって、最近~スタグラムで話題になってるカフェだよな?」



最近JKを中心にバズってるカフェ

[flake of snow]


パンケーキ中心のスイーツを出しているカフェ。

その中でも品物をテーブルに持って行った後にスタッフの手でパフォーマンスをしながらパウダーをかけていくのがリールやショート、ストーリーなどでバズったことで全国区でも有名店になった。


それはまるで自分とその周りしか降らず、一片に偏ってる雪のように...






「ここマジで有名だよな!それに陸、お前きっと驚くと思うぜ」


「驚く?パフォーマンスに?」



すでに並んでいる時に注文を頼み、テーブルに座って待っている。

先に来たフラッペを飲みながら話していると、やっとパンケーキが運ばれてきた。




「お待たせ致しました♪ A Swing of Magic(魔法の一振り)でございます♪」


「お、きたきた!ありがとうございまーす!」


「透、やけにテンション高いな」


「だってほら、見てみ!」



そう店員の方を見ると...







「では、あなたのパンケーキに私から一振りを♪」


「え、未紗さん!?」



「えへへ、やっほー♪」



透のやつ、ここで働いてるの知ってるから連れてきたんだな...全く






「いやーまさか未紗さんがここで働いてるとは思わなかった!カフェで働いてるのは知ってたけど...」


「うん!実は最近から働き始めたんだよね♪気に入ってくれると嬉しいな♪」

そう未紗さんが言うとすかさず未紗さんに透が強調していく。



「絶対気にいるって!これは確かにバズるから!」




「では改めて、一振りしていきますねー♪」





軽く会話し、未紗さんがパウダーをかけはじめる。










なんだろう、本当に雪が降ってるようだった。

早過ぎず、遅すぎないそのかけ方。


少しずつ、少しずつ積もっていくようにパンケーキに被さっていく。 



それに未紗さんは肩の近くから振りかけているのに周りに溢れたりしていない。まるでスープを煮込むように上でかき混ぜながら...



気がつくと終わっていた。右端にパウダーが溜まっている。

全体に振りかけてたのにも関わらず気づくと右端に...






「すごい...」


「言葉失うよな、最初見た時に絶対これ有名になるって思ったわ...」

いやこれは確かにいろんなsnsでバズるわ。




「そういってくれると嬉しいよ♪ごゆっくりお楽しみください♪♪」





そう言い未紗さんはおれたちから離れていった。

席は常に満席だから忙しいよなと改めて感じる。外にも相当人が並んでいて早く早くとまるで急かされてるように。




そして口の中にパウダーと一緒に食べていく。










...本当に冷たい...

雪をそのまま口に含むような。それでいて爽やかなミントの味が口の中に広がる。


それでいてパンケーキは逆に少し暖かい。まるでウール生地のジャケットを着せてくれるように。


舌がとても甘い。












甘く、爽やかで、そしてどことなく苦味のある味だった。

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