第5話 「芽生え」
こうしておれらはパンケーキを食べ終え、会計を済ませようと立つ。
以前として未紗さんはバタバタしながら接客をしていた。
おれの時と違って危なげなく、むしろ丁寧に対応をしている姿には感服した。
「相変わらず未紗ちゃんにはデレデレなんだなお前、そんなに気に入ったのか?笑」
「そんなんじゃねぇよ。ただ、新歓の時1番初っ端飲み物こぼした人と同じ人に見えねぇなってだけ。」
「ああ、確かそうだったっけ?おれいろんな人と話してたからそれ見てなかったわ笑」
そうふざけながら会話して、会計を済ませる。
最後に未紗さんに挨拶しにいく。
「じゃ未紗さんバイト頑張ってね。」
「うん、またね♪」
こうしておれらは店を後にする。
あっけないって?いやいや、たくさんの人がいる中長居すんのは禁物だろ。
とりあえず未紗さんのバイト姿は確かに可愛かったけど透のいる手前、冷静になる。
ーーーーーーーーーーーーーー
一方おれらが帰ったあとに...
.............
(透くんには確かにここでバイトしてるって言ったけど)
.............
(まさかほんとに来るなんて思わないじゃん!?
しかも陸くんも連れてくるとか反則でしょ!!
てか陸くんカフェとか甘いもの好きなんて意外なんだけど!!!
いや落ち着け私、、、もう行っちゃったしとりあえず残りのバイト頑張れそう!)
.............
(あとで2人に連絡しとくか、、、)
ーーーーーーーーーーーーーーー
店を出たおれらはその後、他にも渋谷の街を探索することに。
いろんな服を見たり、路上でライブをしているシンガーソングライターの歌を聴いたりして休日を満喫していた。
夜になると本当に人がたくさんくる街だなと改めて思う。
「いやー、今日は陸が来てくれてよかったぜ!ほんと意外とノリ良いのになお前、なんで昔からお前友達少ないんだろな」
余計なお世話だ。
「愛想悪いからじゃねぇか」
「それだよそれ、そうやって自分を卑下してばっかじゃねぇか。その気になればおれぐらい、いやおれ以上にモテる素質あるのにもったいねぇ笑」
「別におれはモテたいとは思ってねぇよ」
なんでおれ強がってんだよ...
おれだって彼女が欲しいわ。
そういう他愛もないやりとりを繰り返していく中、透がこんなことを言い出した。
「おれ実は気になってる子がいんだよね。」
「へー、お前がそんなこと言うなんて珍しいな」
透は確かにモテる、それも尋常じゃないくらいに。
忘れもしない高2のバレンタイン。1番人気、透。
登校中に16個、学校の玄関の出待ち10個、下駄箱に20個、教室に入って10個、ロッカーの中に40個ぐらい、机の中にも10個。
極めつけは昼休みと放課後に先輩後輩含めて整理券制で100人近くが並んで渡し会を開いたぐらいだ。
ただその時は別に誰も好きにはなんなかったって言ってた覚えがある。
そんな透が自分から好きになることがあるとは思わなかった。ついついまさかそっち側かと思ってたぐらいだったから笑
だからこそおれは透の気になる子を知ってみたい。
「ちなみにどんな子が気になってんだよ?」
「いや実は3人いるんだよなー」
「3人!? これまた随分と多いな。ちなみに誰?」
いやマジで多いわ。
「1人は未紗ちゃん!やっぱりあの子はおれが見た中で1番可愛い!」
まぁやっぱりなとは思った。多分今日おれをあそこに連れ込んだのもきっとおれがいないと緊張で話せなくなるからだなと察した。
自分から攻めたことないからな透は。
「ちなみにあと2人は?」
「あとは朱音ちゃんと新歓の時の先輩かな!」
まぁ透だったら普通にしてれば3人とも可能性あんのがやっぱり羨ましいな。
だからこそ尚更もったいない気もする。
「陸、お前はどうなんだよ?」
「え、おれ?おれは別に今は誰も気になっては...ないよ」
「おいおいなんだその間は。さてはお前も気になってる子がいんだろ!」
「いや、なんか変わってるなと思う子はいるけど。」
「あ、未紗ちゃんか!確かにちょっと雰囲気変わってるっていうか笑」
「ドジだなとは思うけど人当たりがすごい良いなとは感じるよ」
意外とそういったトークは盛り上がるんだなと改めて感じる。それと同時に自分のコミュ障ぶりも遺憾無く発揮されてく。
そんな中、通知音が鳴った。
透の携帯からだ。透はトークアプリを開いた。
「お、朱音ちゃんから連絡きたわ。」
「なんだって?」
「『今未紗がバイト終わって合流したからまだ渋谷にいるんだったらこれから遊ぼー』だってさ、どうする?」
おれに決めさせるなよな。せっかく気になってる子2人と遊べんだからチャンス掴めって。
「いやおれに聞いてもしょうがないだろ。それこそお前合流して3人で遊んでこいよ。気になってるなら尚更だろ」
「いやそこは空気読めよな、せっこく2:2で遊ぶチャンスなんだから仲良くなるチャンスだろ。なんでわざわざ男1人で会いにいくんだよ。」
ごもっともな意見だ、まぁ時間あるからもう少し透に付き合うとするか。
ーーーーーーーーーー
10分くらい歩いたところで待ち合わせをしているみたいだ。
とりあえずこの時間だと普通にどこかでご飯を食べにいくのが妥当か。そう考えながら歩くと目の前に2人組がいた。
「あ、2人見つけた!やっほー!」
倉科さんがおれたちを見つけて声をかけてきた。そうここまでは普通にあるような話。
まさかここからあんなことになるなんてこの時は思ってもいなかった...
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