第3話 「戸惑い」

「よく見ると陸くんってまつ毛ながいんだね♪」

水無月さん急になんだ。

おれは!戸惑いながら




「いきなりどうしたの?」

そう返答すると予想もしなかったことを言ってきた。





「いや~?だってみんな透くんに夢中になってて陸くんのいいところも探してみようかなーって思ったら陸くんもかっこいいなって思って!」



「いや、さすがにおれと透を比べたらレベルが違いすぎるだろ笑」





そうありのままに語る。








自分のことを詮索するような人に久しぶりに会った気がする。そう思っていると疲れ果てたように透がこっちにやってくる。







「あー...やっとこっちに来れたわ笑 みんな質問しにきすぎだわ~」


「お疲れさん、随分と初日から人気だな」


「そりゃ今日はみんなで楽しもうって思って頑張って支度してきたんだぜ!これぐらいやっぱりなきゃつまらねぇって笑」



(相変わらずその自信はどこから湧いてくるんだか)





そして透は未紗さんを見つめ、おれを見つめる。






「え、陸お前いつ未紗ちゃんと仲良くなってんだよ?」


「いや、別にまだ仲良くなったってわけじゃ...」


「透くんがいっぱい囲まれてたから話に行こうとしてもいけなかったんだよー、ごめんねー」


「そうだったんだ!それならもう大丈夫!今隣のあいつに擦りつけてきたから!ここからいっぱい話そう!!」


「んーそうだね♪」


「あのさあのさ未紗ちゃんは...」



そう話しかけようとした時、水無月さんの幼馴染の倉科さんが戻ってきた。



「あー!透くんこんなとこいたんだ!」


「朱音ちゃん!戻ってきたんだー」


「あれ?未紗もここにいたんだ!そしてー...あれ?誰だったっけ?」



マジか、もう忘れられてんのおれ。

どんだけ存在感ないんだよ...




「朱音ちゃんはほんとにどうでもいい人すぐに忘れるんだね笑 陸くんだよ♪」



(水無月さんもどうでもいいと思ってんのか)


そう気を楽にしようとした。




「陸くん1人になってて可哀想だなーって思って私もゆっくりお話できればなって思って話してたんだ!」


(それフォローになってねぇよ...)




「よかったじゃん陸!未紗ちゃんめっちゃ可愛くて何より優しくてさ!」


「そうなんだー、私は透くんが今日来た中で1番かっこいいからとにかく透くんに目立ってればいいし!」


「朱音ちゃんは一度狙ったらスナイパーの如くヘッドショット改めてハートショットするからね♪よかったじゃん透くん!」


「いやー!いっそ2人とも来てくれたら是非楽しませるわ!」









...あれ?おれいなくても会話成立してるじゃん。

じゃ別にもう帰ってもしばらくしたら忘れられてるよなきっと。




そう思い、トイレに行くと伝えてその流れで翼先輩たちに帰ると伝える。先輩たちは少し寂しそうな表情を浮かべていたが快く了承してくれた。

その気遣いがモテる秘訣なんだなと改めて感じた。



幸い3人が話してる席は入り口が見えない席だったからなんなく店を出ることに成功した。









        ーーーーーーーーーー




「ふ~...」



もっていたタバコをつけ、ゆっくりと気持ちを落ち着かせる。

この喫煙所は比較的落ち着いて吸うにはうってつけだった。あまり人が密集する場所は昔から好きじゃない。どちらかと言ったらカフェだったり公園だったりでのんびりと過ごすのが性に合う。





今頃3人は楽しんでるんだろうなー。ていうか一種の三角関係じゃねぇか。


どっちかが悲しむことになるよな...




まぁ抜け出したおれがそう言える立場ではないんだけどさ。





「「ふー...」」





ちなみにおれはタールが強いタバコを吸う。星がデザインのタバコ。その方が肺にくる煙の強さが違う。


より自分の中に閉じこもってる考えだったり言葉だったり感情だったりが煙と一緒に吹き出されるような感覚になる。

これはやばいな、まさにヤニ中毒の重症患者が言いそうな言葉。


いつか年取ったときにヤバいよな...






って言っても結局自分について考える時間はこのタバコ吸ってる時にしか訪れない。

自分自身、見つめ直せばそれはそれはひどい有様。






...あ、ヤバい。そういえば今日透に借りていたノートを返すのを忘れていた。

とりあえず少しだけ電話してその件だけ言っておこう。


そう思い透に着信をかけた。すると何コールかして透が電話に出た。









「もしもしー!陸お前何勝手に帰ったんだよー!!心配すんだろー!」



「それはごめん、それより今日借りたノートなんだけど...」


「え、ノート?...あぁー!月曜まで持っててよ!てかそんなことより陸お前さ、未紗ちゃんに会ってない?」


「水無月さん?会ってないけど...どうしたの?」


「いや~実はさー...」








~~~~~

そう、あれはおれと朱音ちゃんが2人である話題で盛り上がった時だった。



「ってことがあってさ!笑っちゃうよね☆」


「ヤバいねそれ!高校の時からそうなんだ!笑」



【なんか嫌だ】



「なんだろなーいいやつなんだよ笑 ただ不器用すぎるし地味だし、おまけにさ、お前いつからいたのって感じだからびっくりしちゃって笑 

確か高校の時クラスの集まれる人たちで真夜中の神社で肝試ししたときにあいつが幽霊役でさ、その存在感の無さと地味さでみんなを驚かしたわけよ!

んで腹たった女子がみんな帰ろってなって、後から聞いたらあいつ朝方までずっと神社の森でびくびく待ってたらしいよ笑」



【そうやってあなたのような人がいるから】



「いじめられっ子の話じゃんそれ笑」


「だよね笑 未紗ちゃんはこの話どう思..」




「ごめん2人とも、私帰るね」


「え、未紗ちゃんどうして?もっと楽しもうよ笑」


「そうだよ未紗!せっかくここから面白くなるのに笑」

そう2人で引き留めようとしていた。



「私はあんまり面白いって思わなかったなー」


「彼のこと悪く言うのはやめて」


「いやー陸のことじゃな、あれ、陸?」


「あれ、陸くんいなくなっちゃったの?」

そう、気がついたら陸のやつがいなくなってた。2人で盛り上がってたから全然気がつかなかったな。




「先輩に聞いたら陸くん先にお店出たんだって。2人とも全然気づかなかったもんね。」


「いや、違うよ未紗ちゃん。ほんとにあいつのことじゃねぇって笑」


「少なくてもこれで透くんがどんな感じな人なのかはわかったよ。

朱音ちゃん、月曜は7時でいい?」


「うん、じゃあ7時に改札で待ってるよ。」


「ごめんね、じゃまたね!」


未紗ちゃんは少し怒ってるようで心配したような顔で店を急いで出て行った。




~~~~~





「ってことがあってさー...ヤバいよな、未紗ちゃんに嫌われちゃったらどうしよー」

意外と確か透は繊細な一面あるよな。



「その話ってあいつのことだろ?まぁたとえおれの話じゃなくても確かに居心地は悪くなるだろ~、まぁもし次会った時にちゃんとおれからも説明しとくよ」


「悪いないろいろ。」


「まぁ気にすんなよ。」

とりあえず水無月さんはどこに行ったんだ?



「そんなことより水無月さんは帰ったってことでいいの?」


「そうなんだよー、さすがに可愛いからどっかで変なやつにナンパされてないか心配になるわ。」


「まぁ吸ったら少し近くを探してみるよ。もしわかったら連絡するから」


「ありがとな陸!じゃあゆっくり休めよ!また月曜な!」


「おう、じゃあな」




そう言って電話を終わらせた。

さて、これを吸ったら少しここらへんを探してみよう。


幸い透とよく遊びに行く場所だから土地勘はあるけど、連絡先持ってないから探しようがない。

手当たり次第で探すしかないなと思っていた。





「あの~すみません!もしよければタバコ1本もらってもいいですかー?」


女性からそう聞かれた。別に1本くらいならいいかと思い、いいですよ。と答えた。



「ありがとうございます♪」



そう聞こえたのでタバコを一本渡そうとした。

















「へー、陸くんもタバコ吸うんだ、意外♪」



「うわ!?」


そこには水無月さんがいた。



え、帰ったんじゃないの?

どうやって見つけたんだ?






「え、なんでここにいるの?」


「そりゃタバコ吸うためだよ♪意外でしょ?てことでタバコ1本もらい♪」



「って勝手に取るなって」


「えー今いいよって言ってたじゃん♪

てか強いタバコ吸ってるんだね!私もこのタバコ大好きなんだ!」




そう言い未紗さんはタバコをつけた。なんだ、イメージが崩れるわ。


タバコは絶対に嫌って言うタイプだと思ったらこいつ、吸い慣れてる...






「さっきの答えだけどほんとにたまたま会えたって感じだったんだ!お店を出て帰る前にタバコ吸おうかなって思って私がよくいく喫煙所に行ったら陸くんがタバコ吸ってたんだ!それで少しバレないように一緒に吸ってたの!」



「え、何。忍者かなにか?隠れ身の術でも使ってたの。全然気づかなかったわ笑」



「えへへ、それほどでも♪」


「いや別に褒めてないからな?笑」


「てかやっと笑ってくれたね?笑」

え、おれ笑うイメージなかった感じかよ。



「いや店でも笑ってたじゃん」


「店では周りに気を遣って全然心から笑ってないような感じ、目が死んでるって言うのかな?」


「それを言うなら目が笑ってないじゃなく?」


「そうそれ!」


「全く笑」



なんだろう、この人と話してると自然と自分の素を出してしまう。



こんなことは初めてだ。










「でも、ほんとにもう一回会えたのはよかった♪」

そう彼女は少し照れた子供のような顔をして言った。











(実はおれも、おんなじ気持ちなのはまだ隠しとくか...)

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