第4話 中学二年生
中学二年生
「何言ってんだよ、お前」
小石くんと真妻が教室の中央で喧嘩をしていた。彼は、髪を立たせていて、辛口で、真妻という苗字に加えて、いつも緑色の服を着ているので、簡単に言えばわさびだった。いや、人間であることは明らかに分かっているのだけれど、わさびと呼んでいる。もちろんだけど、人の名前で遊ぶのは良くない。
状況としては、わさび氏が小石くんの悪口を言っていた際、本人が登場し、小石くんが怒ったら、わさびも逆上して、という流れらしい。どちらも、今にも掴み掛かりそうな雰囲気だったけれど、すんでのところで踏みとどまっていた。
「だから、殺せるもんならやってみろって言ってんだ」
一般的な喧嘩文句として言うならば、「お前にやれる度胸なんてないだろう」とか、そんな意味合いで使うのだろうが、小石くんの場合は少し違う。
「俺はな、死なねぇんだよ。もし死んだとしても、生まれ変わってお前に会いにいってやるよ」 小石くんは小学生の頃からそんな言葉を言っていた。本人は冗談などではなく、本気で言っているようで、それがさらに小石くんを孤立させた。でも、ぼくはそんな小石くんの言葉が好きだった。力強く「生まれ変わってやる」そう言い切る姿は自信に溢れていて、余るほどの自信をぼくにも分けてくれている気がした。
「お前、父さんに言いつけてやるからな」
わさび野郎の父親は弁護士らしく、彼はよくそれを鼻にかける。
「弁護士に話してどうすんだよ。『パパ、ぼく怖いよお』ってか?お前、自己解決能力って言葉知ってるか?」
「だったらお前も、みんなに煙たがられないように自分で解決してみろよ」
お互いに冷静さを欠いていて、そろそろ誰かが止めないとまずいぞ、と思った時に、予鈴と同時に担任が教室に入ってきた。
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