第3話 コンビニバイト

 コンビニバイト

 

 加藤はスマートフォンを開くと、メールが来ていることに気がつく。開いてみると、それは父親からのもので少し落胆する。休憩室のテレビに視線を移した。ニュースキャスターが今日のニュースを真剣な顔で捲し立てている。話題は次に移行し、

「今日の二時頃、行方不明であった」

 と話し始める。噛み砕いて話すと、連続殺人犯の犠牲者がまた一人見つかったらしい。加藤は小西小石のことを思い出し、怪物に捕まれるような苦しさを覚える。

「あ、怖いですね。その、連続殺人とか」

 加藤は隣にいた蓮さんに話しかけた。学生時代の加藤は野球というコミュニケーションに頼ってばかりだったので、今はこうして会話に苦労している。

「ああ、この近くで起きているやつだろ」

 蓮さんは何か分からない外車の画像を眺めていた。その表情はどこか恍惚としていて、まさに車に恋をしているようだった。彼は真性の車好きで、よく会話にもカージョークを交ぜてくる。蓮さん自身も、「俺は世界で一番車の運転と鑑賞が好きな男だから」と言っていた。とはいえ、好きなだけで上手いわけではないのだろう。蓮さんと仲のいいバイト仲間は、「蓮さん、運転が下手なうえに荒いんだよなあ」と加藤に話した。

「あの、こういうの、どういう気持ちでやってるんですかね」

「恐らく、こういう奴らにとっては軽いドライブ気分なんじゃないか?」

 もし自分が連続殺人犯だったら、と見知らぬ犯罪者の気持ちを想像してみる。が、やはり相容れなくて、加藤は未知に皮膚を掬われるような、心を巣くわれるような気持ちになったが、救われはしなかった。

 

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