3月 すべての幸せを忘れない。

「私はあなたと過ごしたこの一年を――一生忘れません」



 ぼろぼろと涙がこぼれて、視界が涙で見えなくなる。

 そんな視界の中で、彼の動く気配がした。


 そして……いつの間にか、私は彼の腕の中にいた。


「行かないで、ください――」


 ぎゅっと、彼の制服をつかむ手に力を入れる。


「……すまない。その願いは、聞けない」


 苦しそうにそう言った悠さん。

 もう、それでもいい。

 だから今はせめて……こうしていたい。


 何秒経ったかわからない。

 もしかしたら、何分か経っているかもしれない。


 大丈夫。

 もうあなたがいなくてもやっていける。


 今の私は間違いなく幸せだった。

 こんなに私の心を『幸せ』で満たしてくれたあなたも、

 私と同じように幸せであることを祈ります――

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