すれ違う秋

9月 手の届かない、真っ暗な闇。

 久しぶりに図書館で本を読んでいた、ある日のこと。


「陽谷って最近来てないよね」

「冷酷の騎士ってみんなから嫌われてるし……さすがに来なくなったね」


 陽谷、さん?

 突然その名前が出てきて、私は思わず顔を上げる。

 冷酷の騎士?嫌われている?どういうこと?


 会話の流れ的に、陽谷さんは冷酷の騎士と呼ばれている……そして嫌われている……ということ?

 陽谷さんが嫌われているなんて、そんな。

 なんでもできて、みんなの憧れじゃなかったの?


 知らなかった真実に私は驚きを隠せない。


 今休んでいるのって、もしかして――


 こんなことしてる場合じゃない。


 家の場所はなんとなくなら知っている。

 前、屋上で話していたとき、言っていた気がする。

 私は放課後、学校を飛び出す。



 あなたはいつも私を助けてくれた。

 私はあなたにいつも救われていた。


 今度は私が救います。

 必ず、必ず、救ってみせるから――

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