8月 この想いは知らないふり。

悠さんが屋上に来なくなって一か月が過ぎた。

 最近は私一人で屋上にいる。

 教室よりは、屋上の方が落ち着くから……。


 今の私は、悠さんと出会う前のころの私によく似ていた。

 慣れていたはずの、クラスメイトの嫌味。

 悠さんがいつもいてくれたから、心の傷は癒されていった。けど……。

 今の私には、心の傷を癒してくれるものはない。


 傷ついて、傷ついて。

 わたしの心はどんどん弱って。


 何もしてないのに……。

 悪いことなんてしてないのに……。

 ただ一方的に、私は傷ついていく。


 私は悠さんがいないと、どうもダメらしい。

 早く、早く……会いたいです。


 そんな、会いたいという気持ちと一緒に、今まで目を背けてきた気持ちが沸き上がる。


 ――悠さんのことが、好きなんだ。


 想いを伝えることはしない。

 きっと、悠さんを困らせてしまうから。

 しかもそれによって悠さんの身に何かあったら……。


 それが一番怖かった。

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