7月 光を探して〈side悠〉

 俺の日常はつまらない。


「いつも“頭イイですー”ってアピールして。目ざわりなんだよっ」

「もう学校こなきゃいいのに」


 そんな声が嫌でも耳に届いてくる。


「『冷酷な騎士』がまたアピールしてるよ」


『冷酷な騎士』

 それは、勝手に作られた俺の肩書だ。

 入学してからすぐにその名は知れ渡った。


 そんな俺が、どうして学校に来ているのか。

 俺自身も不思議に思う。

 あんな一年の女子一人と会うために……なんて。

 馬鹿らしい。

 あいつ……羽菜といったか。

 羽菜と出会う前の俺だったら、そう思っていただろう。


 あいつはいつも、悲しそうにして。

 その悲しみを分かってあげられるのは、俺だけだろう。

 そして……そんな羽菜を救ってあげたいなんておこがましいことを思った。

 それと同時に……羽菜に惹かれていったのだろうか。


 いつものように、屋上へ向かう。その途中。


「冷酷な騎士って、屋上で女と会ってるらしいよ」

「あ、知ってる!どうせその女も……」


 続きを聞きたくなくて、思わずその場を離れた。

 俺を侮辱するのはどうでもいい。

 でも。

 羽菜を侮辱するのだけは許せない。

 しかも俺と一緒にいるから噂されて……。


 ――俺が、会わないようにすれば――


 俺はその日から学校に行くのをやめた。


 苦しみ、当てもなくさまよい続けていた俺は……。

 ――それでも光を探していたのだろうか。

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