7月 あなたはどこに。

 ――キーンコーンカーンコーン。


「白上さん、ちょっといい?」


 数学の授業が終わり、帰りの支度を始める私に声をかけたのは、数学の先生。


「……なにか私に?」

「私、この後すぐに会議があって……。この書類を数学研究室まで届けておいてほしいんだけど……」

「……数研ですね。わかりました」


 はあ……と心の中でため息をつく。

 せっかくの悠さんとお話しできる時間が短くなっちゃう……。

 でも、先生から頼まれた以上、断ることはできない。


 急いで帰りの準備をし、書類を抱えて数研へ。

 先生の机の上でいいかな……。

 どさっと机に置き、数研を出る。


 それから屋上へ向かう扉を開けると、いつものように悠さんが――。

 あ、れ。

 いない……⁉


 そう広くはない屋上を見渡すが、どこにもいない。

 まだ来ていないのかと思ったが、いつも必ず私より早く来ているのにありえない。


 風邪ひいたりしたのかな……?


 大丈夫だよね。

 何もないよね。


 そう信じたい。信じたかった。

 でも……。

 次の日も、また次の日も来なかった。

 

 悠さん。

 あなたは今、どこにいるんですか?


 胸騒ぎが止まらない。

 嫌な予感とともに、私は屋上を後にした。

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