変わり果てた夏
6月 動き出した影。
ガチャリ、と屋上に行くためのドアを開ける。
今日は雨。
雨のときでも、屋根があるところがあるからそこで話している。
今日は雨のせいか、屋上がとても暗い。
でもいつもと変わらず、本を読んでいる悠さんの姿があった。
黙々と読んでいて、私に気付く様子はない。
「悠さん」
呼びかけてみても、反応はない。
たぶん、雨の音にかき消されてしまったんだろう。
次はもう少し近くで呼んでみた。
そしたらさすがに聞こえたらしく、本を読むのをやめてベンチにつめて座りなおしてくれる。
「今日は……」
委員会のこと、授業のこと。
顔は漆黒の前髪で隠れて見えないけど、耳を傾けて聞いてくれているのがわかった。
話している途中にちらっと悠さんの顔を見ると、どこか悲しそうに見えた。
何かありましたか。
そう聞けたらよかった。
いや、なんとしてでも聞くべきだった。
なにかあったら、言ってくれるよね。
私は信じてるよ。
いつもどおりだよね?
大丈夫だよね?
でも――
その願いとは正反対に、あなたはどんどんと絶望の谷へと追い込まれていった。
そんなあなたは、私が救うよ。
人を信じることを恐れていたはずなのに、そんなことを思うまで……。
――いつの間にか私は、あなたのことを好きになっていたんだね。
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