5月 知らない気持ち。
「……っていうことがあったんです」
「……そうなのか」
放課後、いつものように屋上へと向かうと、先に悠さんが来ていた。
悠さんのことはほとんど知らない。
知っているのは、名前とこの中学の生徒ということだけ。
今日の出来事を悠さんに話すと、しっかり聞いてくれて反応してくれた。
口数が少ないけど、その一言一言に優しさを感じる。
何も知らない人なのに、一緒にいると安心するんだ。
隣にいるだけで、幸せになれる。
――この気持ちって何だろう?
人を信じることができなくなった……いや。
人を信じ、裏切られることを恐れている私を救ってくれたのは……。
人と関わることをあきらめた、あなたでした。
そんなあなたが、どうして私と話してくれるのか、その時はわからなかった。
なんで、私と同じように君が傷ついて苦しんでいるのを気付けなかったんだろう。
少しでも、少しでも……。
――少しでも、早く気付けていれば……。
あなたを絶望の谷へと追い詰めるものは少しでもなくなったのかな。
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