出会いの春

4月 この出会いは必然。

「あいつ、またアピールしてるよ」

「先生に気に入られようとしてるんじゃない?」


 いつもと変わらない、この日常。

 私を見て、こそこそとしゃべっている声がする。

 聞こえていないふり。

 何も知らないふり。

 これが一番適切な判断だ。まだこれだけですんでいるのがせめてもの救いだ。


 こんな私はもちろん友達と呼べる人もいない。

 何もすることがないから教科書を読んでいるだけなのに、それを見たクラスメイトが本当でもないことを言う。もう慣れたけど……。


 そんな私がどうして毎日学校に来ることができるのか、というと、ある毎日の楽しみがあるからだ。それは放課後の時間。


 とくに部活動をやっていない私は、毎日必ず屋上に行く。

 そこにはある男子がいて、いつでも私の話を聞いてくれるのだ。


 入学式の日、読書をしようと思ったけど、周りの人がこそこそと私を見て話しているのが聞こえた。そんな中でゆっくり読書ができるはずもなく、ふらふらと歩いていたら屋上に来ていた。

 せっかくだから屋上で少し休もう、と思っていたら、陽谷 悠と名乗るある男子生徒がいて、声をかけた。


 今日も私は屋上に向かう。

 ——あなたに会うために……。

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