第12話
あの二人に尾行がばれてしまったので大人しく家に引き返したマツリは、何故海賊達が領主の家に行ったのかを考えていた。
(一番妥当な考え方は、領主の家の財宝目当てか…でも、偵察に行くにしたって、あの人数はなめすぎでしょ、他にも別の道に仲間がいてあの後合流して攻めに行くとか?)
さまざまな思考を巡らせていたが、マツリは結局この答えに落ち着いた。
(島民たちの安全があたしとじっちゃんの一番大事だから領主の安全なんて関係の無い事、だよね。)
マツリとムマジの仕事は島の警護だった。
警護といってもその仕事はさまざまで、危険人物の観察や海の様子の見張り、島の揉め事の仲裁などで領主が雇った警備員とはまた違う自警団に近いものだ。
(…どうせ、今の領主がいなくなったとして、新しいのが別の島から派遣されるでしょ。)
このナンチー島は、こことは別の大きな島が管理している事になっているのだが、あくまでそれは表向きで、必要な時以外は基本的に忘れられていると言っても良い程放置されている。
離れた場所にあるし、連絡手段も限られているので、島民達による自治が必然的に求められる…が、好き勝手やられても困る、というので出来た役職が領主だ。
領主はナンチー島と大きな島のパイプ役で、大事な仕事なのだが…ここの領主は本当にそんな仕事をしているのかと聞かれれば正直な所微妙だとマツリは思う。
とりあえず、島の皆が海賊に危害を加えられるようなことはないことがわかってマツリはほっと息をついた。
「マツリ、帰ってきたのか。」
足を少し引きずりながらムマジがゆっくりと降りてきた。
「じっちゃん、無理しなくていいよ。」
その様子を見たマツリは大人しくする様に言うが、ムマジはご飯の支度をするからと言って聞かない。
「もう、頑固者。」
「それはそっくりそのままお前に返す。」
ところで、とムマジはマツリに聞いてきた。
「客は誰だったんだ?」
そう聞かれて、マツリは事の詳細をムマジに話す。
「フム、そうだったのか…。」
すべてを聞き終わったムマジはマツリにこういった。
「ひょっとしたら、怪盗絡みのことかもしれんぞ。」
ご飯を食べる手をピタリと止めて、マツリはムマジを見る。
「怪盗って、あの?」
「ああ、完全に俺たちの管轄外だがな。」
愉快そうに笑うムマジをじっとりとした目でマツリは見ていた。
「ああ、悪い悪い。」
だが、とムマジはこう付け加える。
「今度の仕事は大変な事になりそうだぞ、覚悟しておかんといかんな。」
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