第10話
「で、私に何の用だ?」
女の子を振り払った後、サナとノイは領主の屋敷に来ていた。
「私共は最近この島に流れ着いた旅団です。」
「先程ぉ、町の掲示板にてこちらが怪盗の被害に遭っていると聞いて参りましたぁ。」
サナの口調に問題は無いがノイはいつも口が悪いので敬語に慣れてない。
流石に失礼な態度だったので、無言でノイの片足を踏む。
「っ!?」
「失礼しました。」
「…ところで、最近この島に来たお前達が何故怪盗の事でここに来るんだ?」
サナの踏んだ足がいまだに痛いのか、ノイはまだうずくまって呻いていた。
「見た所、貴方はその怪盗に大分手を焼いている様子ですね。」
「お前等に何が分かる、奴が現れてから三ヶ月…どれだけの物が盗まれたか!!」
怒りにぶるぶると震え、領主の顔は真っ赤になる。
(ゆでだこみてぇ…。)
内心ノイは可笑しく思った。
「そこで提案があるのですが、わたし達を雇ってみてはどうでしょう?」
「何、お前達が怪盗の相手をするのか?」
はい、そうです、とにこやかに答えるサナに領主は鼻で笑う。
「フン、生憎だが間に合っている。私の家には十分な程警備員がいるからな!」
「でも、それでも効かないのでしょう?」
あの張り紙がしていた…だからわたし達が来たんですとサナは説明するが、領主は疑いの目を向けたままだ。
「…お前は私を侮辱しているのか?」
「いいじゃないの。」
そこにサナ達に助け舟が出される。
「メアン…。」
部屋に入ってきた妻を領主は驚いた顔で見ていた。
「どうせ、これまでと同じセキュリティではまた盗まれる事も目に見えているわ。」
「でも、お前お金は…。」
「あなた、少し静かに。」
にこりと美しい顔で微笑んでいるのに領主はその顔を見たら凍りつくように体中の動きを止める。
「どうせ盗られる金なら怪盗を捕らえるのに使った方が利口じゃないかしら?」
コツコツと足音を響かせサナの方に近づいてきた。
「ねぇ、そこの貴方?」
「仰る通りかと思います。」
先程までは柔らかな表情を浮かべていたが、一変して無表情で目の前にいる妻に言う。
「ふふ…食べちゃいたいくらいかわいい顔。」
そっとサナの頬に手をそえて艶のある声で妻は口説いたがサナは優しくその手を剥がした。
「奥様、お止めください。」
「あら、つれないのね。いいわ…。」
妻は大人しくその手を降ろし、サナから一歩下がって言う。
「その方が燃えるし?」
妻は領主の方を向き話す。
「この話、承諾しましょ。」
「………。」
領主は何も言えずにただ無言で頷いた。
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