第8話

「今日はどうだった?」

海賊達がまた船に戻ったのを見届けるとマツリはさっき海賊達がいた八百屋の主人のところへ聞きに行った。

「広場で掲示板を見ていたよ。何か一瞬物騒な事言いかけていたけど、特に被害はなかった。」

「そう…。」

その物騒な一言は何だったのか気になる所ではあったが、被害が無いのであればそれで良いかと彼女は思う。

「今日は結構買い物してたから明日辺りにはもう船を出しちまうんじゃねーか?」

「本当!?」

「おう、今日は昨日より大量にお買い上げしてくれたからな☆」

「そっか…。」

ここでやっとマツリは安堵する。

「ようやく休めるな、いつもごくろうさん。」

「ううん、もともとじっちゃんがやってた事だしね!」

「でも、やっぱりムマジさんの娘だなぁ。あの人が現役だった頃を思い出すよ。」

その言葉を聞くとマツリは嬉しそうななおかつ恥ずかしそうな顔をした。

「…そうかな?」

「ああ、十分にやれてるさ。」

嬉しい気持ちが顔に出てしまう頃、別の所から声がする。

「あんたっ仕事!」

と奥から彼の妻が放つ怒鳴り声だった。

「おう、そうだった。」

「ありがとうね、おじさん。」

これ以上は自分も怒られると考え、マツリは離れる事にする。

「気をつけてな!」

「うん!!」

パタパタとマツリは足音をたてながら走って行った。

 

「…あの子?」

「ああ、海賊達の事を聞きに来た。」

妻は少し顔を曇らせた。

「…オイ、まだ」

「分かってる、分かってるわ…でもね私は」

「それ以上言うな。」

鋭く主人が咎めると、彼女ははっとしてそれ以上話そうとしていたのを止める。

「…ごめんなさい、悪い事を言おうとしたわ。」

「本当なら俺だってお前と同じ立場だったと思う、だけど俺達はもう他人じゃない。」

 

八百屋の主人は噛み締めるようにこう言い終えた。

 

「この同じ島に住む…家族なんだ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る