第6話

ここはナンチー島の領主ヒュースの家。

家には如何にも高級感が漂っている。

馬鹿でかい庭に彫刻、金色の床に深紅の絨毯。

そんな物たちがこの家にはあった。

 

「どうだ、相変わらず素晴らしいだろう?」

「ええ貴方!」

「………。」

これもまたやたらに長く高級そうな大理石の机に三名そこで食事をしていた。

「いや~この前買ったあの剥製は大分いい物だったよ!」

「大分お金もかけたけどね。」

「そうね、さすが貴方だわ!」

「いやいや…そんなに褒めるなよ二人共。」

いい気になっている父を尻目に息子はパクパクと料理を食べている。

(僕は褒めたんじゃなくて、嫌味のつもりで言ったんだけどな。)

と内心思っている事をおくびにも出さなかった。

「…だが、またあいつがくるらしいがな。」

上機嫌だったその顔を曇らせて話すと、妻がその言葉に喰い付く。

「え、あいつって…。」

「またいつもの様にご丁寧に予告状を送りつけてきやがった。」

「まだ捕まえていなかったの!?」

すると妻がさっきまで優雅に装っていたが、雰囲気をがらりと変え夫を問い詰めた。

「あ、その」

「どれ程被害にあっているかまだ分からないのね…あ~前買って貰った指輪やネックレス、ドレスだって奴に盗まれたのよ!」

怒り始める妻を宥める為、領主はしどろもどろに言葉を出す。

「だから、また買ってあげたじゃないか?」

「いいえ、それでまた盗まれたら本末転倒じゃない!」

それはそうだが…と次の言い訳を考えるが、向こうの方が別の怒りの矛先を出してくる。

「全く警備員も何を呑気に盗ませているんだか…まさかあいつらが犯人じゃないでしょうね!?」

「落ち着け!」

「ともかく近い内に奴を捕まえなければ…離婚よ。」

急に切り出された事に、領主は目を白黒させた。

「何でそうなる!?」

「さあね。自分の息子に聞いてみたら?」

ああ、気分が悪くなったと言って妻はその場から食事を残して出て行った。

「息子だと…?」

妻の足音が聞こえなくなったくらいに夫は低くそう呟いた。

「どこの誰と血が繋がっているか分からないこのガキが…馬鹿な。」

そう言ってさっさと食事を済ませ、去って行った。

(そう言っても結局、僕の顔を見ないで言う事であんたは妻も一応息子の僕にも臆病者だって事が丸分かりだけどね。)

息子はマイペースに食事を食べていたのだが、急にフッと屋敷の明かりが落ちた。

(…来たか。)

 

遠くで父と母が騒ぐ声が聞こえたが息子は黙って明かりが復旧するのを待った。

 

次の瞬間

高級感溢れたこの家が変貌を遂げた。

 

明かりが復旧した領主邸は

馬鹿でかい庭の彫刻が無くなり、金色の床が灰だらけになり、深紅の絨毯が薄汚い雑巾になっていた。

 

妻の甲高い叫び声が屋敷中に響き渡り、夫が必死に宥めているのが聞こえた。

 

そして―――

 

この屋敷は一夜にして

 

馬鹿でかい荒らされた庭に、灰だらけの床に雑巾の絨毯。

 

そんな物たちがこの屋敷にあった事になった。

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