第4話
ある程度の買い物を終えた二人は船へ帰ってきた。
「「ただいま~。」」
「お帰りなさい!」
迎えの言葉を口にしたのはサナだ。
「あれ、ノイは?」
「夕飯の仕込みよ。」
すると、ガーナはきょろきょろと周りを確認してから、こっそりと耳打ちする。
「聞いて、サナ…島にね、お菓子屋さんがあってメソドがキャンディ買ってくれたの~。」
「あら、よかったわねぇ~見せて貰ってもいいかしら?」
うんと頷いたガーナは、ずっと嬉しくてカゴにも入れず自分の手の平で握っていたキャンディを出す…その時。
「だから、寄り道するなって言っただろ!!」
「ム…。」
タイミング悪く、ノイがその場に出てくる。
いいじゃないキャンディぐらいと擁護するサナと、オレが良いって言ったんだよと庇うメソドの言葉を聞いても、その顔は苦いままだ。
「どーせ『ねぇ、メソド買ってぇ!』とでもぐずったんだろ。」
「いいもん、ノイには見せてあげない。」
「おうおう、好きにしろ。」
わいわいと話していると、のっそりとそこで別の人物が現れる。
「煩いな…。」
「あ、せんちょう。」
船長と呼ばれた男性は、ふわぁ…と欠伸を一つした。
「だから、もうちょっと考えるべきだったんだと思うんだ。」
「何をだ?」
海賊達の事だよ、とムマジが作ったお手製のスープをすすりながらマツリは話した。
「この島は観光客はまず来ないから、一般人だろうが海賊だろうが金を払える人なら大歓迎だけど…。」
うーんとまだ悩んでいる様子のマツリに、ムマジはあっけらんに返事をする。
「いいじゃねぇか。」
「え?」
「それで儲かった奴らもいるんだろ?」
なら向こうもこっちも万々歳じゃねぇかと言うが、それでもマツリの顔は晴れない。
「まあね…だけど、今日は早く知らせ過ぎたかも。」
「しょうがねぇ事じゃねぇか、お前が見付けたんだから。」
「…あの海賊、明らかに周りを警戒してた。どうしよう、気味が悪いっていわれて何か島民の皆を傷付けるような事があったら…」
まだ何も起きてもいないのに、これから起きるかもしれない不安に駆けられている様子の彼女の名前を話し相手は呼ぶ。
「マツリ。」
ムマジはぐっと両手でマツリの顔を掴み、自分と視線を合わせた。
「俺らを何だと思ってる?」
真剣な顔で視線を送られ、驚きの表情をするマツリにムマジはそのまま話を続ける。
「俺らはお前が思っているようなちゃちな野郎どもじゃねぇぞ。もちろんお前もそうだし、今俺らはお前に救われてる。だがそれが何だ、お前魚を釣る時は誰に頼む?」
「…漁師のおっちゃん。」
「そうだな、じゃあ野菜が欲しい時は?」
「八百屋のおじさん。」
何を今更当たり前の事を?と思うが、掴まれていたその手が離れた。
「な、だからお前が余計な事は考えなくていいんだよ。皆自分の身は自分で守る。」
そう言われれば確かにそうかもしれない、けれど…とまたその顔に影がかかる。
「でも、最初に見付けて騒いだのは…」
「それは、お前の役割だ。気にする事じゃない。」
無言になるマツリに、溜息を吐きながら彼は言う。
「お前はもっと自由に生きていいんだよ。」
「………そう、なのかな?」
「そうだよ、ごちそうさまでした。」
そう言ってムマジは食器を片付け流し台の方へ運んで行った。
(そうだとしても、あたしは皆に恩返しがしたい。こんなあたしを受け入れてくれたんだもん…。)
そっとマツリは心の中で吐露する。
「そうそう、マツリ。」
流しからムマジの声がした。
「じっちゃん、何?」
「お前今日―仕事の日だったよな?」
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