第3話

「じゃあ留守番よろしく。」

「行ってきます!」

渡されたメモと買った物を入れる為のカゴを持った二人、それをサナとノイが見送る。

「いってらっしゃい!」

「寄り道するんじゃねーぞ、特にガーナ!」

「分かってるもん!!」

と二人は船を降り、商店街の方へ向かった。

「…メソド。」

「何?」

「あ、あのね…その…。」

もじもじとしているその様子に、ピンときたメソドは小さな声で話す。

「おやつだろ…でも、少なめにな。」

ドライフルーツとかだったら許されるんじゃないかとも言うと、パァッとガーナは目を輝かせ、走って行くとメソドを呼ぶ。

「早く早く!!」

そして内心、子どもには甘くしてしまうなと思いながらメソドはゆっくりと歩いて行った。

 

「いらっしゃい、いらっしゃい!!安いよぉそこのお兄さん、お嬢ちゃん!見ていきなよ!!」

「新鮮な魚、全部揃っていますよ!どうですかぁ!!」

「野菜、今日収穫したばかりどうだい!?」

と様々な声に溢れている商店街を二人は歩いていた。

「すごい活気のあるところだねぇ、静かな島かなって思っていたけど想像と全く違ったよ!」

「あ、ああ…。」

嬉しそうなガーナとは違い、どこか戸惑っている様子のメソド、それに気付いた彼女は首を傾げる。

「メソドどうしたの?」

「え、あ…大丈夫だ。うん、オレも想像していたのと違ったなぁ。」

「うふふ、メソドがビビっているでしょ?大丈夫!!ガーナがメソド守ってあげるもん!」

「それは頼もしいな。」

えっへんと胸を張って歩くガーナを見ながらメソドは少し気になっていた。

(オレ達以外に客がいない…何か良く出来た茶番みたいだな。)

とは思ったが、島民達は特に悪意はない様に見える。

(何だ、この違和感は…。)

「メソド、おいしそうなキャンディがあるよ!!」

「見てこいよ。」

「うんっ!」

お菓子の店に直行したガーナを見ながら、メソドは考えを巡らせた。

(誰か…見ていたのか?オレ達の事を…だが、見えたとしても、オレ達が来るまで間に合わないはず…。)

「メソド~これ買って~!」

「あ…はいはい。」

(何にしても、一回皆に報告だな。)

無邪気に買いたい物を選んだガーナにおねだりされ、メソドは歩き始める。

 

「どう、売れた?」

海賊の二人が港の方向へ行くのを見届け、マツリはさっき話をした馴染みの漁師のところに行っていた。

「おぉ、マツリじゃねぇか!」

「海賊船は小さいからたいしたお金は稼げなかったと思うけど…。」

まだ情報が少ないので、掴める物は掴んでおきたいと少女は探りを入れる。

「いや、何人いるのかは知らねぇが、一家族分は買っていったぜ!」

「そう…。」

人数は少ないと思っていたが、案外仲間が多いのかもしれないと緊張の面持ちをするマツリに、漁師は笑う。

「一応、武器らしき物も持ってなかったみたいだ。何心配する事はない、もし何かしようと思うなら、一般人を装ってこんな小さな島になんか来ないさ!」

「その通りだよ、マツリちゃん!」

店の奥から漁師の妻が出て来た。

「がらの悪い海賊は脅しに来るようなもんだけど、ああやって弱そうな二人を遣わせるっていう事は多少マシな連中だろう。」

「そうかな…。」

「そうだよ!」

妻がマツリの背中をドンドンと叩く。

「いっ…痛いよ、もうちょっと弱く…。」

「ああ、ごめんごめん!」

と言って妻は屈託なく笑った。

「それに…。」

漁師が付け足す。

 

「この島には頼もしく美しい女神様がいらっしゃるからな!!」

 

それを聞いたマツリや妻、そして周りにいた人達は一気に静かになり次の瞬間。

「アッハハハハハ!!」

とマツリを除いた皆が一斉に笑い出した。

「ちげぇねぇ!」

「俺らはその女神様の守護を身にずっと受けているな!」

「ありがてぇ事よ!」

と口々に言った。

そしてマツリはその様子を「…もう。」と苦笑いをしながら見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る