第2話
「そろそろ着きそうだぞー!」
上から見ていた青年・メソドが叫ぶ。
「今度はどんなところかな~おいしいおかしいっぱいあるかな…。」
とまだ見ぬ新天地に期待をよせる少女・ガーナ…そこに後ろから頭をくしゃりと掴まれる。
「イッタ…。」
「たまには野菜食べろ。」
と堅い事を言う割に薄い桃色をした可愛いエプロンを着た髭を生やしたコック・ノイが言う。
「…またそんなエプロン着てるの?」
「うっせぇ、あいつが着ろって言ったんだ。」
「別に実行しなくてもいいんじゃないか?」
と上からメソドが降りてきた。
「だいたい冗談だと思うが…。」
「あいつに逆らってみろ、後でいろいろ面倒な事になるに決まってる!」
必死な顔で喚くノイに、二人の視線は冷ややかだ。
「何やってるの、もう着くわよ。」
げ、とノイが青ざめた顔で振り返ると。
「あら、ノイちゃんそれやっぱり似合うわぁ~わたしの見立ては間違い無かったみたいね!」
顔はイケメンの部類に入るくせにオネェであるサナがニコニコと近付いてきた。
「近付くな。」
「あら、別にいいじゃない。」
「サナ、買いたい物はあるか?」
このままだと変な話の流れになる可能性を考え、メソドはサナに話を振る。
「あら、メソドちゃんお使い行ってくれるの?」
「まぁ…。」
と、メソドが後を濁したのは正直まともに島民と話せる人間がこの船にはいないからだった。
「じゃあメモしてくるわ…あ、ノイちゃんも!」
「な、何しやがる!」
「だって食料の事なら貴方に聞くしかないでしょう?」
「だからって首元を掴むな…!」
ズルズルとノイを引きずりながらサナは部屋に入って行く。
「仲いいよね、あの二人。」
船の中へ入る様子を見送った後、ガーナはメソドに話し掛ける。
「ところでせんちょうは?」
「いつも通り。」
船長がいるであろう部屋を指差すと、少女の頬が膨らむ。
「いいなぁ、ガーナも寝たいよぉ。」
「ガーナはこっち。」
今度は島を指差すと、膨らんだ頬は小さくなりも顔全体が渋い物になる。
「お使い?」
「ああ。」
また~?と苦情を口にされるが、それでも彼女にしか出来ない役割があった。
「だって、こんな小さな女の子が海賊なんてしてるはずないし…。」
「どういう事?」
要は島民に警戒心を持たせない為だった。
「うーん…。」
砂浜で背を伸ばし海を見ていたのはマツリで、その傍らにいるのは馴染みの漁師達だ。
「どうだ、マツリ?」
聞いてきた漁師に対して、マツリは自分の見ている光景をそのまま話す。
「たぶんここに買いに来るのは今甲板にいる二人だと思う。」
「どういう奴らだ?」
「一人は細い男の人、もう一人は…あたしより小さい女の子みたい。」
この答えを聞いた漁師達は驚く。
「海賊船に小さな女の子!?」
「どっかからさらわれたのかな…。」
「ともかくその二人なんだな?」
うん、と答えると漁師達は各々準備を始める。
「よし、じゃあ準備を始めるか!!」
去って行く漁師達の後ろ姿を見ながら、マツリは微笑む。
「…久々のビジネスチャンス到来ってところかな。」
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