2024年4月14日 好きなもののはなし【コーヒー】

 昨日ははりきりすぎてめちゃくちゃ長い感想文をしたためてしまったので、今日は短めにする。


 私の生活にはなんの変化もなく、今日も起きて、散歩して、うんうん考えて、昼寝して、お風呂に入って、それだけで終わりそうだからだ。


 私はコーヒーが好きである。


 好きといっても手引きや豆にこだわっているほどの本格派ではなく、もっぱら淹れるのが楽なインスタントばかりである。


 私は味覚が鈍いので、大抵のものは美味しく食べれる。

 コーヒーにしたって、強いて言えばモカが好きというくらいで、酸味やら苦味やら風味やらは、正直言って何もわからない。


 ちょくちょく個人経営の喫茶店などでその店自慢のコーヒーを飲んだりしているのだが、味音痴なのでどれもこれも同じに感じてしまう。


 そんな私だが、「あの味をもう一度」と時たま思うくらいには好きなコーヒーがある。


 それは大学生の時に出会ったインスタントコーヒーである。


 大学近くのスーパーに置いてある、青い小さな瓶に入った少しお高めのインスタントコーヒーだった。確か、豆の原産地はグァテマラだったような気がする。


 1瓶で600円と、インスタントとしては少々値が張る代物だっただけに、その味は、味音痴の私でもわかるくらいに美味だった。


 それに出会ってからというもの、私はそのコーヒーをひたすらリピートし続けた。


 しかし、大学を卒業して就職のため別の地に行くと、最寄りのスーパーにはそれが置いていなかった。

 通販で頼むほどではないなぁと思っていたので、仕方なく別のインスタントコーヒーを飲み続けていたのだが、しばらく時間が経つとあの味が恋しくなって、ネットで調べて注文しようとした。


 商品名を覚えていなかったので、うろ覚えの記憶と瓶の色からアタリをつけて、広大なインターネットの海を散策し続けた。


 ついに見つけた時、それはほんの数週間前に販売終了となっていた。


 愕然、とまではいかないが、それなりにショックを受けた。

 人生で初めて出会った「美味い」と思うコーヒー、その味にもう二度と出会うことはないのだと思うと、恋人と破局したような気分になった。


 それから更に月日の経った今では、その思い出のコーヒーがどんな味だったのかも忘れてしまった。


 今では、バニラの風味が優しく甘いライオンコーヒーがお気に入りとなっているのだが、それでも、あの日味わい、そして失ってしまったコーヒーのことを思うと、ちょっぴり切なくなってしまう。


 皆さんも、好きなものは享受できる時に享受しておいたほうがいい。

 得てして人は、失くして初めてその価値に気付くものだ。


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