2024年3月31日 創作歴を振り返る 中編
昨日に引き続き、己の創作歴というものを振り返ってみようと思う。
高校生になった私は、部活動には所属せず、かといって放課後に友人たちと遊び呆けるでもなく、ただただ本を読んで文章を書くというストイックな生活を開始した。
中学までの交友関係というものが一新された環境にうまく馴染むことができず、ヘヘッと愛想笑いしているうちに友達作りの機を逃したとも言える。
華々しい青春というものを早々と損切りした私は、判を押したような生活をずっと続けた。
自転車で片道40分かかるクソ長い道を妄想しながら通学し、授業と授業の合間には図書室で借りた本を読み、苦手な授業中はひたすら空想に耽って脳内でストーリーや設定を組み立てる。
執筆は主に帰宅後に行われた。
自室。安物のノートパソコンを膝に抱え、体育座りの態勢で必死にキーをタイプした。
下校中にまとめていた思考が欠落してしまわぬよう、まずはメモ帳にその日思いついた展開や設定を書きなぐる。そうして言語化した材料の形を整え、組み立て、私は小説を書いていった。
そうして出来上がった作品を、2つ、ここで紹介しよう。
ひとつは、『正義執行部の問題児』という、超能力モノの現代ファンタジーである。(相変わらずタイトルがアレだ)
『1メートル以内、100kgまでの物体しか瞬間移動できない』テレポーターを筆頭に、一見およそなんの役にも立たないと思われる超能力を持つ青少年が、偏った正義を振りかざして悪(自己基準)を成敗していくという物語だ。
私は、ザコが知恵と工夫で戦い抜いていくストーリーが好きなので、その形式を採用したのである。
これは、前作に比べればまだ読める内容になってはいた。
一応、『ザコ超能力で戦い抜く』というオリジナリティはあったし、敵の倒し方や、ザコ能力の応用にも工夫が見られた。
しかし、総合的に見るとやはり稚拙である。
特にバトルシーンが致命的だった。
そもそも私は脳内に画を描くという行為が苦手である。右脳が弱いのである。
迫力のあるバトルシーンを描こうとしても、そもそも脳内に何もイメージが沸かない。言語化しようにも材料がない。
そんな感じでフワフワしながら描写していたため、バトルシーンは、ただの出来事の羅列になってしまっていた。
新人賞には応募してみたが、無論、一次選考落選である。
結果は奮わなかったものの、作中で動かした登場人物たちは、我ながら魅力的に描けていたと思う。
特にお気に入りのキャラは、組織のリーダーを務める『会長』という青年だ。
夢想家で、自信家で、思考回路がイカれていて、役に立たない超能力を煩悩の数だけ持っている、クールキャラぶった阿呆である。
実は、この人物が、『僕はライトノベルの主人公』に登場する真城目常というキャラクターの原型になっていたりする。
次に書いたのは、『クラスメイトは研究対象』という現代コメディである。
(このタイトルは結構気に入っている)
クラスの人気者である主人公は、実は裏の顔を持っている。
学校を裏から牛耳るぞという野望のもと、クラスメイトを『研究』――すなわち、盗撮、盗聴、ストーキング――し、弱味を握り、レポートにまとめるというマッドサイエンティストな一面である。
そんな異常者たる彼は、幼馴染にして唯一の理解者たるヒロインと共に、日夜クラスメイトをストーキングして回る。
だが、クラスメイトは、主人公に引けを取らないクセ者ばかりであった!
それぞれジャンルの異なるアクの強さに翻弄される主人公!
さて、彼の『研究』は一体どうなる!?
あらすじはこんなところである。
ぼちぼち読める内容にはなっていたと思う。
一応伏線とかどんでん返しみたいなものは用意していたし、次々と異常者を登場させてカオスにしていく様は愉快であった。
だが、残念なことにこの作品は未完のままで止まっている。
肝心要の最終章、今までコッショリばらまいてきた伏線をいざ回収するぞという段階になって、受験シーズンが到来してしまったのである。
スーパーシングルタスクヒューマンである私は、受験勉強と同時進行で執筆を続けることができなかった。
大学に無事合格してから、執筆を再開しようと思ったのだが、どうにも続きを書くことができなかった。
読み返してみると、序盤から中盤の粗が目立ち、このまま最終章を書ききってもあまり面白くならないような気がしたのだ。
今なら「クオリティは二の次でとりあえず完成させたろ」と指を動かしたのだろうが、当時の私はこらえ性がなく、執筆自体を諦めてしまった。
かくして、今までで一番マシなクオリティを発揮していた『クラスメイトは研究対象』は、未完のまま、今でも過去フォルダに眠っている。
ついに一次選考落ちどころか応募すらしなくなっとるやんけ。
進歩どころか退化しとるやんけ。
そう思われるかもしれないが、作品の構成を考えるようになったり、時折客観的な視点で作品を眺めて推敲したり、単純に文章力が向上していたりと、レベルアップ自体はできていたと思う。
また、主人公の、カスに振り切りながらもどこか憎めないキャラ造形は、結構気に入っていた。
露悪的というか、「こいつ、根はいい奴なんだろうな」と思わせるようなキャラクター。
気に入っていたので、『僕はライトノベルの主人公』では、裏原罪というキャラクターに転用した。
彼を動かすのは非常に楽しい。
以上の二作が、私が高校生活中に書き上げた長編作品である。
「青春を犠牲にした割には作品数少なくないか」だって?
その通りだと思う。
さも時間と労力を煮詰めて作品を仕上げました、というふうに書いているが、その実、私は高校生活のほとんどをインプットに費やしていた。
割合にしたらインプットが9.8割といったところだろう。
私はひたすら自室にこもり、漫画と小説を読み、アニメを見て、まとめサイトを巡回し、ハルヒSSを読んでいたのだ。
まこと残念な青春の使い方だったと思う。
だが、小説を書かなかったからといって、私がまともな青春を送ることができたかというと、それもまた疑問である。
むしろ、約2作も書き上げ、そして後作に繋がるようなキャラクターを生み出せたことを誇りに思いたいくらいだ。
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