メロンの木
タカナシ トーヤ
メロンの木
高校生くらいの時のことである。
休み時間に果物の話題が出て、すいかは果物ではなく野菜だとか、じゃあメロンはどうなんだとか、そんなたわいもない話でクラスメイトが盛り上がっていた。
「小さい時、毎年ばあちゃんちの木に、メロンがなるのが楽しみだったんだよね〜」
そんな昔話を自分は懐かしみながら笑顔で話した。
クラスメイトは一様に冷たい目をする。
「はぁ?」
「メロンの木なんてねーし」
「なにいってんの?」
「えっ!メロンって木になるんだよ!みんな見たことないの!?」
まさか否定されるとはびっくりだ。
みんなはメロンは木にならない、と笑って馬鹿にしてくる。
いやいや、メロンの木、あるんだって!!!
本当に!!!
この目で見たんだから!!!!!
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小学校のとき、夏休みは母方のばあちゃんの家に長期連泊するのはお決まりになっていた。
家では毎日怒られてばかりの自分だったけど、ばあちゃんとじいちゃんは自分たちを無条件に愛して、可愛がってくれた。
ばあちゃんは、子どもが大好きというよりも、ばあちゃん自身が子どもみたいな人だった。
ちびっこの「遊び相手」をするのではなく、ばあちゃん自身が子どもの遊びを一緒になって本気で楽しんでくれるのだ。
一緒にシーソーをしたり、一緒にブランコにのってどこまでくつをとばせるか競ったり、くるくる回る円形の遊具にのって、夕方になるまでみんなでキャーキャー騒いだりした。
そんなばあちゃんのことが、自分たち兄弟はとっても大好きだった。
ばあちゃんの家には広い庭があって、夏休みにいくと、庭の低木にメロンがなっていた。
自分たち兄弟は、夏休みのたびに、今年はメロンがなっているか、何個なっているかと楽しみにしていたものだ。
そして、時期がよいと3個ほどなっていて、3人兄弟で1人1つずつメロンを収穫することができた。
数年後、メロンの低木が枯れてしまい、メロンはならなくなってしまったのだが、あの夏休みの楽しい思い出はずっと自分の心の引き出しにしまってあった。
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学校から帰った自分は、親に聞いた。
「ねぇ、今日学校でメロンの木の話したらみんなに馬鹿にされたんだけど。メロンの木、ばあちゃんちに絶対あったよね!???」
「あぁ、あれね。」
母は笑っている。
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ばあちゃんは、ふざけたり、いたずらしたりすることが大好きだった。
ある時、ばあちゃんの家で皿に出されたゼリービーンズを食べようとしたら、1匹だけ虫が混ざっていて、ぎょっとして手を止めた。
「え!!??」
よくよくみると、緑色のゼリービーンズに、サインペンで毛虫みたいな落書きがされている。
ばあちゃんは、ひっかかったなとばかりに、ニヤニヤと歯を見せて大笑いしている。
「ちょっと!!やめてや!びっくりしたわぁ〜!!」
毛虫ビーンズをよけて食べた後、そんなばあちゃんが可愛くておかしくて、思わず毛虫ビーンズの写真をとってガラケーの待ち受けにした。
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「あれねぇ、おばあちゃんが、孫を喜ばせようとして、庭の木に、買ってきたメロンをくっつけてたんだよ。こんな大きくなるまでまだ信じてたんだ。早く種明かししてあげればよかったわ。笑」
母は大爆笑だ。
ええぇええぇ!!!!!!!!!((((;゚Д゚)))))))
どうやら、メロンは木になる植物ではなかったらしい。
17.8になるまで、自分はメロンは木になると全く疑わずに生きてきて、たぶん小さい頃から堂々と「メロンの木」とか言いまくってきた。
いやいや、だって自分で収穫したんだから!!
木になるものだと、疑う余地ないでしょうが!!!!
でもよくよく思い出してみれば、メロンの根元はなぜかスズランテープで結ばれていた気がする。笑
うぉ〜!!マジか!!!!恥っずー!!!!!!!!Σ(゚д゚lll)
ばあちゃん、あの木が枯れた時に、真実を教えて欲しかったわ…_| ̄|○
今はもう、何度もおんなじ話を繰り返すようになったおばあちゃんだけど、不思議と、孫の名前だけは、顔を見てぱっと呼ぶことができるんです。
ぼーっとしてても、ちっちゃい子たちと遊びだすと、昔のおばあちゃんに戻ったみたいに若返って元気になるんです。
そんな、子どもみたいで、いたずらっこで、おちゃめなおばあちゃんが、自分は大好きです。笑
END
メロンの木 タカナシ トーヤ @takanashi108
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