第4話 家が欲しいから飯を食う

そして入学式の日程が全て終わり、俺は疲れているのになぜか校長室に呼び出された。


「失礼しまーす...」と元気が無い声で言うと、シルファが話しかけてきた。


「何か...元気なくないですか?そんなに疲れました?」


「そりゃあ疲れたに決まってんだろ...式辞やら王族の挨拶やら色々ありすぎてもう疲れたっての...」


「あ、そういえばあの王族の方...誰のご子息か分かりますか?」と唐突にシルファが聞いてきた。

でも俺はあの王族の子供を全くと言っていいほど知らなかったので、「ん?知らん。」と言っておいた。


「少しは考えてください...あの王族の方は、ハルシュ様のご子息ですよ?」


「ん?ハルシュ?誰だっけそいつ...」


そう言いそのハルシュと言う人物の事を頭で思い出してみる。


シルファが何で知らないんだみたいな顔をしてるので多分俺が知ってる人物なのだろう。


「ハルシュ...あ!」


その時、頭の中にある人物が浮かんできた。


「ハルシュってあいつか...」


「あ、思い出しました?」


「ああ思い出したよ...あのクソガキの事をな...」


「クソガキって...お仲間ですよね?」


「仲間でもクソガキだろ?」


そう、ハルシュは俺の前世での勇者パーティーで勇者を務めていた青年であり、めっちゃ女の子にモテていた。

正直嫉妬する。

それからめっちゃ強かった。

そして俺のライバルであり、一日に何回殺りあったか覚えてないくらいだ。


「年齢あんまり変わらないじゃないですか...」


「そうだけど...」


「そういえば...そのハルシュ様が今どの地位に就いていらっしゃるかご存知ですか?」


「あ?知るわけねえだろ?俺お前と別れてから外界との連絡手段ほぼ絶ってたんだからな?」


「そういえばそうでしたね...」


「それで?ハルシュって今どこの地位なの?ちっさい爵位?」


「いえ、王様です。」


俺はその時、聞いた言葉を間違えたのではなかろうかと思い、シルファにもう一度聞き返してみる事にした。


「ん?お前なんて言った?」


「え?だから、ハルシュ様の地位は王様だと...申しましたよ?」


「おいおい...マジかよ...」


「ちなみに、「爵位を持つ嫡男は魔法学校に入学しろ」と言う馬鹿げた法令を出したのもハルシュ様です。」


「あいつがやったのか...いっぺんキレていい?」


「誰にキレるんですか...?」


「そりゃハルシュに決まってんだろ?」


「はぁ...王様に攻撃なんてしたら即首が飛びますよ?」


「うーん...そうだよなぁ...」


「というか...話をしてて唐突に思ったんですけど...お師匠様って...家あるんですか?」


「マジで関係ない話だな...まあ無いけど...」


「家買うんですか?」


「まあ...そうなるんじゃない?」


そう言った瞬間、シルファが俺に言った。


「家を買うよりいい方法がありますよ!」


「ん?何?」


「私と一緒に住む事です!」


「...却下だ。」


そう言った瞬間、シルファが顔を下に向けたままピクリとも動かなくなってしまった。


「お師匠様...何で拒否するんですか...?」


「え...だって...お前掃除しないじゃん...」


そう言った瞬間、シルファが俺も聞こえないくらいの声で「...しますよ...」と言った。


「え?なんて?」と聞き返すと、大声で「掃除くらいします!」と言ってきた。


「嘘つけ!お前俺の家いた時全く掃除しなかったじゃねえか!」


「あ、あれは...だってやろうとしたらお師匠様が既にやってくれていたからやってなかったんです!」


「見苦しいぞお前...」


「でもでも!お師匠様は今家ないんですよね!?」


「まあ無いけど...買うよ...」


「お金あるんですか?」


そう聞かれ、自信ありげにポケットを漁りながらシルファに言う。


「ん?そりゃあるに決まっ...」


だが、いくらポケットを漁ってもお金なんてものは出てこず、空気が入っているだけだった。


そして俺が困っている時、シルファが俺に言った。


「お師匠様、お金は...ありましたか?」


そう聞かれても、無いものをあると言ってもどうせシルファに詰められるだけなので正直に言うことにした。


「...泊めてくれ」


「その言葉を待ってました!さあ!早く私の家に行きましょう!」


「はいよ...」


そう言って部屋をシルファと一緒に出てから廊下を歩いている時、シルファに聞かれた。


「そういえば...お師匠様、お腹空いてますか?」


「ん?一応空いてるけど...」


ちなみに一応ところでは無い。

朝食って以来何も口に入れてないので半飢餓状態である。


「じゃあ先にご飯行きましょう!」


「飯って...俺一銭も持ってねえぞ?」


「大丈夫です!お師匠様も馴染み深い店に行くので!」


そう言われてシルファに付いていくと、バカでかい扉の前に着いた。


「ここは...あのジジイの店か?」


「お!よく分かりましたね!王様の名前は知らなかったのに!」


「そりゃ分かるだろ...後一言余計だ。」


そう言った瞬間、目の前の大きい扉が空いて、ある人物が出てきたので、俺は一瞬でシルファの後ろに隠れた。


「おお!シルファちゃん!いらっしゃい!」


「ガストルさん、お久しぶりです!」


「久しぶり...って、この子がシルファちゃんのところの生徒かい?何か見た事ある様な気が...」


このガストルという男は、この店、「肉」の総料理長であり、元は王宮でも料理を作っていたという経歴を持つ料理人である。

後ネーミングセンスがゴミである。

店名が「肉」の時点でお察しだろう。

そして勘が鋭い。


「見た事ある...?き、気のせいじゃないですか...?」


「いーや!絶対に見た事あるね、この子の名前、何?」


「いやちょっとそれは...守秘義務がありますので!」


「うーん...なら良いけど...まあとりあえず入ってくれ!お腹空いてるだろう?」


「はい!失礼します!ほら、行くよ?」


そう言われてシルファに腕を引っ張られて、席に連れていかれる。


「いってえ...おい、ちょっと強いぞ...!」


「しょうがないじゃないですか...!ガストルさん勘鋭いんですから...!」


「まあな...あの勘の鋭さは異常だぜほんと...」


「とりあえずご飯食べましょうか...」


そう言われて続々と注文していき、空いている胃に食い物を流し込んでいく。

めちゃめちゃ美味かった。


そしてご飯を食べ終わった後、会計をしてから外へ出て、シルファの家へと向かう事にした。

それから歩いている間暇なので家の事を聞いてみる事にした。


「シルファ、お前の家ってでかいの?」


「え?うーん...大っきいって言えば大きいんですかね?」


「後さ、どんくらいで家に着くの?」


「後もう少しです!」


「その言葉3000回位聞いた気がするんだけど?」


そう、店から出てから家に向かっているのだが、一向に着く気配がない。


「後少しです!頑張ってください!」


「もう足辛いんだけど...おんぶしてくんない?」


「え...?良いんですか?」


「お願い...」


「でも...ただじゃしてあげません!」


「ん...?何すればいいの?」


「ちゅーしてください!」


そう言われて、いつもなら絶対に拒否するはずなのに、疲れすぎているのか、俺はある返事をする事にした。


「ちゅー?良いよ、早くしよ?」


そう言うと、シルファは慌てた様子で、俺に言ってきた。


「え!?ちょ、ちょっとお師匠様!?冗談!冗談ですから!」


「あ...?冗談...?じゃあ早くおんぶしてくれ...」


「は、はい!分かりました!」と言って、俺の事をシルファが背負った瞬間、俺は眠気が急に襲ってきて、寝てしまった。


「ん...?ここは...」


そして俺は起きると、知らない部屋のベットに寝かされていた。


「ここってシルファの家か...?」


そう言った瞬間、扉からシルファが入ってきた。


「あ、お師匠様、起きられましたか?」


「うん、ごめんな、背負ってもらって...」


「いえいえ!!全然大丈夫です!」


「とりあえず...起きるか...」と言い起き上がろうとした瞬間、シルファが俺の元に駆け寄って来て、俺を押し倒した。


「シ、シルファ?何をしてるんだ?」


「押し倒してるんですよ?」


「うん、それは分かってるんだよ?何でこんな事をしてるのかを聞きたいんだ。」


「うーん...お師匠様と×××して、×××したいだけです!」


そんな事を急に言われると、普通なら困惑するはずなのだが、俺はしっかりと冷静に対応した。


「ダメに決まってんだろ?」


「えぇ~?なんでですか?」


「なんでもなにも無い!とりあえず離してくれよ...」


「はーい...」


「よし...やっと起きれたか...ちょっと魔法出していい?なまってるかも知れないから...」


「え?良いって言うと思ってます?」


「外なら良い?」


「あの...奥の山でやってくださいね?」


「はいよ...んじゃ行ってくるぜ...」


「行ってらっしゃい!」


そう言われて、奥の山へと転移魔法を発動し、転移した瞬間、俺の目の前にはある光景が広がってきた。


「おお...ドラゴン達...どんだけいんだよこれ...」


その光景というのが、ゆうに数百匹はいるであろうドラゴン達ががバカでかい温泉で団欒している光景であった。

























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