第3話 前世の弟子との手合わせ

本当に俺の弟子だったシルファなのかという疑問もあったが、シルファの服をまじまじと見てみると、俺がシルファに小さい頃に上げた星印の巾着袋が付いているのに気が付き、俺は目の前の女性が本当にシルファという確証を自分で得ることが出来た。


俺がシルファを久しぶりに見た事で感慨深くなっていた時、他の生徒はシルファと手合わせをするために大勢の生徒が立候補していた。


そして最終的にシルファが決めた生徒とシルファが戦うということになり、シルファが闘技場の下に降りてきて、生徒を選んでいたが、俺の席の方を向くと、俺に指を指し、「この子とやりたい...」と言った。


そう言われた解説の子は慣れたような口振りで「さあさあさあ!!!突然の開催となった今世最強の魔法使いであるシルファ・グレイス様との手合わせ!それに志願する者が現れた!!その者の名は...カリス・フラジール!!さあこの挑戦者は最強の存在を倒す事が出来るのか!?この後開始となります!!」と言った。


解説というか...口上というか...聞いたことある様な...いや気のせいか...

というか俺の苗字ってフラジールっていうだ...覚えとかないと困りそうだな...


それから俺は手合わせの時間となった為、闘技場の入口へと行き、対面にはシルファがいる状態となり、解説の口上が始まる。


「さあさあ!!お待たせしました!今世最強の魔法使いであるシルファ・グレイス様とそのシルファに選ばれた挑戦者であるカリス・フラジール君の手合わせが始まります!!それでは...お二人の入場です...!!」と言った瞬間、目の前の扉が開き、俺とシルファは闘技場の真ん中へと向かう。


「カリス君...よろしく...」と手を差し出してきたので、戸惑いつつも握手をした。


「それでは...!試合!開始です!!」と解説の子が言った瞬間にシルファが俺と自分に向けて転移魔法を放ち、更地の荒野に俺とシルファは転送された。


「...ここは...?」


「ここだったら...本気、出せるでしょ?」


「まあ...更地ですし...」


「じゃあ...全力でかかってきなさい!」とシルファが言った瞬間、シルファが氷魔法の「氷槌アイスハンマー」を出してきたので、炎魔法の「炎盾ファイアーシールド」で受けた。


魔法には相性があり、さっきシルファが出してきた「氷槌アイスハンマー」はとても強力な氷魔法だが、氷魔法は炎魔法でほとんど溶けてしまうので、氷魔法で攻撃してきた際は炎魔法を出しておけば大丈夫だが、相手と自分に実力差がありすぎると魔力の洗練さが違うので、氷魔法を炎魔法で受けても貫通されてしまうので、そこは注意だ。


そして「炎盾ファイアーシールド」で受けた後、シルファに風魔法である「風霧ウィンドミスト」を出した。


この魔法は自分の周りに風の霧を出して、相手を近づけさせないようにする魔法だが、デメリットとして自分からも相手が見えないという欠点も存在する。


「これで近づけませんよ!」


そう言った瞬間、シルファは飛んで俺の真上まで距離を詰めてきた。


風霧ウィンドミストは周りを霧で覆う魔法のため、上は必然的にがら空きになる...!」


「うぉ...!マジかよ!」


「これで...終わり...!!」


「まあ...俺が風霧ウィンドミストの欠点を知らないわけないが...急に詰めてくるのは予想してなかったな...「砂壁サンドウォール」!」


「なっ...!?」


そして俺は「砂壁サンドウォール」で自分の全体を包んでから「風霧ウィンドミスト」を解除した。


すると突然シルファが「カリス君...少しいい?」と俺に聞いてきた。


「良いですよ...なんですか...?」と俺は答える。


「それが...カリス君の本気なの?」


「ええ...まあそうですけど...」


「本当に?」


「え?いや...まあ...」


再度聞かれた事で少し言葉が濁ってしまう。


「あのさ...私ももっと本気出すからさ、あなたもちゃんと...本気を出して?じゃないとフェアじゃない、あなた...私の魔法をいとも容易く打ち消している、そんな芸当、私のお師匠様位しか出来ない...だから...ちゃんと本気、出してね?」


シルファにそんな事を言われてしまってはしょうがないので、俺は自分が前世で使えた最大出力の魔法の準備をする。


「はぁ...これを使うのは...えらく久しぶりだな...魔王を倒した時以来か...?」


そう呟くと、シルファが「え...?」と言葉を漏らしていた。


だが俺はそれに気づかずに魔法を発動する準備を着々と進めていた。


この魔法はあまりの範囲の広さと威力の大きさにより、魔王討伐を最後に使う事が無かった魔法であり、俺も若干詠唱を忘れかけてた。


「行くぜシルファ!!俺の全力!!受けてみろ!!」


「え...?は、はい!最大出力!!氷盾アイスシールド!!!」


と言ってシルファは氷盾アイスシールドを出したものの、俺は既に魔法の詠唱を終えていた。


「極大魔法!!!炎神衝イフリートブレイク!!!」と言った瞬間、俺とシルファの周り一帯が炎の海になり、シルファは最大出力の氷盾アイスシールドを出したものの、流石に防ぎきれずに吹き飛ばされた。


そして俺はそれに気づいた瞬間、火をすぐに消し、風をブーストにしてシルファの後ろに回り、シルファを受け止める。


「ふぅ...危なかったぜ...」


「ん...?私は...」


「お、起きたか?シルファ...」


「お師匠様...助けてくれたのね...ありがとうございます...」


「いやいや...無事で良かった...って...気づいてたのかよ...」


「あんだけシルファって呼び捨てにしておいて気づいてないわけないじゃないですか...」


「まあそりゃそうか...」


「そういえばお師匠様、変な実験でもしました?体...小さくなってますけど...」


「ん?お前聞いてないのか?俺死んだんだぞ?」


そう言った瞬間、シルファの顔が青ざめる。


「じゃあ今私は天国に居るの...?」


「ちげえよ!俺が転生したんだよ!」


「って...転生?そんなの出来たんですか?」


「うーん...まあ色々あったんだ、聞かないでくれ。」


「分かりました...」


「というかお前...学校戻らなくていいのか?生徒置いていったままだろ?」


「生徒は...えーっと...」


「ん?何を濁してるんだ?ハッキリ言え!」


「わ、私の時間操作魔法で闘技場の時間だけ止めてます...」


俺はそれを聞いた瞬間、呆れて物も言えなくなってしまった。


「お前...俺さ、お前を弟子に取る時に言ったよな?」


「はい...」


「なんて言った?俺、なんて言った?」


「え、えーっと...時間操作の魔法だけは使っちゃダメ...って言ってました。」


「何で使っちゃダメって言った?」


「か、体を重大な負担がかかって、命の危険がある事もあるから...使っちゃダメって言われました...」


「そうだよな?」


「はい...」


「お前、体は?」


「今は大丈夫ですが...解除したら多分...」


「はぁ...シルファ、その魔法、俺が相殺するから闘技場に転送してから魔法を解け、分かったな?」


「で、でもお師匠様でも防ぎきれないんじゃ...!」


「お前...俺はお前の師匠だぞ、弟子の前でカッコつけたい性格なんだよ...」


「分かりました...じゃあ闘技場まで転送します!」


「おう!」


そう言ってシルファと共に闘技場へと転送魔法で戻った。


「戻ってきたか...ほんとにみんな止まってんじゃねえか...お前良く止めながら俺と戦えたもんだな...」


「まあ...ありがとうございます...」


「っと、とりあえず相殺するために魔法をぶつけるから、お前は自分と生徒を全力で守れ!」


「は、はい!氷盾アイスシールド!」


「よし、全員守れてるな...んじゃ、行くぞ!」


「お師匠様!頑張ってください!」


「おう!時止めを解除しろ!シルファ!」


「は、はい!」


「よし、来たか...!強大魔法!風波ウィンドブラスト!最大出力だ!!うおおおお!!!」


そして全力の風波ウィンドブラストをぶつけた事で、時間操作魔法の反動を相殺することが出来た。


「ふぅ...何とか消せたか...」と安堵している時に、動ける様になった生徒たちがボロボロの俺とシルファを見て、どちらが勝ったのかというお気楽な話をしていた。


「どっちが勝ったかとか...それ以上に疲れたっつうの...」


だが、倒れている俺と立っているシルファを見て、解説の女の子もシルファが勝ったとアナウンスしていた。


「まあ...別に良いか...」


その後すぐにシルファが俺の元に駆け寄ってきた。


「お師匠様...!大丈夫ですか...?」


「お前...人前でお師匠様って言うのはやめろ...!何か関係があると思われるじゃねえかよ...」


「で、でも!」


「おい!静かにしろ!今日の日程は後入学式しかないんだろ?終わったら構ってやるから待ってろ...!分かったな?」


そう言うと、頬をぷくーっとさせながら「はい...」と不満げにシルファは言った。


(ちょっと可愛いじゃねえかよ...)と思った時、シルファが「カリス君?何か言いましたか?」と聞いてきたので驚いた。


そして入学式の日程が始まり、校長挨拶や祝辞などがあり、あまりにも長かったので寝てしまいそうになったが、自分をビンタしまくって耐えた。











































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