第5話 温泉なんて入れない、先客多いから。
目の前にいるドラゴンはめっちゃ話しながらくつろいでいる者もあれば、一言も喋らずにゆったり楽しんでいる者もいる。
(おいおい...魔法なんざ打てねえじゃねえかよ...とりあえず別の所に行くか...)
そう思い後ろを向いて歩き出した時、足元に何故か落ちていた木の棒をうっかり踏んでしまった。
「やべ!!やっちまった!早く逃げないと...!」
そう言った瞬間、俺の周りを温泉に入っていたドラゴン達が取り囲んだ。
それから俺は体制を立て直す為に魔法の詠唱の準備を進める。
「ふぅ...魔法の詠唱終わったぜ!それじゃあな!ドラゴン達!邪魔して悪かった!」と言い、俺は転移魔法を発動した。
「はぁ...疲れた...」
そして俺はシルファの家に転移し、その瞬間、部屋のドアが勢いよく開き、シルファが高速で俺に抱きついてくる。
「お師匠様!!大丈夫でしたか!?」
「うん...大丈夫だから、その手を話してくれないか?」
「嫌です、一緒に寝ます。」
「俺はドラゴンに絡まれてもう疲れてんの!ひとりで寝かせろ!」
そう言っても、シルファは引くこと無く俺と一緒に寝ようとする。
「嫌です!だってどんだけの時間1人で寝てきたと思ってるんですか!?お師匠様に会えたのに...一緒に寝れないなんて嫌です!」
そんな事を言われては俺も断る気になれず、シルファとの睡眠を受け入れようと決めたが、1つ条件を付けることにした。
「分かった...!一緒に寝てやるから一個だけ俺の頼みを聞いてくれないか?」
「え!?寝てくれるんですか!?分かりました!私に出来る事なら何でも!」
「明日...王城に入って、王様に...ハルシュに久しぶりに会いたいんだ...」
これは、ハルシュの話を聞いた時からしたかった事で、魔王を倒して、シルファを弟子に取って遠くに越してから全くメンバーの三人には会っていなかったので、 ここでとりあえずハルシュには会っておかないと今後会えなくなったら困る。
「あ〜...明日ちょうど王城に行く予定がありますけど...一緒に行きますか?」
そう聞いた瞬間、俺は体を顔をシルファのど近距離に近づけて、シルファに言った。
「うん、行く」と。
その後にシルファの顔がトマトを塗ったみたいに赤かったのは気のせいだろうか...
「というか...明日は学校じゃないのか?」
「え?もうお師匠様の名前は消してますよ?」
「えぇ...?」
「まあいいじゃないですか!お師匠様が学ぶことってもうないでしょう...?」
「まあそうだが...」
「ならいいじゃありませんか!」
「うーん...とりあえずシルファ、寝るぞ?」
明日の話をしながら本題に戻り、唐突に寝ると言ったところ、シルファが柄にもなく動揺し始めた。
「え!?寝るんですか!?」と聞かれたので、ベッドにシルファを押し倒してから、「寝ようって言ったのお前だろ?」と言うと、シルファが頭から煙を出しながら気絶してしまった。
「寝るの早いな...俺も寝よ...」
そう言い、俺もシルファを隣に寝かせた後に寝た。
そして次の朝、俺は早めに起きてから、シルファが隣で可愛い顔で寝ていたので、とりあえず抱きしめておいた。
「本当に...可愛いな...」
そう言った瞬間、シルファが目を開いた。
「ん...?何で私の目の前にお師匠様が...?」
「お前...寝ぼけてるのか?昨日お前が一緒に寝ようって言ったんだろ?」
「あ、そうでした...」
自分で言ったのに忘れてんのかよ...
「つーかお前今日予定あるんだろ?時間良いのか?」
「ふぇ?大丈夫じゃ...無いですね...早く行きましょうか...」
「飯は?」
「行ってから食べます...」
そして俺は寝ぼけたシルファを背負い(ほぼ引きずってる)王城へと転移魔法を発動した。
「おい、着いたから早く起きろよ...」
「ふぁい...じゃあ行きましょうか...」
そう言った寝ぼけ気味のシルファについて行って、王城の中へと入っていく。
「そろそろ起きたか?シルファ。」
「はい...ほんとにすいません...」
「それで...お前の用事って何なんだ?」
「ああ、用事って言うのは、あの時入学式にいた、ハルシュ様のご子息のリリアス様と、その妹君であらせられるアリエス様の魔法の指南です。」
「魔法指南?お前がわざわざやってんのかよ...暇人だな...」
「暇人じゃありません!ちゃんと頼まれてやってるんですよ!」
「ふーん...お前がこき使われてないならいいけどな...」
「ん!それってどういう事ですか!?」
「ん?しーらね、つーか着いたぞ、ここじゃねえのか?」
シルファと色々話をしながら進んでいくうちに、王城の奥へと進んでいて、目の前にはでかい扉がある。
「あ、ここです、じゃあ行きますよ?」
「あーい...というかこういうのって扉の前に兵とかいるもんじゃないのか...」
「ハルシュ様がそういうのを嫌ってるんですよ...」
「ふーん...」
「あ、後、絶対に粗相の無いようにしてくださいって言うのと、敬語でお願いしますね?」
「え?なんでよ?」
「ハルシュ様がお師匠様が転生したことなんて知らないですよね?前のように絡んだら首が飛びますよ?」
「...わーったよ...」
「じゃあ行きますよ?」
「あい...」
そして、シルファが扉を開き、扉の奥へと入っていく。
それから頭を上げて見ると、明らかに王様であろう人物が1人だけで上座に座っている。
「王都魔法学校学長、シルファ・グレイスでございます...王様も王妃様も王子様も王女様も元気でいらっしゃいますでしょうか?」
そう言うとハルシュであろう男が答える。
「まあまあ、そう固くするな...そう毎回言っているだろう?俺もアリスも子供達も元気だ、気遣い感謝する。」
「いえ、そう言って頂けて、光栄の限りでございます。」
その話を聞いている時に1つ分かったことがある。
(アリス...あいつ結局ハルシュと結婚したのか...まあ分かってたけど...まさか王妃にまで成り上がってたとは...)
アリスというのは、俺たちのパーティーでシスターをやっていた人物で、回復術に関しては国でも右に出る者が居ないくらいの実力者である。
そして、ハルシュの婚約者でもあった。
さっき説明した通り、ハルシュはめっちゃモテていたが、アリスにデロデロで、アリスもハルシュのことが大好きだったので、俺ともう一人の仲間は、それを遠目に見るだけの存在だった。
そして改めてハルシュを見た瞬間、ハルシュが俺を見て、シルファに聞いた。
「おい、シルファ、その横にいる少年は何者だ?」
「あ、こ、これは...」
シルファは言葉を濁す。
当然、お仲間であるカリス様なんて言える訳ないし、自分の学校の生徒と言っても問題がある、何故なら、一介の生徒がこの王城に入ることなんてほぼないし、事前に知らせている訳でもない。
知らせているならまだしも、知らせてない少年を入れるなんて前代未聞である。
そしてシルファは考えた結果...
「この少年は、公爵家のご子息であらせられる、カリス・フラジール様でございます。」
「おお!あのフラジール家の倅か!」
「そ、そうでございます!」とシルファが瞬間、ハルシュは少し考えてから言った。
「そうか...シルファ、今から子供達の魔術指南だろう?少し席を外してくれ、すぐに呼び戻す。」
「え?わ、わかりました...では、失礼します...」
そう言ってシルファは部屋から出ていった。
「さあ...少し話をしよう...君の事は色々知りたくてね...」
そんなことを言われて、少し言葉が出てこなかったが、「そ、そうなんですか?」と必死に敬語を引き出して会話する。
だが、「いや、敬語は良い、君には似合わないだろう...」と言われてしまったので、敬語は無くすことにした。
「...そうか...」
「ふふっ...やっぱり君は変わらないな...」
「ん...?何を言って...」
「唐突だが...一つ...君を試しても良いかな?」
そう言われたので、俺は頭の中で密かに防御魔法の詠唱を進める。
「いいよ...来な...」
そう言った瞬間、俺の目の前に大量の火球が飛んできた。
「急だな...防御魔法!
俺はそれを
ハルシュはそれを切り刻み、跡形もなく消した。
「流石...賢者なだけはあるな...」
「ん?何言って...」
「カリス君!君に一つ問おう!」
「何だ...?」
「君は...賢者カリス...かい?」
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